世界の労働力の4.7%は移民労働者
―ILO国際労働力移動世界推計第4版
2024年12月、ILO(国際労働機関)は「ILO国際移民労働者世界推計:国際労働力移動4版(ILO Global Estimates on International Migrant Workers:International migrants in the labour force, Fourth edition)」を発表した。本報告書は、2022年を基準年として世界の国際移民の最新推計を提示するとともに、過去の推計(2013年、2017年、2019年基準)との比較も示している。以下で概要を紹介する。
労働力人口における移民の割合はコロナの影響で鈍化
本報告書における「国際移民」とは、出生国とは異なる国に居住する人を指し、難民や亡命希望者も国際移民に含まれる。
2022年時点で、世界の国際移民数は2億8,450万人に上っている。このうち、労働力人口(15歳以上人口のうち、就業者と失業者を合わせた数)は1億6,770万人であり、就業者は1億5,560万人、失業者は1,210万人である。
性別構成は男性が多く、国際移民である労働力人口のうち男性が61.3%、女性が38.7%である。移民女性の労働力参加率は男性よりも低い傾向にあり、移民男性が72.6%であるのに対して47.7%に留まっている。
年齢構成は、壮年層(25歳~54歳)が74.9%と最も高く、次いで准高齢層(55歳~64歳)が12.5%、若年層(15歳~24歳)が9.3%、高齢者層(65歳以上)が3.4%となっている。このように移民の大部分は壮年層に集中しており、この傾向は2013年から続いている。
世界の労働力人口に占める国際移民の割合は、2022年時点で4.7%であった。この割合は長期的に増加傾向にあり、2013年から2017年は年平均3.5%、2017年から2019年は同2.5%のペースで増加していた。しかし、2019年から2022年にかけては年平均1%未満と、増加の勢いが著しく鈍化した(図表1)。この鈍化について、ILOは新型コロナの感染拡大の影響を要因の一つとして挙げている。
図表1:国際移民の総数、労働力人口、就業者数の推移(2013年~2022年) (単位:人)
出所:ILO(2025)
ILOが2020年に実施した調査によると、移民労働者はパンデミック初期に深刻な打撃を受けたことが明らかになっている。多くの労働者が失業や雇用機会の減少に直面しており、移住に伴う高額な費用によるローンの返済が困難になったほか、医療や社会保障へのアクセスにも制限が生じた。それにもかかわらず、移民労働者の多くは依然として海外就労に関心を持っており、パンデミック初期に帰国した者のほとんどが再移住する意向を示していた。
就業先はサービス業、ケア産業に集中
移民労働者を産業別にみると、サービス業の割合が68.4%と最も高く、次いで工業(24.3%)、農業(7.4%)の順になっている。この産業別分布はコロナ禍の前後を比較しても大きな変化がなく安定している。
男女別に見ると、従事する産業に明確な違いがある。女性移民労働者の80.7%がサービス業に従事しているのに対し、男性は60.8%にとどまる。反対に、男性移民労働者の31.7%が工業分野に従事しているのに対し、女性は12.2%にとどまる。特に、女性移民労働者は、ケア産業に関連した分野、すなわち個人世帯や病院、老人ホーム、学校などで、子どもや高齢者、障がい者などに対して身体的・心理的なケアを提供する職業に多く従事している。ILOによると、移住先国では高齢化などの人口動態の変化によって介護や家事労働に対する需要が高まっており、女性移民労働者の主要な就業先となっている。
実際、国際移民全体の18.9%がケア関連職に従事しており、これは非移民(移民以外)の10.9%と比べて高い割合である(図表2)。特に移民女性の割合が28.8%と高く、約3人に1人がケア関連職に就いている。こうした傾向は、女性移民労働者が主にケア産業を中心とした分野で、受け入れ国の労働力不足を補っている実態を示している。
図表2:ケア産業に関連した雇用に従事する移民労働者の割合
出所:ILO(2024)
地理的分布は、アラブ、ヨーロッパに集中
国際移民の労働力人口の移住先を所得水準別にみると、68.4%が高所得国に集中しており、次いで上位中所得国が17.4%、下位中所得国が10.9%、低所得国が3.3%となっている。
また、所得水準ごとの労働力人口に占める移民の割合を比較すると、高所得国では18.0%と際だって高い。これに対し、上位中所得国では2.0%、下位中所得国では1.5%、低所得国では2.1%にとどまっている。2013年から2022年にかけて、この割合が上昇したのは高所得国のみであり、2013年の15.4%から2022年には18.0%に拡大した。他の所得水準ではこの期間、大きな変動は見られなかった。
地域別にみると、国際移民の労働力人口の受け入れ先としては、北・南・西ヨーロッパが最も多く23.3%を占め、次いで北アメリカが22.6%、アラブ諸国が13.5%となっている。この地理的な分布にも2013年から2022年にかけて大きな変化は見られなかったが、北・南・西ヨーロッパではわずかに増加しており、ILOはこれを移民政策の影響と分析している。一方、北アメリカおよびアラブ諸国では受け入れ割合にわずかな減少傾向が見られた。
参考資料
- ILO「4th edition ILO global estimates on international migrants in the labour force
」(2025)
- ILO ”International migrants are vital force in the global labour market
” (16/12/2024)
- ILOウェブサイト
2025年7月 ILOの記事一覧
- 世界の労働力の4.7%は移民労働者 ―ILO国際労働力移動世界推計第4版
- 世界の雇用の4分の1が生成AIに代替される可能性 ―ILO研究ブリーフ
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