ビジネス・レーバー・トレンド2024年3月号
毎月25日更新
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技能をどう高め、いかに継承させるか――「現代の名工」からの言葉
AI(人工知能)をはじめとする最新のデジタル技術が、高品質なものづくりに活用されつつあり、デジタルだからこそ、見える化や再現性の向上が容易になってきている。しかし、現場では、いまだ労働者の五感や、長年にわたる作業経験が頼りになる場面も多く、時間をかけて身につけた熟練技術の大切さは変わっていない。また、デジタルが普及した仕事の世界に移行するからこそ、文字や数値などでは伝えにくい「カン・コツ」「技」について、どう後進に伝え、指導していくかがますます重要になってくると言える。本号では、卓越した技能者である「現代の名工」3名の取材などを通し、どうやって技能を高め、技能継承させていったらよいのか、現場からの声に耳を傾ける。
目次
「現代の名工」取材
2023年11月に厚生労働省が決定した2023年度の卓越した技能者(「現代の名工」)に選ばれたヤマザキマザックマニュファクチャリング美濃加茂製作所第一工場(岐阜県美濃加茂市)の落合岳彦さん、スズキハイテック(山形県山形市)の三澤孝夫さん、日本製鉄東日本製鉄所鹿島地区(茨城県鹿嶋市)の茂木政男さんを取材し、自身がどのように技能を高め、技術を習得したのか、また、現在、技能を継承するためにどのように後進への指導にあたっているのか、現地に赴いて話をうかがった。(記事は氏名の五十音順で掲載)
- 「きさげ作業」でレーザ加工機の高精度化に貢献、ものづくりの楽しさを後進に伝える
<現代の名工(金属加工機械組立工)>
ヤマザキマザックマニュファクチャリング 美濃加茂製作所第一工場 落合岳彦さん - 世界に先駆けて鉛を使わないビスマスによるめっき液の量産適用に成功。技術変化が激しいなか、外国人社員も含めて後進指導に邁進
<現代の名工(電気めっき工)>
スズキハイテック 三澤孝夫さん - 製鉄に欠かせないコークスの品質向上に尽力。先輩から「見て覚えた」技能を後輩に「考えさせながら継承」
<現代の名工(製銑工)>
日本製鉄 東日本製鉄所鹿島地区 茂木政男さん
地域シンクタンク・モニター特別調査
地域経済の主力となる産業や、長い伝統を有する地場産業では、ベテランが持つ優れた技能を後進に伝え、育成することで産業を維持・発展させることが重要であることから、地域シンクタンク・モニターに対し、特別テーマとして「地域における技能継承と産業の維持・発展のための取り組み」について尋ねた。
※地域シンクタンク・モニター定例調査結果については本号後段に掲載
スペシャルトピック
注目度の高い国内のトピックスを、より詳しく紹介します。
国内トピックス
行政、企業、労働組合などの最新動向を、政策課題担当の調査員がわかりやすく紹介します。
- 推定組織率は16.3%で前年を下回る過去最低水準に ――厚生労働省が2023年「労働組合基礎調査」結果を公表
- 70歳までの就業確保措置を実施済みの企業は29.7%で前年から微増 ――厚生労働省の2023年「高年齢者雇用状況等報告」
- 民間企業に雇用される障がい者数が20年連続で過去最高を更新 ――厚生労働省が2023年「障害者雇用状況」集計結果を公表
- 外国人労働者数が初の200万人超え ――厚生労働省「外国人雇用状況」届出状況
- 養成講習・更新講習のアップデートや企業での利用促進に向けた周知を ――厚生労働省の「キャリアコンサルタント登録制度等に関する検討会」が報告書をとりまとめ
- 改善基準告示改正のトラック運転の拘束時間短縮で、3割弱が「ダイヤが厳しくなる」、約1割が「運行が維持できなくなる」と回答 ――運輸労連の「職場安全点検調査結果」
地域シンクタンク・モニター定例調査
各地域のシンクタンクのモニターに、地域経済や地域雇用の動向などについて、定期的に調査を実施しています。
<2023年第3四半期(7~9月期)実績および2023年第4四半期(10~12月期)の見通し>
[調査結果の全体概況]
[各地域の調査結果]
- 【北海道】個人消費が好調で景況感は9年ぶりの高水準となるも、中国の禁輸措置で輸出は低調
- 【岩手】求人抑制の動きがみられるも強い人手不足感は継続
- 【宮城】人手不足業種の求人が減る一方、求職者数は増加傾向に
- 【山形】宿泊・飲食は観光分野で持ち直しが続くが人手不足で受け入れが伸び悩む企業も
- 【福島】400人超を雇用する福島市の工場が閉鎖へ
- 【茨城】正社員の人手不足感が強まり、中途採用を強化する企業も
- 【北陸】能登半島地震で農林水産業は壊滅的な打撃
- 【東海】物価高への対応や人材獲得のために賃上げに意欲をみせる企業も
- 【近畿】大阪・関西万博の経済波及効果を2.7~3.4兆円と試算
- 【中国】原料の高騰や人手不足が生産回復の足かせに
- 【四国】持ち直しの動きが継続して景況感も明るさが続く
- 【九州】自動車関連の生産が伸び悩む見通し
フォーカス
ショルツ氏(SPD)が率いる連立政権は、2021年の発足時に三党連立協定を締結した。その中には、政権期間中(2021年秋~2025年秋)の労働時間制度改革が盛り込まれている。特に「労働時間記録に関する労働時間法の改正」、「モバイルワークにかかる法整備」等が予定されているが、これまでのところ、目立った進展は見られない。そこで、現地の情勢に詳しい有識者に、その最新の状況について解説してもらった。(海外情報担当)
海外労働事情
海外情報を担当する調査員が、欧米・アジアを中心に、労働市場・賃金動向・職業紹介・職業訓練・労使関係など様々な視点から最新事情を紹介します。
- アメリカ①
- 22州が最低賃金を引き上げ ―2024年1月、990万人以上の労働者に影響
- アメリカ②
- 雇用・個人請負分類基準の新規則を発表 ―連邦労働省、6要素で判断
- アメリカ③
- 2023年の労組組織率は横ばい、労働運動は活性化の傾向
- アメリカ④
- 「安全で信頼できるAIの開発と使用」で大統領令 ―労働への弊害軽減策を検討
- ドイツ①
- 法定最低賃金の引上げ率、団体協約賃金を上回る ―IAB分析
- ドイツ②
- 2024年の労働分野における主な法改正
- ドイツ③
- 2023年の男女賃金格差18% ―4年連続で横ばい
- ドイツ④
- 「市民手当」をめぐる議論 ―制裁強化の可能性も
- ドイツ⑤
- ドイツ鉄道運転士組合(GDL)のストライキと公益産業のスト規制
- フランス①
- 2023年の合計特殊出生率が1.68に低下 ―若い世代の出生率低下とその要因
- フランス②
- 出生率の低下と「出産休暇」の創設
- 中国①
- 超高齢化社会に近く突入、介護人材不足とその対策
- 中国②
- 安定を求める中国の大卒者
- 韓国①
- 雇用労働部と女性家族部、女性経済活動白書を創刊
- 韓国②
- 地方自治体主導の外国人季節労働者・地域特化型ビザ制度の導入状況
- 韓国③
- 雇用労働部、延長労働違反の行政解釈を変更
- 韓国④
- 高齢者の所得保全と経済的自立に向けた対策
- ILO①
- 脆弱性が高まる中での労働市場の回復 ―ILO世界の雇用及び社会の見通し2024
- ILO②
- 労働関連死者数は年間約300万人、労災に遭う労働者は3億9500万人 ―ILO労働安全衛生推計
- OECD①
- 高齢者の就労と年金制度の維持 ―OECD報告
- OECD②
- OECD対日経済審査報告2024 ―労働分野に関する政策提言
- インド
- 海外直接投資が2022年以降減少傾向 ―日系進出企業数、拠点数ともに減少
- ベトナム
- 最低賃金を7月に平均6%引き上げ ―国家賃金評議会で合意、2年ぶり改定へ
ちょっと気になるデータ
最近公表された公的統計のなかから、ちょっと気になるデータを統計解析担当の調査員がピックアップし、わかりやすく紹介します。(統計解析担当)
2024年2月26日掲載