【中国】(中国地域創造研究センター)
4~6月期の経済動向は米国の通商政策への懸念から「やや悪化」に転落
地域シンクタンク・モニター定例調査
中国地域では、1~3月期の経済動向は、寒暖差が大きかったことからエアコンの販売が好調となったものの、個人消費全体では力強い持ち直しの動きにはつながらず、モニターである中国地域創造研究センターは【横ばい】とした。4~6月期は、米国の通商政策への懸念もあり、【やや悪化】。雇用動向については、有効求人倍率の動きなどをもとに1~3月期の実績を【やや好転】と判断し、4~6月期の見通しは【横ばい】とした。
<経済動向>
個人消費はエアコンの販売が好調も、力強い持ち直しにつながらず
モニターは、1~3月期の中国地域の経済動向について【横ばい】と判断した。
生産活動は、鉄鋼で1月に自動車や家電向け鋼材の落ち込みが大きかった。集積回路・コンデンサーは需要が2月に伸びたが、3月にはその反動で減少した。化学は1月にフィルムシートがけん引して上昇したが、プラントの定期修理で2月に減少した。
個人消費は、寒暖差が大きかったことからエアコンの販売が好調となったほか、食料品や日用品も価格転嫁や値上げ前の駆け込み需要が売り上げにはプラスの効果となったが、力強い持ち直しの動きにはつながらなかった。
米国関税措置に対して雇用や資金繰りの支援を求める声も
4~6月期の見通しについては、米国のトランプ政権による自動車関税の発動が地域経済に不安を生んでいる。地元自動車メーカーは「関税措置の影響の合理的な算定が難しく、業績見通しは『未定』」としつつも、サプライヤーのレベルでは行政に対して、詳細な情報提供に加えて雇用や資金繰りに支障が出た場合の支援を求める声があがっている。
モニターは「相互関税による影響もあることから、特に製造業がけん引する地域経済では影響が大きいと想定しており、物価高が続く家計・消費者にとっては収支両面での難局が現実化する懸念がある」とコメントし、4~6月期の経済動向を【やや悪化】と判断した。
<雇用動向>
有効求人倍率は全国と比べても高い水準
1~3月期の雇用実績について、モニターは【やや好転】と判断した。
3月の県別の有効求人倍率は岡山県が1.48倍(全国5位)、山口県が1.47倍(同6位)、広島県が1.46倍(同7位)となっているほか、山陰2県も高水準を維持しており、中国地方全体は1.45倍と、全国平均(1.26倍)を大きく上回った。
求人を業種別にみると、観光やビジネス需要の高まりを受けた宿泊・サービス業、それらの新設にともなう建設業、大型店舗の新規出店があった小売業、慢性的な人手不足が続く医療・介護などが活発だった。
人材の争奪合戦に休息感が見えない状況
4~6月期の見通しは【横ばい】としている。
深刻な人手不足を背景として、高校生や大学生の就職活動が売り手市場一辺倒となり、企業側は基本給や賞与のアップ、寮や社員食堂など福利厚生の充実、仕事の疑似体験など様々な工夫を凝らして人材確保を進めている。
また、大型店舗の開業を受けて、都心部では人材獲得競争が激化しており、多店舗展開する事業者では都心部と周辺部での賃金格差に悩み、経営への圧迫も許容水準ギリギリに迫っている。
こうした地域雇用の状況についてモニターは、「当面続くことが予想され、就業側にとっては学生や外国人も含めて待遇・環境が改善されているものの、地域雇用全体にとっては人材の争奪合戦に休息感が見えない」としている。