【北陸】(北陸経済研究所)
新規高卒者の採用に苦戦する企業、石川県では高卒求人倍率が過去最高に

地域シンクタンク・モニター定例調査

北陸地域の1~3月期の経済動向は、消費は緩やかに回復しつつあるものの、生産活動は持ち直しに向けた動きに一服感があることから、モニターである北陸経済研究所は【横ばい】と判断した。4~6月期は、景況判断の動きをもとに【やや悪化】とした。雇用動向については、労働市場のタイトな状況が継続していることから1~3月期実績、4~6月期見通しともに【横ばい】としている。新規高卒者の採用に苦戦する企業もあり、石川県では高卒の求人倍率が過去最高を更新した。

<経済動向>

スーパーが緩やかに回復し、コンビニは堅調

北陸地域について、モニターは1~3月期の地域経済を【横ばい】と判断した。その理由として、需要面は「緩やかに回復しつつある」と指摘した。

小売の動向をみると、「百貨店」は、大雪で客数が減少したことなどから衣料品の動きが鈍い。「スーパーマーケット」は、飲食料品に動きがみられ、全体では緩やかに回復しつつある。「コンビニエンスストア」は、飲料などに動きがみられることから、堅調となっている。「ドラッグストア」は、飲食料品などに動きがみられるほか、新規出店効果もあり拡大している。「ホームセンター」は、DIY用品や日用品の動きが鈍いことなどから、弱含んでいる。「家電大型専門店」は、白物家電の動きが鈍いことから持ち直しの動きに一服感がみられる。

主要観光地の入込客数および主要温泉地の宿泊客数は、前年を上回っている。旅行取扱状況は、海外旅行は厳しい状況だが国内旅行は持ち直している。

新車販売は、緩やかに持ち直しつつある。

生産活動は持ち直しに向けた動きに一服感

供給面は、「持ち直しに向けた動きに一服感がみられる」という。

業種別の動きをみると、「化学」は、大半を占める医薬品が緩やかに回復している。「電子部品・デバイス」は、スマートフォン向けや自動車向けで持ち直しに向けた動きに一服感がみられるほか、家電向けが弱まっていることなどから、全体では弱含んでいる。

「生産用機械」は、繊維機械が緩やかに持ち直しつつあるものの、半導体製造装置で持ち直しの動きに一服感がみられるほか、金属加工機械が弱含んでいることなどから、全体では弱含んでいる。「金属製品」は、大半を占めるアルミ建材でビル用に持ち直しの動きがみられるものの、住宅用が減少していることから全体では弱含んでいる。

「繊維」は、衣料向けが弱含んでいるものの、非衣料向けが持ち直しつつあることから全体では緩やかに持ち直しつつある。

製造業の景気予測はマイナス、米国の消費減速を懸念

北陸財務局「北陸3県の法人企業景気予測調査(4~6月調査)」によれば、企業の景況判断はマイナス3.3の「下降」超で、前期から0.3ポイント改善している。業種別にみると、製造業がマイナス5.7、非製造業はマイナス1.5でいずれも「下降」超となっている。

規模別にみると、大企業が0.0、中堅企業がプラス13.2、中小企業がマイナス10.2と、中堅・中小企業で厳しい状況となっている。

なお前回調査での「4~6月見通し」は、製造業は0.7の「上昇」超だったが、今回調査ではマイナス5.7の「下降」超に下方修正となった。

モニターは「トランプ関税の影響がいまだ不透明な時期ではあるが、米国の消費減速懸念から受注減や納入先が発注先送りする動きもあり、製造業でマイナス幅が拡大、下方修正となった」とコメントし、4~6月期の地域経済について【やや悪化】と判断した。

<雇用動向>

全国と比べ労働市場は引き続き「タイトな状況」

1~3月期の雇用動向について、モニターは、「北陸3県の有効求人倍率は1.56倍で、前期から0.01ポイント上昇している。全国平均(1.25倍)と比較すると、北陸の労働市場は引き続きタイトな状況にある」「新規求人数は1月が前年比プラス5.4%、2月が同マイナス10.4%、3月が同マイナス0.6%となっている。ここ半年で前年比プラスに転じた月が2回あったものの、傾向としてはマイナス基調が続いている」と報告したうえで、判断は【横ばい】とした。

従業員の不足感続くが、製造業の大企業では低下の見通し

「北陸3県の法人企業景気予測調査(4~6月調査)」によれば、6月末時点の従業員数判断BSIは29.2の「不足気味」超で、前期から「不足気味」超幅が5ポイント低下した。業種別にみても、製造業が20.0、非製造業が36.1でいずれも「不足気味」超。規模別でも大企業が24.7、中堅企業が32.2、中小企業が30.5でいずれも「不足気味」超となっている。

なお、全体としては「不足気味」超の状況が続いているが、製造業の大企業については、4~6月現状が16.7、7~9月見通しが14.3、10~12月見通しが9.5と、「不足気味」超の値に低下傾向がみられる。

これらの結果をもとにモニターは、4~6月期の雇用状況の見通しを【横ばい】と判断した。

高卒募集企業の6割超が思うように採用人数を確保できず

金沢商工会議所が3月に会員企業を対象に行った高卒採用に関するアンケートによると、直近2、3年の採用実績で予定人数に達しない、応募がないなどの「思うように採用人数を確保できていない」とする企業は、高卒を募集した企業のうち6割超を占めた。

石川県の今春卒業の高卒求人倍率は4.39倍と過去最高を更新しており、高卒人材の確保に苦慮する企業が目立つ。モニターはこの背景について、「少子化に加え、大学などへの進学率の高まりがある」としたうえで、「特に製造業では、早くから技術を習得して長く戦力となる高卒者の獲得に力を入れる企業が多く、争奪戦が過熱している」とコメントしている。