【山形】(山形銀行やまぎん情報開発研究所)
昨年7月の豪雨災害からの復旧工事で建設業・不動産業が改善

地域シンクタンク・モニター定例調査

山形県では、1~3月期の地域経済は、個人消費が回復していることから、モニターである山形銀行やまぎん情報開発研究所は【やや好転】と判断した。4~6月期の見通しは、製造業の業況判断は米国の関税政策を受けて悪化しているものの、建設業・不動産業は昨年7月の豪雨災害からの復旧工事が増加して改善しており、【横ばい】とした。雇用動向は、人手不足感の状況をもとに1~3月期の実績、4~6月期の見通しのいずれも【横ばい】と判断した。今春に高校を卒業して就職した人のうち、県内に就職をした人の割合は78.5%で、5年ぶりに8割を下回った。

<経済動向>

個人消費が回復、前期の低下分をおおむね取り戻す

1~3月期の鉱工業生産指数は、前年比では5四半期連続のマイナスとなったものの、前期比では3.6%上昇した。

個人消費をみると、当期の県内の販売統計は前年比プラス3.1%となっている。モニター作成の「やまぎん消費総合指数」は実質値で前期比プラス7.2%、名目値でも同プラス8.6%で、いずれも上昇した。食料品やエネルギー価格の上昇といった不可避な支出増もあるものの、2024年10~12月期の低下分をおおむね取り戻した形となっている。

モニターが実施した「やまぎん企業景況サーベイ」によると、当期の業況判断BSIは前期から3.9ポイント低下してマイナス3.7となった。2期ぶりに低下して「悪化超」に転じた。業種別にみると、非製造業は前期比0.3ポイント低下のマイナス3.7でほぼ横ばいとなったものの、製造業は米国の通商政策の影響懸念などから、同9.4ポイント低下のマイナス3.8となった。

こうした動きをふまえつつモニターは、「米国通商政策への懸念によるマインド下押しがみられたものの、緩やかな持ち直しの動きが続いた」として1~3月期の地域経済を【やや好転】と判断した。

米国の関税政策で輸送機械の業況判断が大幅悪化

4~6月期について、生産活動は、米国の通商政策の影響が懸念されるものの、半導体をはじめとする電子機器や半導体製造装置は現状では関税対象外となっていることもあり、主力の電子部品・デバイスや汎用・生産用・業務用機械は目立った減産には至っていない。一方、医薬品等の化学や、Windows 10のサポート切れを前にPCの買い替え需要の拡大が見込まれる情報通信機械は、増産傾向となることが予想されるため、総じてみれば横ばい圏内での推移になるものとみられる。

「やまぎん企業景況サーベイ」によると、当期の業況判断BSIは前期比5.9ポイント上昇の2.2で2期ぶりに上昇した。業種別にみると、製造業は同1.5ポイント低下のマイナス5.3で、自動車の米国向け輸出に25%の関税が適用となったことなどを受けて、輸送機械を中心に大幅な悪化となった。非製造業は同11.4ポイント上昇の7.7となっている。昨年の7月豪雨を受けた災害復旧工事の増加などで、ウエイトの大きい建設業・不動産業が改善したほか、他の非製造業種についても、価格改定効果で業況が改善している企業が増えている。

こうした状況を総合的にふまえてモニターは、4~6月期の見通しを【横ばい】とした。

<雇用動向>

強い人手不足感が継続

労働統計をみると、1~3月の有効求人倍率は1.35倍で、前期比プラス0.01ポイントと横ばいだった。生産拠点の再編や企業倒産の増加から、求職者のうち事業主都合離職者は増加傾向が続いているものの、自己都合離職者は減少しており、有効求職者数全体では前年同期比で減少が続いている。こうしたなか有効求人数は、就職フェアの開催などを受けて一時的に増加する月もみられたが、総じてみれば前年同期を下回って推移し、求人・求職ともに縮小傾向となるなかで、有効求人倍率は小幅な動きとなった。

「やまぎん企業景況サーベイ」の雇用判断BSI(「多い」-「少ない」)をみると、前期比1.6ポイント上昇のマイナス33.8で、小幅ながら1年ぶりに上昇した。業種別にみると、非製造業は同1.9ポイント上昇のマイナス42.7、製造業は同0.7ポイント上昇のマイナス21.4となっている。マイナス40前後で推移していた2022~2023年に比べると、2024年以降は製造業を中心にやや高めの水準で推移しており、「外需の不振などを受けた製造業の生産活動の漸減により、徐々に人手不足感が緩和している様子もうかがえる」という。

モニターは1~3月期の雇用状況を、「強い人手不足感が継続するなかで、ほぼ【横ばい】の動き」と判断した。

人手不足感が2021年第4四半期の水準まで緩和する

4月の労働統計をみると、有効求人倍率は1.34倍で、前月比では0.01ポイント低下、前年比では0.01ポイント上昇と、総じて横ばいの動きになっている。県内の有効求人倍率は引き続き全国平均よりも高く、また東北6県で最も高い水準を維持している。求人・求職ともに縮小傾向となるなかで、小幅な動きが続く見込み。

「やまぎん企業景況サーベイ」での4~6月期の雇用判断BSIは前期比4.2ポイント上昇のマイナス29.6で、2期連続の上昇となった。依然として人手不足感の強い状態ながら、2021年10~12月期以来、3年半ぶりの高水準となっている。業種別にみると、製造業は同11.7ポイント上昇のマイナス9.7で、2021年4~6月期以来の高水準になった。米国の通商政策などに対する先行き不透明感から、雇用判断が急速に慎重化している。一方、非製造業は同1.5ポイント低下のマイナス44.2で、小幅な低下となっている。当期での業況改善が目立った建設業・不動産業、卸売業などにおける人手不足感の拡大がBSIを押し下げている。

モニターは4~6月期の見通しについて、「米国の通商政策などによる先行き不透明感から、製造業を中心に求人意欲に停滞感がうかがえる半面、非製造業は一段と人手不足感が強まる状況にあり、雇用動向は全体として【横ばい】での推移が見込まれる」と判断した。

高卒者の県内就職割合が5年ぶりに8割を下回る

今年3月に卒業した県内高校生のうち、就職者数は1,780人で前年から2.2%増加した。このうち県内就職者数は1,398人で、6年連続で減少した。県内への就職割合は78.5%となっており、コロナ禍以降は80%台で推移していたが、5年ぶりに8割を下回った。

また、モニターが実施した調査によると、夏季賞与の1人あたり支給額は、前年に比べて「増加する」が19.5%、「前年並み」が62.3%、「減少する」が9.1%、「支給なし」が9.1%となっており、「増加する」は前年調査から2.7ポイント低下したが、「減少する」も2.4ポイント低下している。