企業内の労働組合に加入していない労働者の未加入の理由のトップは「メリットが見出せない」
――厚生労働省の2024年「労使コミュニケーション調査」結果
国内トピックス
厚生労働省が6月24日に公表した2024年「労使コミュニケーション調査」結果によると、企業内労働組合に加入資格があるにもかかわらず、加入していない労働者の未加入の理由は、「加入するメリットが見出せない」が51.8%で最も高く、5年前の前回調査から約15ポイント増加した。パートタイム労働者では、「周囲に加入者がいないから」(49.6%)との回答割合が最も高かった。労働者が企業内の労働組合についてどの程度必要であると考えているかをみると、「必要である」が52.6%と約5割を占めた。
調査は5年ごとに実施し、事業所調査と労働者調査に分かれる。今回は2024年6月30日時点の状況について、常用労働者30人以上を雇用する民営事業所およびその常用労働者に尋ねている。有効回答数は、事業所調査が2,680事業所(有効回率48.8%)、労働者調査が2,613人(同41.0%)となっている。
〈労働者調査〉
嘱託労働者の労働組合加入は2割以下にとどまる
企業内に労働組合がある事業所(42.7%)の労働者の、企業内の労働組合への加入状況をみると、「加入している」が81.4%(前回66.2%)、「加入資格があるが加入していない」が5.4%(同13.9%)、「加入資格がない」が13.1%(同19.9%)となっている。
「加入している」労働者割合を就業形態別にみると、「正社員」が84.7%、「パートタイム労働者」が72.3%、「有期契約労働者」が50.8%となり、「嘱託労働者」は16.1%にとどまる。
また、勤続年数別にみると、「1年未満」は52.6%と約5割にとどまるものの、「1年以上2年未満」(73.5%)、「2年以上3年未満」(96.2%)、「3年以上5年未満」(88.9%)、「5年以上10年未満」(91.1%)、「10年以上20年未満」(84.3%)、「20年以上」(71.3%)はいずれも7割~9割台にのぼっている。
未加入理由の第2位は「組合や組合活動に興味がない」
労働者が企業内の労働組合に加入資格があるが加入しない理由(複数回答)をみると、「加入するメリットが見出せないから」が51.8%で、前回(37.0%)より14.8ポイント増加した。これに続くのは「労働組合や組合活動に興味がないから」で38.0%(前回37.8%)となっており、「組合費を負担するのが嫌だから」が24.5%(同9.2%)などとなっている。
同割合を就業形態別にみると、「正社員」では「加入するメリットが見出せないから」が62.2%にのぼり、「パートタイム労働者」では「周囲に加入者がいないから」が49.6%と高くなっている。「有期契約労働者」では「周囲に加入者がいないから」(56.2%)や「労働組合や組合活動に興味がないから」(49.0%)が比較的高い。
企業内の労働組合が「必要ではない」は14.9%と少ない
労働者が企業内の労働組合についてどの程度必要であると考えているかをみると、「必要である」が52.6%(前回53.2%)、「どちらともいえない」が26.8%(同23.3%)、「必要ではない」が14.9%(同17.5%)となっている。
「必要である」割合を、労働組合の有無別にみると、労働組合がある事業所の労働者では80.5%にのぼり、労働組合がない事業所の労働者では32.1%にとどまった。
〈事業所調査〉
1,000人以上の企業では半数以上が労使協議機関あり
「労使協議機関がある」事業所(企業全体にある場合を含む。以下同じ)は36.4%で、前回調査(37.1%)より0.7ポイント減少している。そのうち2023年(または2023会計年度。以下同じ)1年間の労使協議機関の成果の有無をみると、「成果があった」が59.3%(前回60.7%)、「成果がなかった」が1.0%(同1.8%)、「どちらともいえない」が37.8%(同36.2%)となっている。
「労使協議機関がある」事業所割合を企業規模別にみると、「5,000人以上」が80.5%、「1,000~4,999人」が56.4%、「300~999人」が39.0%、「100~299人」が21.2%、「50~99人」が23.3%、「30~49人」が20.7%で、1,000人以上の企業では半数以上が労使協議機関を設けている。また、労働組合の有無別にみると、「労働組合がある」事業所は83.2%、「労働組合がない」事業所は15.1%となった。
労使協議機関に付議する事項は「労働時間・休日・休暇」がトップ
労使協議機関がある事業所について、「従業員代表に正社員以外の労働者が入っている」割合は25.3%(前回24.4%)。就業形態別(複数回答)にみると、「パートタイム労働者」が17.3%(同20.2%)、「パートタイム労働者以外の労働者」が9.6%(同5.6%)となっている。
労使協議機関がある事業所における、労使協議機関に付議する事項(複数回答)をみると、「労働時間・休日・休暇に関する事項」が86.0%で最も高く、次いで「安全衛生に関する事項」(75.9%)、「賃金・退職給付に関する事項」(72.4%)、「定年制・勤務延長・再雇用に関する事項」(67.9%)などとなっている。また、同事業所における、専門委員会で取り扱う事項(複数回答)をみると、「安全衛生に関する事項」(34.4%)が突出して高くなった。
約半数の事業所は職場懇談会を設ける
「職場懇談会がある」事業所は49.9%で、前回(52.7%)より2.8ポイント減少している。そのうち2023年1年間に職場懇談会が開催された事業所は86.6%(前回91.7%)で、その成果の有無をみると、「成果があった」が78.0%(同79.0%)、「成果がなかった」が0.0%(同0.6%)、「どちらともいえない」が21.9%(同20.2%)となっている。
「職場懇談会がある」事業所割合を企業規模別にみると、「5,000人以上」が61.2%、「1,000~4,999人」が55.3%、「300~999人」が57.0%、「100~299人」が40.9%、「50~99人」が39.4%、「30~49人」が51.3%となっている。また、労働組合の有無別にみると、「労働組合がある」事業所は65.3%、「労働組合がない」事業所は43.0%となった。
話し合い事項で最も多いのは「日常業務の改善・運営」
2023年1年間に開催された職場懇談会における話し合い事項(複数回答)をみると、「日常業務の改善・運営に関すること」が85.9%で最も高く、次いで「安全衛生に関すること」(65.0%)、「経営方針、生産、販売等の計画に関すること」(47.4%)などとなっている。
また、2023年1年間に職場懇談会が開催された事業所のうち、正社員以外の労働者がいる事業所について、正社員以外の労働者が職場懇談会に「参加した」割合は55.0%(前回58.3%)。就業形態別(複数回答)にみると、「パートタイム労働者」が41.7%(同43.9%)、「有期契約労働者」が24.5%(同25.6%)、「嘱託労働者」が21.4%(同19.2%)、「派遣労働者」が7.7%(同8.2%)となった。
苦情処理機関がある事業所は企業規模が大きくなるほど高い
「苦情処理機関がある」事業所は67.3%となり、前回(57.8%)より9.5ポイント増加している。機関の種類の内訳(複数回答)をみると、「相談窓口(電子メールでの受付を含む)」が86.6%(前回81.1%)を占め、次いで「苦情処理委員会」が15.7%(同16.7%)となっている。
「苦情処理機関がある」事業所割合を企業規模別にみると、「5,000人以上」が82.8%、「1,000~4,999人」が81.6%、「300~999人」が74.9%、「100~299人」が66.8%、「50~99人」が65.2%、「30~49人」が49.1%となり、企業規模が大きくなるほど苦情処理機関がある割合は高くなる。また、労働組合の有無別にみると、「労働組合がある」事業所は77.9%、「労働組合がない」事業所は62.4%となっている。
相談窓口・苦情処理委員会ともに苦情内容は人間関係が最多
苦情処理機関の「相談窓口がある」事業所のうち、2023年1年間に「苦情処理機関の利用があった」事業所は42.6%(前回47.3%)となっている。そのうち解決状況をみると、「実際に救済・解決に至ったものが多い」が46.9%(同44.3%)、「話を聞いて納得したものが多い」が42.4%(同44.4%)で、ともに4割台となり、「解決されない苦情が多い」は3.6%(同2.9%)にとどまった。
また、「苦情処理委員会がある」事業所割合のうち、2023年1年間に「苦情処理機関の利用があった」事業所は23.2%(同28.9%)。そのうち解決状況をみると、「実際に救済・解決に至ったものが多い」が46.6%(同56.2%)、「話を聞いて納得したものが多い」が44.6%(同23.4%)と、ともに4割台にのぼり、「解決されない苦情が多い」は7.9%(同6.2%)となった。
2023年1年間に「相談窓口の利用があった」事業所における苦情の内容(複数回答)をみると、「人間関係に関すること」が75.3%で最も高く、次いで「日常業務の運営に関すること」(43.6%)、「賃金、労働時間等労働条件に関すること」(30.1%)、「人事(人員配置・出向、昇進・昇格等)に関すること」(27.2%)、「男女差別、セクハラに関すること」(23.2%)などが高い。
2023年1年間に「苦情処理委員会の利用があった」事業所における苦情の内容(複数回答)では、「人間関係に関すること」が51.0%で最も高く、次いで「日常業務の運営に関すること」(43.7%)、「人事(人員配置・出向、昇進・昇格等)に関すること」(22.7%)などが高くなった。
外部機関等を今後利用したい事業所は2割台にとどまる
2023年1年間に従業員との紛争を解決するために「外部の機関(公共機関を含む。以下同じ)等を利用したことがある」事業所の割合は9.0%となり、前回(10.7%)より1.7ポイント減少している。そのうち、どのような機関を利用したか(複数回答)をみると、「社外の機関や専門家(カウンセラー、弁護士等)」が83.4%(前回75.1%)で最も高く、次いで「都道府県労働局」が17.9%(同32.3%)、「裁判所」が7.4%(同13.9%)などとなっている。
今後の外部の機関等の利用希望の有無をみると、「利用したい」が23.6%(同22.4%)、「利用したいと思わない」が12.5%、(同13.3%)、「わからない」が61.7%(同60.2%)となっている。「利用したいと思わない」事業所における理由(複数回答)をみると、「自社の実態に即した解決ができない」が41.1%(同34.2%)で最も高く、以下、「職場の労使関係が不安定になる」が32.8%(同30.9%)、「解決に費用がかかる」が21.6%(同19.2%)などと続いている。
(調査部)
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