差別・合理的配慮の提供に関する相談件数は前年度から8割近く増加
 ――厚生労働省「雇用の分野における障害者の差別禁止・合理的配慮の提供義務に係る相談等実績(2024年度)」

国内トピックス

厚生労働省は6月25日、「雇用の分野における障害者の差別禁止・合理的配慮の提供義務に係る相談等実績」を公表した。それによると、2024年度にハローワークに寄せられた障がい者に対する差別および合理的配慮の提供に関する相談は438件で、前年度から8割近く増加した。内訳をみると、障がい者に対する差別に関する相談が98件で、合理的配慮の提供に関する相談が340件。相談のほぼ9割が障がい者本人から寄せられている。合理的配慮の提供に関する相談の内容は、上司・同僚の理解に関することが多い。

障がい者差別に関する相談は前年度から約3倍に増加

障害者雇用促進法はすべての事業主に対して、雇用の分野での障がい者に対する差別(障がい者差別)を禁止し、かつ合理的配慮の提供を義務づけている。公表資料によると、2024年度にハローワークに寄せられた障がい者差別および合理的配慮の提供に関する相談件数は438件だった。

相談件数の推移をみると、2020年度が246件(障がい者差別が69件、合理的配慮の提供が177件)、2021年度が244件(同55件、189件)、2022年度が225件(同37件、188件)、2023年度が245件(同31件、214件)、2024年度が438件(同98件、340件)となっている。相談件数全体では、2020年度から2023年度はおおむね横ばいで推移していたが、2024年度は前年度から78.8%増加しており、障がい者差別に関する相談は約3倍となっている。

事業者による障がいのある人への合理的配慮の提供は、従来は「努力義務」だったが、改正障害者差別解消法が施行されて2024年4月から「義務」となった。2024年度の相談件数が急増したことについて、厚生労働省の担当者は「法改正や内閣府による周知活動が影響した」としている。

9割が障がい者本人からの相談

相談の件数を相談者別にみると、「障がい者」が391件(89.3%)で最も多く、次いで「事業主」が32件(7.3%)、「その他(家族等)」が15件(3.4%)となっており、相談の約9割が障がい者本人から寄せられている。

合理的配慮の相談内容は3割弱が上司・同僚の理解について

相談の内容を詳しくみていくと、障がい者差別に関する相談は「募集・採用時」(28.2%)が最も多く、次いで「配置」および「解雇」(ともに14.6%)、「賃金」および「雇用形態の変更」(ともに8.7%)などとなっている。

一方、合理的配慮の提供に関する相談内容は「上司・同僚の障害理解に関するもの」が27.4%で最も多い。以下、「相談体制の整備、コミュニケーションに関するもの」(15.7%)、「業務内容・業務量に関するもの」(13.2%)、「業務指示・作業手順に関するもの」および「就業場所・職場環境に関するもの」(ともに10.2%)などとなっている。

自主的な解決が難しい場合は調停も

ハローワークは、障がい者差別や合理的配慮の提供に関する法令違反等の事案に対しては、助言、指導または勧告を行い、是正を図っている。2024年度にハローワークが行った助言件数は13件で、内訳は障がい者差別が2件、合理的配慮の提供が11件。指導の件数は1件で、内訳は障がい者差別が0件、合理的配慮の提供が1件。

事業主と障がい者の間での話し合いによる自主的な解決が難しい場合は、関係当事者の申し立てに基づき、①都道府県労働局長による紛争解決の援助②障害者雇用調停会議による調停、のいずれかを実施することで紛争の早期解決が図られている。

労働局長による紛争解決の援助については、2024年度の援助申立受理件数は2件(障がい者差別が0件、合理的配慮の提供が2件)だった。障害者雇用調停会議による調停については、2024年度の調停申請受理件数は11件(障がい者差別が5件、合理的配慮の提供が6件)だった。2024年度中に申請を受理し、調停を開始した8件のうち2件については、当事者双方が調停案を受諾している。

(調査部)

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