出身地域で固定的な性別役割分担意識があったと感じている人の割合は、東京圏以外の出身者のほうが高いことが明らかに
――内閣府男女共同参画局が「2025年版男女共同参画白書」をとりまとめ
スペシャルトピック
内閣府男女共同参画局はこのほど、2025年版男女共同参画白書をまとめた。今年は、「男女共同参画の視点から見た魅力ある地域づくり」が特集テーマ。地域における女性や若者を取り巻く状況について、政府統計や調査結果などを中心に整理したうえで、固定的な性別役割分担意識などに基づく地域における構造的な問題に起因する課題を明らかにした。白書によると、出身地域で固定的な性別役割分担意識があったと感じている人の割合は、すべての項目で男性より女性のほうが高く、また、男女ともに東京圏出身者より東京圏以外の出身者のほうが高くなっている。
特集は「第1節 人の流れと地域における現状と課題」「第2節 若い世代の視点から見た地域への意識」「第3節 魅力ある地域づくりに向けて」で構成。労働関連に絞って第1節と第2節の主な内容を紹介する。
■人口移動のタイミング
移動のピークは男女とも22歳
都道府県間移動率(都道府県を越えて移動した者の都道府県別人口に占める割合)をみると、男女とも22歳がピークで、その率は女性が14.20%、男性が15.22%となっている。24歳では、男性のほうが女性より2.70ポイント高いが、白書は「男女差については、一因として、男性の方が大学院(修士課程)修了後の就職による転居が多くなっていることが考えられる」としている。23歳以降の移動率について、女性は男性に比べ「あまり移動しない傾向がある」という。
■転入(転出)超過と雇用環境悪化の関係
雇用環境と転入超過数には正の相関
東京圏の有効求人倍率と転入超過数の推移の関係をみると、男女ともに正の相関があるとしている(有効求人倍率が高い年ほど、転入超過人数が多い)。最も強い相関(r=0.88)がみられるのは20代女性で、「若い世代の東京圏への移動には、雇用環境が関係しており、特に20代女性はその関係が強いことが推測される」としている。
一方、女性では30代・40代になると、男性に比べ相関係数が低くなる。白書は「結婚や子育てなど、雇用環境以外の要因と移動の関係が強くなっている可能性が示唆されている」とする。
■就業状況と雇用環境
「M字カーブ」の解消が最も進む北陸
女性の年齢階級別有業率(15~64歳)を地域別にみると、北陸でいわゆる「M字カーブ」の解消が最も進んでおり、「25~29歳」と「35~39歳」の差は1.7ポイントとなっている。差が最も大きいのは南関東で、「25~29歳」と「35~39歳」の差は9.8ポイントなっている。
女性の有業率の全体平均は、北陸が76.8%で最も大きい。なお、最も低いのは沖縄の70.3%となっている。
「25~29歳」女性の正規雇用比率が最も高いのは南関東
女性の正規雇用比率(15~64歳)を地域別にみると、沖縄を除くすべての地域(北海道、東北、北関東・甲信、南関東、北陸、東海、近畿、中国、四国、九州)で、「25~29歳」をピークに、年代が上がるとともに低下する「L字カーブ」があらわれている。「25~29歳」の女性の正規雇用比率が最も高い地域は南関東で66.6%。最も低いのは沖縄で41.4%となっている。
女性の正規雇用比率の全体平均が最も高いのは北陸で40.8%。最も低いのは近畿で31.9%となっている。
正規の職員・従業員の産業別割合をみると、女性では「医療、福祉」が30.0%と最も高くなっており、さらに「医療、福祉」の割合を都道府県別にみると、長崎県で42.5%と最も高く、北海道と、中国、四国、九州の県で35%以上の県が多い。
■生活・労働環境
女性の所定内給与額が最も低いのは青森県
所定内給与額を都道府県別にみると、男女ともに東京都(女性33.8万円、男性44.1万円)が最も高い。最も低いのは、女性では青森県(22.4万円)で、男性では沖縄県(28.7万円)となっている。
男女間賃金格差は、静岡県で73.1(女性25.1万円、男性34.3万円)と最も大きく、沖縄県で83.4(女性23.9万円、男性28.7万円)と最も小さい。
北陸で仕事時間と家事時間の合計の妻と夫の差が大きい傾向
6歳未満の子どものいる妻と夫の仕事関連時間および家事関連時間をみると、すべての都道府県で、家事関連時間は妻のほうが210分以上、仕事関連時間は夫のほうが180分以上長い。妻と夫の仕事関連時間の差が大きい都道府県ほど、妻と夫の家事関連時間の差も大きいという。
仕事関連時間と家事関連時間の合計について、妻と夫の差(妻-夫)をみると、山口県(124分)、富山県(107分)、石川県(100分)、福井県(99分)など、北陸などで差が大きい傾向にあった。一方、栃木県では40分、宮城県では33分、宮崎県では27分、夫のほうが長い。
女性のテレワーク実施率は最も高い東京都で34.0%
テレワークの実施状況をみると、有業者のうち、2021年10月~2022年9月にテレワークを「実施した」者の割合は、女性が14.1%で、男性が23.2%。テレワーク実施率は都道府県によって差があり、女性は、東京都で34.0%と最も高く、次いで、神奈川県(21.4%)、千葉県(16.7%)、大阪府(15.2%)、埼玉県(15.1%)の順となっている。白書は「男女ともに、都市で実施率が高くなっており、柔軟な働き方がしやすい環境であることがうかがえる」としている。
■各分野における女性参画の状況
管理的職業従事者の女性割合が最も高いのは徳島県
管理的職業従事者(会社役員、企業の課長相当職以上、管理的公務員等)に占める女性の割合は、2022年時点で15.3%となっている。都道府県別にみると、徳島県(23.8%)が最も高く、次いで、鳥取県(23.3%)、高知県(21.6%)、佐賀県(21.0%)、青森県(20.9%)の順となっている。
一部に例外はあるが、四国、中国、近畿や東北などで高く、南関東や北陸、沖縄などで低い傾向だという。なお、最も低いのは新潟県で8.8%。
起業者の女性割合が最も高いのは沖縄県
起業者(今の事業を自ら起した者)に占める女性の割合は、2022年時点で22.3%となっている。都道府県別にみると、沖縄県(25.8%)が最も高く、次いで、北海道(25.2%)、大阪府(24.9%)、三重県(24.6%)、高知県(24.6%)の順となっている。
一部に例外はあるが、東京都、大阪府のほか、近畿、中国、四国、東北などで高く、北関東や北陸などで低い傾向だという。
■若い世代が出身地域を離れた理由
出身地域を離れる理由のトップは進学先の少なさ
白書は内閣府の意識調査(国内在住の18~39歳の男女1万人が回答)結果から、自分の都合で出身地域を離れた者について、出身地域を離れた理由をみた。それによると、「希望する進学先が少なかったから」をあげる者の割合が、男女ともに最も高い。特に、自分の都合で都会へ転居した女性では、35.0%と高くなっている(自分の都合で都会へ転居した男性では29.2%)。
都会へ転居した女性では、次いで、「やりたい仕事や就職先が少なかったから」(22.6%)、「地元から離れたかったから」(20.7%)の順となっている。一方、都会へ転居した男性では、次いで、「やりたい仕事や就職先が少なかったから」(21.9%)、「学校や職場に通いづらかったから」(16.1%)の順となっている。
都会へ転居した女性は、都会へ転居した男性に比べて、「地元から離れたかったから」「希望する進学先が少なかったから」「親や周囲の人の干渉から逃れたかったから」「若者が楽しめる場所や施設が少なかったから」「出会いやチャンスが少なそうだったから」が高い。
東京圏に転出した女性では「地元から離れたい」との意識も
東京圏以外出身で、現在は東京圏に住んでいる者について出身地域を離れた理由をみると、男女ともに、「希望する進学先が少なかったから」が最も高く(女性42.1%、男性29.7%)、次いで、「やりたい仕事や就職先が少なかったから」(同27.4%、24.9%)、「地元から離れたかったから」(同26.8%、15.0%)の順となっている。
女性は、男性に比べて、「希望する進学先が少なかったから」「地元から離れたかったから」「親や周囲の人の干渉から逃れたかったから」などが高くなっている。白書は「東京圏に転出した女性が、仕事や就職先の少なさと並んで『地元から離れたかったから』を理由として挙げていることは、特筆すべきことであると考えられる」としている。
■仕事に就く際に重視したこと
東京在住者、東京圏以外在住者ともに仕事内容と希望とのマッチングを重視
東京圏以外出身者のうち、働いたことがある者について、仕事に就くにあたって重視したことをみると、現在は東京圏に住んでいる者、現在も東京圏以外に住んでいる者のいずれも、男女ともに「仕事内容が自分の希望にあっているか」を重視した者の割合が最も高い。同割合は、女性の東京圏に住んでいる者では82.5%、東京圏以外に住んでいる者が74.4%となっている。
現在は東京圏に住んでいる女性では、「給与や収入が自分の希望にあっているか」(74.6%)が2番目に高く、次いで、「労働時間が自分の希望にあっているか」(72.5%)、「自分の学んだことや能力を活かせそうか」(67.2%)の順。
現在も東京圏以外に住んでいる女性では、「労働時間が自分の希望にあっているか」(72.0%)が2番目に高く、次いで、「給与や収入が自分の希望にあっているか」(69.8%)、「ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)」(66.8%)の順となっている。
■固定的な性別役割分担意識や無意識の思い込みの現状
「家事・育児・介護」で最も高い固定的分担意識を感じる人の割合
内閣府の調査で、現住地域や勤務先における固定的な性別役割分担意識等の有無について項目別にみると、「ある(計)」(「よくある」と「時々ある」の計)と感じている者の割合は、女性では、「家事・育児・介護は女性の仕事」が24.9%と最も高く、次いで、「地域や親戚の集まりでの食事の準備やお茶出しは女性の仕事」(23.1%)、「職場でのお茶出しや事務などのサポート業務は女性の仕事」(22.7%)の順となっている。
現住地域ブロック別にみると、女性はほとんどの項目で、南関東(東京圏)で「ある(計)」と感じている者の割合が最も低い。
出身地域での分担意識も男性より女性のほうが感じている状況
出身地域における固定的な性別役割分担意識等の有無についてみると、「あった」(「よくあった」と「時々あった」の計)と感じている者の割合は、すべての項目で、女性のほうが高い。
項目別にみると、女性では、「地域や親戚の集まりでの食事の準備やお茶出しは女性の仕事」が30.0%と最も高く、次いで「家事・育児・介護は女性の仕事」(29.8%)、「職場でのお茶出しや事務などのサポート業務は女性の仕事」(26.2%)の順となっている。出身地域ブロック別にみると、女性では、ほとんどの項目で、南関東(東京圏)で「あった(計)」と感じている者の割合が最も低い。
東京圏在住女性のほうが出身地域での分担意識を感じている傾向に
東京圏以外出身者についてみると、現在は東京圏に住んでいる女性は、現在も東京圏以外に住んでいる女性に比べて、出身地域において、固定的な性別役割分担意識等があったと感じている割合が顕著に高くなっている。特に、「家事・育児・介護は女性の仕事」(東京圏42.5%、東京圏以外30.3%)、「家を継ぐのは男性がよい」(同38.6%、27.0%)、「地域や親戚の集まりでの食事の準備やお茶出しは女性の仕事」(同42.2%、30.7%)、「個人の価値観よりも世間体が大事」(同36.3%、25.9%)などで差が大きくなっている。
■現在の仕事に満足しているか
仕事への満足度は東京圏在住者のほうが高い
東京圏以外出身で、働いている者について、現在の仕事に満足している者の割合をみると、総じて、現在も東京圏以外に住んでいる女性よりも現在は東京圏に住んでいる女性のほうが高くなっている。
現在、東京圏に住んでいる女性は、現在も東京圏以外に住んでいる女性に比べて、「仕事内容について、男女の差異がないか」(東京圏76.1%、東京圏以外66.5%)、「昇進や給与等について、男女の差異がないか」(同71.4%、63.1%)、「ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)」(同72.1%、66.0%)で満足している者の割合が高くなっている。
白書は「東京圏には、企業の本社や大企業が多いことから、仕事内容や昇進等における男女平等や、ワーク・ライフ・バランス実現のための取組が進んでおり、東京圏以外に比べて、仕事で女性が活躍しやすい環境が整っており、女性の仕事における満足感につながっている可能性がある」としている。
(調査部)
2025年8・9月号 スペシャルトピックの記事一覧
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