ビジネス・レーバー・トレンド2025年8・9月号
毎月25日更新
- <<前号
- 2025年バックナンバー
- 次号>>
医療・介護業界で働く人たちの賃上げ
今春闘も大手企業では高水準の賃上げ回答が相次ぎ、賃上げ率は2年連続で5%超を達成した。一方、医療従事者や介護労働者の処遇については、2024年度診療報酬改定・介護報酬改定によって、労働者の賃上げにつながる措置が盛り込まれたものの、病院・介護施設の経営悪化から処遇改善が思うように進んでいない状況もうかがえる。この2年間で、医療・介護従事者の賃金は上がったのか。また、労働環境の改善は図られているのだろうか。本号では、労働組合への賃上げの取り組みに関する取材、また、労組・業界団体などによる最新の調査結果を通して、医療・介護従事者の処遇の現状と課題にも目を向ける。
目次
労働組合取材
調査部では、医療(看護)・介護労働者の賃上げなど処遇改善に取り組む労働組合を取材した。UAゼンセンの総合サービス部門「医療・介護・福祉部会」と自治労の衛生医療評議会には、主に病院で働く看護労働者の処遇の現状と2024年以降の賃上げの取り組みを聞いた。また、日本介護クラフトユニオンには、介護労働者の処遇の現状と2024年以降の賃上げの取り組みを尋ねた。
- 部会、業種、地場など、複数の「共闘」の効果を活用しながら、医療や介護、福祉に従事する労働者の賃金格差の是正を図る ――UAゼンセン・総合サービス部門「医療・介護・福祉部会」の労働条件改善に向けた取り組み
- ベースアップ評価料による賃上げと人事院勧告によるプラス改定の両方の獲得をめざす ――自治労の衛生医療評議会に聞く医療・衛生現場の賃上げ・処遇の現状
- 2024春闘は平均8,000円超と例年より高い賃上げとなるも、2025春闘で同水準の賃上げは見込めず ――日本介護クラフトユニオンに聞く介護業界の賃上げ・処遇の現状
労組・業界団体の記者会見、調査発表から
- 12年間で6,000円弱しか上がっていない看護職員の基本給。離職防止に向け、処遇改善の重要性を強調 ――日本看護協会が賃金実態調査結果を発表
- 看護師の離職増と採用難が深刻化、患者のケアに悪影響も ――日本医労連「看護職員の入退職に関する実態調査」
- やりがいがあっても低賃金・人手不足・ハラスメントで働き続けられない。全産業平均との賃金格差は月11万円に ――全労連介護・ヘルパーネットが調査
- 2035年には就業者の育児・介護・ダブルケアの就業者が1,285万人に ――パーソル総合研究所の「ケア就業者に関する研究」結果
教職員の給与
2025春闘における賃上げ等の状況
- 「電気機器」「鉄鋼・非鉄金属」「化学」などが5%のアップ率 ――経団連の「2025春季労使交渉・中小企業業種別回答状況」
- 大手企業の夏季賞与平均妥結額は前年比約4万円増の99万848円 ――経団連「2025年夏季賞与・一時金大手企業業種別妥結状況(加重平均)」
賃上げに向けた政府の政策方針
- 2029年度までに物価上昇を年1%程度上回る賃上げのノルムを定着させる ――「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版」を閣議決定
- 賃上げを起点とした成長型経済の実現が柱 ――「経済財政運営と改革の基本方針2025」(骨太方針2025)
スペシャルトピック
注目度の高い国内のトピックスを、より詳しく紹介します。
- 「女性に選ばれる地方」の実現に向け、全国各地での女性の起業支援など打ち出す ――政府の「女性版骨太の方針2025」
- 出身地域で固定的な性別役割分担意識があったと感じている人の割合は、東京圏以外の出身者のほうが高いことが明らかに ―内閣府男女共同参画局が「2025年版男女共同参画白書」をとりまとめ
国内トピックス
行政、企業、労働組合などの最新動向を、政策課題担当の調査員がわかりやすく紹介します。
- 「精神障害」の労災支給決定件数が6年連続の増加 ――厚生労働省の2024年度「過労死等の労災補償状況」
- 度数率は2.10で前年から0.04ポイント低下 ――厚生労働省「2024年労働災害動向調査〈事業所調査(事業所規模100人以上)及び総合工事業調査〉」の結果
- ハローワークを通じた障がい者の就職件数が過去最高を更新 ――厚生労働省が2024年度のハローワークを通じた障がい者の職業紹介状況などをとりまとめ
- 差別・合理的配慮の提供に関する相談件数は前年度から8割近く増加 ――厚生労働省「雇用の分野における障害者の差別禁止・合理的配慮の提供義務に係る相談等実績(2024年度)」
- 総合労働相談件数は5年連続で120万件を超える ――厚生労働省「2024年度の個別労働紛争解決制度の施行状況」
- 企業内の労働組合に加入していない労働者の未加入の理由のトップは「メリットが見出せない」 ――厚生労働省の2024年「労使コミュニケーション調査」結果
- OFF-JTを実施した事業所は7割超、コロナ禍での急落から回復傾向に ――厚生労働省の2024年度「能力開発基本調査」
- 「勤務継続に不安がある」が約3割、「数年以内に辞めたい」が約1割 ――内閣人事局「2024年度国家公務員の働き方改革職員アンケート結果」
地域シンクタンク・モニター定例調査
各地域のシンクタンクのモニターに、地域経済や地域雇用の動向などについて、定期的に調査を実施しています。
<2025年第1四半期(1~3月期)実績および2025年第2四半期(4~6月期)の見通し>
[調査結果の全体概況]
[各地域の調査結果]
- 【北海道】(北海道二十一世紀総合研究所)観光が好調を持続、外国人入国者数が前年比3割超の増加
- 【岩手】(いわぎんリサーチ&コンサルティング)4~6月期の非製造業は業況判断が悪化し、人手不足感は強まる見込み
- 【宮城】(七十七リサーチ&コンサルティング)コメなど食品価格の上昇で個人消費は弱めの動きを見込む。人手不足感は強い状況が継続
- 【山形】(山形銀行やまぎん情報開発研究所)昨年7月の豪雨災害からの復旧工事で建設業・不動産業が改善
- 【福島】(とうほう地域総合研究所)高卒の就職内定率が2005年以降で2番目に高い水準、ただし県内就職率は7割にとどまる
- 【茨城】(常陽産業研究所)米国の関税政策でマイナスの影響があるとする企業が急増との調査結果も
- 【北陸】(北陸経済研究所)新規高卒者の採用に苦戦する企業、石川県では高卒求人倍率が過去最高に
- 【東海】(OKB総研)経営者協会の調べでは、春闘の平均賃上げ額が過去最高を記録
- 【近畿】(アジア太平洋研究所)大阪・関西万博の影響で、短期的な求人の増加がうかがえる
- 【中国】(中国地域創造研究センター)4~6月期の経済動向は米国の通商政策への懸念から「やや悪化」に転落
- 【四国】(四国経済連合会)平均賃上げ率が3%以上の企業が約半数に達する
- 【九州】(九州経済調査協会)生産活動はプラスの動きだが、景況は一進一退の状況
フォーカス
2021年に施行された現行ベトナム労働法において、労働者代表組織の制度の改正があった。このことは、「ベトナム労働法の現状 第3回「労使関係、その他」‐労働者代表組織、女性保護、セクハラ、外国人労働等」(2023年3月)にて述べた。その後、改正労働組合法が公布され、2025年7月1日施行された。そこで、改めて、労働者代表組織と労使紛争について、その後に制定された政令・通達等の内容を踏まえ、ベトナム労働法とその実務の現状を有識者に解説してもらった。 (海外情報担当)
雇用システムの国際比較調査 ―ドイツ、フランス、スウェーデン
1980年代以降に進展したグローバル化やIT革命の影響を受けて、ドイツ、フランス、スウェーデンの雇用システムおよびその周辺状況がどのように変化したのかを明らかにするため、現地事情に精通した有識者が調査を実施し、その結果を取りまとめたものである。(海外情報担当)
- ドイツ企業の人的資源管理の新展開:グローバル・スタンダードと「成果主義」を超えて
- フランスにおける企業内移動の構造と実態 ―管理職層を中心に
- スウェーデン労働市場とインダストリー4.0 ―カギを握る教育投資
海外労働事情
海外情報を担当する調査員が、欧米・アジアを中心に、労働市場・賃金動向・職業紹介・職業訓練・労使関係など様々な視点から最新事情を紹介します。
- アメリカ①
- 若年低所得層向け職業訓練「ジョブ・コア」を停止 ―連邦労働省、効果疑問視
- アメリカ②
- ワシントンD.C.などが7月に最賃改定 ―加州では医療施設従事者対象の引き上げも
- アメリカ③
- 「減税・歳出削減法」が成立 ―低所得者向け医療保険・食料支援の支給厳格化も
- ドイツ①
- 両親手当 ―導入以来、実質価値が27%低下
- ドイツ②
- 適正な賃金とは? ―外国人就労をめぐる雇用エージェンシーの判断が議論呼ぶ
- ドイツ③
- フルタイム労働者の中央値年収は5万2159ユーロ ―連邦統計局
- ドイツ④
- メルツ政権、「ターボ帰化」廃止法案を提出へ
- ドイツ⑤
- 最賃委、二段階引上げ勧告も15ユーロに届かず
- ドイツ⑥
- 新たな労働時間政策案に対する労働者の反応 ―IAB調査
- フランス
- 2025年の年次団体交渉による賃上げ率を2.1~3.5%と推計 ―フランス銀行や民間調査機関による調査結果
- 中国①
- 民生分野における保障と改善に関する政府の新政策
- 中国②
- 技能人材に対する給与インセンティブの強化
- 中国③
- 障害者雇用促進計画(2025~2027年)と就職の現状
- 中国④
- 休息・休暇をめぐる争議の増加と働き方改革、残された課題
- 韓国①
- 2026年適用最低賃金は2.9%増の10,320ウォンで決着
- 韓国②
- 雇用労働部が雇用保険適用基準を変更する改正案を立法予告
- インド①
- ギグワーカーが2047年に6,160万人に増加 ―V・V・ギリ国立労働研究所推計
- インド②
- ギグワーカーの法的保護のための連邦法および州法 ―2020年社会保障法典とカルナータカ州法
- ILO①
- 世界の労働力の4.7%は移民労働者 ―ILO国際労働力移動世界推計第4版
- ILO②
- 世界の雇用の4分の1が生成AIに代替される可能性 ―ILO研究ブリーフ
- OECD
- 堅調な労働市場、高齢化が今後に影 ―OECD雇用見通し2025
ちょっと気になるデータ
最近公表された公的統計のなかから、ちょっと気になるデータを統計解析担当の調査員がピックアップし、わかりやすく紹介します。(統計解析担当)
2025年7月25日掲載