【北海道】(北海道二十一世紀総合研究所)
観光が好調を持続、外国人入国者数が前年比3割超の増加
地域シンクタンク・モニター定例調査
北海道の1~3月期の地域経済について、モニターである北海道二十一世紀総合研究所は、外国人入国者数が前年比3割超の増加と、観光関連が好調に推移しているものの、個人消費の停滞感の強まりや企業のコスト負担の増加がみられることから【横ばい】と判断した。4~6月期の見通しも、観光は好調だが住宅投資が落ち込んでおり、【横ばい】としている。雇用動向は、1~3月期、4~6月期のいずれも有効求人倍率や日銀短観の動きをもとに【横ばい】と判断している。
<経済動向>
利益DIが3期ぶりにマイナス圏に
モニター実施の「道内企業の経営動向調査(1~3月期実績)」によると、売上DIは7で前期比2ポイント低下となったほか、利益DIはマイナス2で同5ポイント低下した。利益DIがマイナスに転じるのは3期ぶり。
業種別にみると、製造業の売上DIはマイナス13で同13ポイント低下、利益DIはマイナス27で同24ポイント低下。非製造業の売上DIは14で同2ポイント上昇、利益DIは8で同3ポイント上昇となっている。
分野別の動向をみると、個人消費はインバウンド需要を取り込めている業態では比較的好調に推移しているものの、物価上昇の影響で消費者の節約志向が引き続き強まっている状況がうかがえる。当期の販売額は百貨店(前年同期比プラス8.6%)、ドラッグストア(同プラス3.3%)、コンビニエンスストア(同プラス2.7%)、家電大型専門店(同プラス1.5%)が前年を上回り、ホームセンター(同マイナス3.2%)、スーパーマーケット(同マイナス2.1%)は前年を下回った。合計では前年同期比マイナス0.1%と、小幅に減少した。
乗用車新車登録台数は、メーカーの生産体制が回復していることもあり、前年同期比プラス6.4%と5四半期ぶりに前年を上回った。
新設住宅着工戸数は駆け込み需要で4割超の増加
観光関連をみると、国内来道客数は前年同期比プラス10.7%となっている。外国人入国者数は同プラス32.5%で大幅な伸びが続いている。
公共投資は、公共工事請負金額が前年同期比マイナス1.6%と、8四半期ぶりに前年を下回った。
住宅投資は、新設住宅着工戸数が前年同期比プラス42.1%と大幅に増加しており、モニターは「4月からの改正建築物省エネ法の全面施行を前に、駆け込み需要が生じた」とみている。
これらの動きをもとにモニターは、「インバウンドをはじめとした観光客の回復により観光関連が好調に推移している」ものの、「根強い物価高を背景に、個人消費の停滞感の強まり、企業のコスト負担の増加といった動きがみられる」ことから1~3月期の地域経済を【横ばい】と判断した。
新設住宅着工戸数は反動減
「道内企業の経営動向調査(4~6月期見通し)」によると、売上DIは4、利益DIはマイナス5で、いずれも前期から3ポイント低下する見通しとなった。業種別にみると、製造業は一部持ち直しの動きもみられる。非製造業は、小売業以外のすべての業種で今期を下回る見通しとなった。
4月の業態別販売額は、家電大型専門店、ホームセンター、百貨店、スーパーマーケットが前年を下回った一方で、コンビニエンスストア、ドラッグストアは前年を上回った。合計では前年同月比マイナス1.5%で、3カ月連続で前年を下回った。
観光関連では、4月の国内来道客数、外国人入国者数はともに前年同期比でプラスとなっている。
住宅投資は、4月の新設住宅着工戸数が1~3月期の反動減で前年同月比マイナス45.2%となった。公共投資は、4月の公共工事請負金額が同プラス21.2%となっている。
モニターはこれらの動きをもとに、4~6月期の見通しを【横ばい】と判断した。
<雇用動向>
人手不足感の強い状況に変化はみられず
労働統計をみると、有効求人倍率は1月が0.97倍(前月比マイナス0.02ポイント)、2月が0.98倍(同プラス0.01ポイント)、3月が0.99倍(同プラス0.01ポイント)と、横ばい圏で推移している。
新規求人数は1月が前年同月比マイナス5.2%、2月が同マイナス8.4%、3月が同マイナス2.4%と推移し、25カ月連続で前年を下回っている。
1~3月期の完全失業率は2.6%で、前期からは横ばいだが前年同期比では0.2ポイント上昇している。
日銀短観(3月調査)の雇用人員判断はマイナス46の「不足」超で、前期から3ポイント上昇した。業種別にみると、製造業がマイナス33で前期比2ポイント上昇、非製造業がマイナス50で同2ポイント上昇している。
モニターは1~3月期の雇用について、「新規求人数が減少傾向にあるものの、総じてみれば、人手不足感の強い状況に変化はみられず、基調に変化はない」として、【横ばい】と判断した。
求人減は続くが人手不足感に変化なし
日銀短観の6月先行きの雇用人員判断はマイナス49で、今期から3ポイント低下しており、人手不足感が強まる見込み。
4月の有効求人倍率は0.99倍で前月から横ばいの状況。新規求人数は前年同月比マイナス2.5%と、26カ月連続で前年を下回った。業種別にみると、「建設業」や「運輸業、郵便業」などが増加したものの、幅広い業種で前年を下回った。
モニターが2月中旬から3月中旬にかけて実施した調査「道内企業の雇用動向と新卒採用」によると、今後1年間の従業員の増減見通し(雇用方針DI、「増加」-「減少」)は前年比マイナス8ポイントの20となった。2024年は28で過去最高(29)に迫っていたが、そこから2005年の調査開始以来最大の落ち込み幅となった。
4~6月期の見通しについてモニターは、「新規求人数の減少傾向が続くとみられるものの、総じてみれば、人手不足感の強い状況に変化はない」として、【横ばい】と判断した。