総合労働相談件数は5年連続で120万件を超える
――厚生労働省「2024年度の個別労働紛争解決制度の施行状況」
国内トピックス
厚生労働省が6月25日に発表した「2024年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、2024年度の総合労働相談件数は120万1,881件となり、前年度に比べ0.7%減少となった。ただ、同件数は5年連続で120万件を超えており、高止まりの状況となっている。
「個別労働紛争解決制度」は、労働者と事業主で発生した労働条件や職場環境をめぐるトラブルを未然に防止し解決するための制度。都道府県労働局や労働基準監督署、駅近隣の建物などに設置された総合労働相談コーナーで専門の相談員が対応する「総合労働相談」や、都道府県労働局長が紛争当事者に対して解決の方向を示すことで自主的な解決を促す「助言・指導」、都道府県労働局に設置されている紛争調整委員会のあっせん委員が間に入って話し合いを促すことにより解決を図る「あっせん」がある。
助言・指導申出とあっせん申請は前年度比で増加
2024年度の結果をみると、総合労働相談件数は120万1,881件(前年度比0.7%減)、助言・指導申出が8,865件(同5.9%増)、あっせん申請が3,866件(同4.9%増)となった。
このうち総合労働相談件数を過去5年間でみると、2020年度が129万782件、2021年度が124万2,579件、2022年度が124万8,368件、2023年度が121万412件、2024年度が120万1,881件となり、5年連続で120万件を超えている(図表)。
図表:相談件数の推移(過去5年度について)
(公表資料から編集部で作成)
総合労働相談件数の内訳をみると「法制度の問い合わせ」が81万4,454件(前年度比2.4%減)、「労働基準法等の違反の疑いがあるもの」が20万7,619件(7.6%増)、労働基準法等の違反に関するものを除いた「民事上の個別労働関係紛争相談」が26万7,755件(0.6%増)となっている。
「いじめ・嫌がらせ」の相談件数が13年連続で最多
このうち、民事上の個別労働関係紛争相談件数の内訳をみると、「いじめ・嫌がらせ」が5万4,987件(前年度比8.5%減)となり、13年連続で最多。次いで「自己都合退職」が4万1,502件(同2.3%減)、「解雇」が3万2,059件(同2.7%減)、「労働条件の引き下げ」が3万833件(同2.0%増)、「退職勧奨」が2万5,604件(同1.5%増)などとなった。
また、就労形態別にみると、「正社員」が10万6,508件と全体の39.8%を占め、次いで「短時間労働者」が3万7,003件(13.8%)、「有期雇用労働者」が3万3,338件(12.5%)、「派遣労働者」が1万3,585件(5.1%)などとなっている。
助言・指導の申出内容のトップは「労働条件の引き下げ」
労働局長による助言・指導の申出件数は8,865件で、前年度の8,372件から増加。申出の内訳をみると、「労働条件の引き下げ」が1,103件(前年度比7.8%増)と最も多く、次いで「いじめ・嫌がらせ」が960件(同数)、「自己都合退職」が859件(同3.1%増)、「雇用管理等」が811件(同30.0%増)、「解雇」が801件(同6.4%増)などの順となっている。
就労形態別にみると、「正社員」が4,540件となり、全体の51.2%を占めた。次いで「短時間労働者」が1,656件(18.7%)、「有期雇用労働者」が1,585件(17.9%)、「派遣労働者」が584件(6.6%)などの順となった。
助言・指導の申出のうち、処理が終了した件数は8,664件。その内訳は「助言・指導の実施」が8,256件(95.3%)、「取り下げ」が241件(2.8%)、「打ち切り」が139件(1.6%)などとなっている。
あっせんの申請内容のトップは「解雇」
紛争調整委員会によるあっせんの申請件数は3,866件で、前年度の3,687件から増加している。申請件数を内容別にみると、「解雇」が792件(前年度比0.1%減)で最も多く、次いで「いじめ・嫌がらせ」が716件(同10.5%減)、「雇止め」が433件(同20.3%増)、「労働条件の引き下げ」が399件(同5.0%増)、「退職勧奨」が344件(同23.7%増)などの順となっている。
就労形態別にみると、「正社員」が1,832件と最も多く、全体の47.4%を占めた。次いで「有期雇用労働者」が770件(19.9%)、「短時間労働者」が755件(19.5%)、「派遣労働者」が346件(8.9%)など。
あっせん申請のうち、処理終了件数は3,782件。その内訳をみると「当事者間の合意の成立」が1,143件(30.2%)、「申請の取り下げ」が159件(4.2%)、「打ち切り」が2,465件(65.2%)などとなっている。
なお、民事上の個別労働関係紛争における相談、助言・指導の申出、あっせんの申請の全項目でみると、「労働条件の引き下げ」の件数が前年度から増加している。
(調査部)
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