ベトナム労働法の現状
第3回「労使関係、その他」
 ―労働者代表組織、女性保護、セクハラ、外国人労働等

本フォーカスの記事一覧をみる

上東 亘 (渥美坂井法律事務所・外国法共同事業 パートナー)

1. 労働者代表組織

(1)従前の労働組合と新しい労働者の組織の関係

旧法では、労働者に対して、労働組合法(第12/2012/QH13号)に従って、ベトナム労働総同盟(VGCL)の下部組織としての事業所における労働組合を設置することが認められていた。

改正法では、この労働組合とは別にベトナム労働総同盟に属しない「企業における労働者組織」の自主的な設置が認められることになり、企業内に複数の基礎レベル労働者代表組織が併存しうることになった(改正法第170条第2項)。これは、ベトナムの環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)への参加により労働者の団結権が認められ、労働総同盟傘下以外の労働者団体の設⽴、すなわち複数労働組合制が認められるようになったことに対応するものである。

改正法では、事業場における労働組合と企業における労働者組織の両者を合わせて、「基礎レベル労働者代表組織」と定義している(改正法第3条第3項)。

(2)定期的対話

旧法下において使用者は、3か月ごとに一度、労働者と対話を実施する機会を設けなければならなかったが、改正法は、この頻度を年一度で足りるとした(改正法第63条第2項第a号)。

2. 団体交渉

(1)労働者の代表

事業場における労働組合も、企業における労働者組織も労働者を代表する権利及び義務において平等であり(改正法第170条第3項)、企業内で最多の構成員数を有する組織が団体交渉等において主導権を握ることになる。

(2)期間

旧法では団体交渉の期間について特段の規定はなかった。これに対して、改正法では原則として交渉開始から90日間で交渉を終えるものとしている(改正法第70条第2項)。もっとも、この期間中に何らかの合意に達する必要はなく、90日以内に両当事者間で合意に至らなかった場合には、団体交渉は不調となる。この場合、労働調停人による調停手続が行われ、それでも解決しなければ、労働仲裁評議会による仲裁又はストライキの実施に至ることになる(改正法第195条第2項)。

(3)情報提供義務

改正法上、使用者には、団体交渉の過程において、営業上及び技術上の秘密にかかる情報以外の、企業の生産及び経営活動の状況その他の交渉の内容に直接関連する情報を提供する義務がある(改正法第70条第3項)。

3. ストライキ

(1)適法・違法なストライキ

改正法では、ストライキが違法とみなされる要件がより詳細になり、その範囲が広がった。具体的には、次の場合に違法なストライキとみなされる(改正法第204条)。

  • ① 次に定めるストライキに該当しない場合
    • ①-1 調停不成立、又は調停人が当事者もしくは法令に定める機関の要求を受けた日から5営業日以内に、調停を実施しない場合
    • ①-2 労働仲裁委員会が設立されない、設立されたが争議解決決定を出さない、又は使用者である争議当事者が労働仲裁委員会の争議解決決定を実施しない場合
  • ② ストライキを組織、指導する権利を有する労働代表組織によらない場合
  • ③ 改正法が定めるストライキの実施手順及び手続の各規定に違反する場合
  • ④ 権限を有する機関、組織又は個人が、本法律の規定に従い団体労働争議の解決実施を継続中である場合
  • ⑤ 改正法が定めるストライキの実施が禁止されている職場(国防、人の健康の脅威になりうる職場など。(改正法第209条))において実施された場合
  • ⑥ 省級の人民委員会委員長によってストライキの延期又は停止決定が出された場合(改正法第210条)

適法なストライキの実施のため、労働者代表組織はストライキに関する意見聴取をする必要がある(改正法第201条)。また、ストライキに関する意見聴取の内容に同意する労働者の比率は、50%以上でなければならない(改正法第202条第1項)。さらに、労働者代表組織がストライキ決定書を発布し、ストライキの5営業日前に、ストライキ決定書を使用者、県級の人民委員会及び省級の人民委員会に提出するとされている(改正法第202条第3項)。

(2)人民委員会への申立

旧法では、省級の人民委員会の委員長が、裁判所の決定を待たずに手続違反の決定書を出す権限があり、県級の人民委員会の委員長に報告することとなっていた(旧法第222条)。しかし、改正法では、この制度は改廃され、手続に違反したストライキに関する報告を県級の人民委員会の委員長が受けた場合、12時間以内に関係各機関と協力して使用者と基礎レベル労働者代表組織の幹部会の代表者との直接の面談を主催することになっている(改正法第211条)。この面談は、労使間の和解ための調停の場となっている。

4. 女性労働者の保護

(1)女性労働者の休憩

旧法下の政令第85/2015/NĐ-CP号(以下、「政令第85号」という。)では、女性労働者は、生理期間中は1日30分かつ1か月に少なくとも3日、12か月未満の子の養育期間中は1日に60分の有給休暇(休憩)を取得する権利を有し、当該休暇の具体的な時間は使用者と労働者との間の合意によるとされていた(政令第85号第7条第2項)。各企業はこの規定の対応に苦慮していたとされ、特に工場では、当該規定を遵守するための労務管理と生産ラインの維持の両立が困難という声があった。

改正法第137条第4項及び政令第145号は、旧法下の政令第85号の規定する休憩時間については変更がないものの、女性労働者が具体的な特定の日時を使用者に通知することでこの休憩を取得できるよう改正された(政令第145号第80条第3項第a号)。これにより、労働者が自主的に休憩取得を決定できるようになったため、より取得しやすくなったとも考えられる。

また、女性労働者が所定の休憩をとる必要がなく、かつ、当該休憩なしに働くことに関して使用者が同意した場合、使用者は当該女性労働者に、その働いた時間に対する通常の賃金に加えて、当該休憩を取得できたはずの時間分の賃金も支払われなければならない(政令第145号第80条第3項第c号)。もっとも、当該時間は、当該女性労働者の時間外労働時間には含まれないこと(つまり、割増賃金は支払う必要がないこと)を規定している。

政令第145号には、休憩の申請手続及び使用者の同意取得方法については規定がないため、具体的なことは社内規程で定めることになる。

(2)重労働等に従事している妊婦への配慮措置

重労働などに従事している妊娠中の女性労働者は、より軽易で安全な業務に異動させるか、1日の労働時間を短縮する必要がある。旧法下では、このような配慮措置の対象は、妊娠7か月以降の女性労働者に限定されていたが(旧法第155条第2項)、改正法では、妊娠していることを使用者に報告すれば、妊娠月齢を問わず、配慮措置を受けることができる(改正法第137条第2項)。

また、配慮措置の期限について、旧法下では妊娠7か月以降、産休に入る時までとされ、産休終了後に復職した場合は、元の重労働に戻ることが想定されていた(旧法第158条)。これに対し、改正法では、復職後も12か月未満の子を養育する期間は同様の配慮措置が受けられることとなっている(改正法第137条第2項条)。

(3)有害業務への従事

労働・傷病兵・社会問題省により、生殖能力や子の養育に悪影響を与える職及び業務の一覧が公表されている。旧法では、女性労働者は、これらの業務に従事することが禁止されていた(旧法第160条第1項)。

改正法では、女性労働者の労働機会を拡大するため、有害業務は全面禁止ではなく、女性労働者自身がこれに従事するか否かを選択できることになっている。ただし、使用者は、女性労働者がきちんとした選択ができるよう、業務の危険な性質、リスク、業務において要求される事項についての十分な情報を提供しなければならず、労働者の労働安全衛生に関する条件を確保しなければならない(改正法第142条第2項)。

(4)ジェンダー平等と罰則

労働法の他、ジェンダー平等法(法第73/2006/QH11号)が労働分野におけるジェンダー平等の確保の原則を定め、職場における男女の平等を確保することを使用者に義務付けている。ジェンダー平等法、労働分野等の行政違反処罰に関する政令第12/2022/NĐ-CP号、及びジェンダー平等の分野における行政違反処罰に関する政令第125/2021/NĐ-CP号では、性差別や女性労働者の権利に関して違反行為をした使用者に対する過料を規定している。

5. セクシャルハラスメント

(1)定義

職場におけるセクシャルハラスメント(以下、「セクハラ」という。)は、旧法においても禁止⾏為と位置付けられ、セクハラを受けた労働者は、労働契約を⼀⽅的に解除できるとされていた(旧法第37条第1項第c号)。改正法においても、セクハラは引き続き厳禁⾏為とされており(改正法第8条)、労働者による一方的解除事由である(改正法第35条第2項第d号)。これに加え、セクハラをしたことが懲戒解雇事由としても追加され(改正法第125条第2項)、使用者に対してはセクハラの予防策及び対応策を策定、実施することを新たに義務付けている(改正法第6条第2項第d号)。

改正法では、セクハラについて「職場において、ある者の他の者に対する、本⼈の意に反する⼜は同意のない、性的な性質を有する⾔動」と定義され(第3条第9号)、政令第145号第84条でセクハラの定義が補⾜されている。これによると、「仕事に関する利益を得るために性的関係を提案、要求、⽰唆、脅迫、強制する等の取引の形式で、⼜はその仕事に関する利益との取引を意図したものでなくとも、職場環境を不快で不安にさせ、被害者の⾝体、精神、労働効率、及び⽣活に損害を与える性的性質を有する⾏為」とされ、仕事に関する利益との取引関連性の有無にかかわらず、

  • ① 性的接触等の⾝体的⾏為
  • ② 直接的な発⾔や電話その他による発⾔を含む⾔語的⾏為
  • ③ ボディーランゲージや性的画像を⾒せるなどの⾮⾔語的⾏為

のいずれかを含むこととされている。

また、規制対象は「職場」におけるセクハラであるところ、この「職場」とは、合意⼜は使⽤者の指⽰に基づき、労働者が実際に労働に従事する場所(改正法第3条第9号)にとどまらず、社会活動、セミナー、研修、正式な出張、⾷事、電話での会話、電⼦通信のコミュニケーション、住居から職場への乗物などの仕事関連の空間⼜は場所、及び会社によって提供される住居、指定されるその他の場所を含むものであると明確化されている(政令第145号第84条第3項)。

(2)予防・対応策

使⽤者が取るべきセクハラの予防・対応策は、次のような基本的内容を含む必要がある(政令第145号第85条第1項)。

  • ① 職場におけるセクハラ⾏為は厳禁とすること
  • ② 業務と職場の性質と特徴に適した、職場におけるセクハラ⾏為を詳しく、具体的に規定すること
  • ③ 不服申⽴、告訴、及び告発とそれらの解決の責任、期限、⼿順、⼿続及び関連するその他の規定を含む、職場におけるセクハラ⾏為についての内部処分の責任、期限、⼿順、及び手続
  • ④ セクハラ⾏為を⾏った者⼜は虚偽の告訴及び告発をした者に対する、違反⾏為の性質と程度に応じた労働規律処分の形式
  • ⑤ 被害者への損害賠償と是正措置

就業規則には、上記の使⽤者が取るべきセクハラの予防・対応策に関する内容をすべて含む必要があるが、就業規則に直接規定するのではなく、就業規則の別紙として作成することも可能とされている(政令第145号第85条第1項)。すなわち、改正法の施行後、新規に設立する企業が新たに就業規則を発行する場合、そこに必ずセクハラに関する内容を含む必要がある(改正法第118条第2項)。他方、改正法施行前に就業規則を有していた企業が新たな就業規則を発行する必要はないものの、改正法に新たに規定されたセクハラに関する内容を既存の就業規則に反映しなければならない。この反映の方法として、就業規則の別紙で補足することは可能という趣旨である。

セクハラの不服申⽴、告訴、告発及び処分に関しては迅速にかつ遅滞なく⾏うこと、並びに使用者によって被害者、不服申⽴者、及び告発者の秘密、名誉、威信、⼈格、及び安全が守られること、という原則が遵守されなければならないとされている(政令第145号第85条第2項第b号及び同第86条第1項第c号)。

なお、政令第145号では、労働者や労働者代表組織に対しても、セクハラ防⽌に努めること、及びセクハラのない労働環境づくりに協⼒すること等の義務を課している(政令第145号第86条第2項及び第3項)。

6. 外国人労働者

(1)労働許可証の延長

旧法では、労働許可証の期間は2年を上限とし(旧法第173条)、期間が満了した場合には、再発給を申請する形で事実上更新を⾏っていた。

改正法では、労働許可証の期間は旧法と同様に2年を上限としつつ、2年を上限に1回に限りその延⻑が可能であることが明記された(改正法第155条)。実務では、労働許可証の期間は2年で、延⻑⼿続は1回認められ、その後は再度新規での取得⼿続をとるという運用になっている。

なお、外国人労働者との有期労働契約は、更新が1回に制限されておらず、労働許可証の2年単位の期間と平仄を合わせた更新が可能である(改正法第20条第2項第c号、及び同第151条第2項。有期労働契約と無期転換については連載第1回「2. 労働契約」を参照)。また、労働許可証の失効は労働契約の終了事由とされている(労働契約の終了事由については連載第2回「3. 労働契約の終了」を参照)。

ベトナムで就労する外国⼈労働者及びベトナムで外国組織等のために就労するベトナム⼈労働者の規制について定めた政令(政令第152/2020/NÐ-CP号。以下、「政令第152号」という。)第16条第1項によると、労働許可証の延長申請手続は、労働許可証の残存有効期間が5日以上45日以下であることが求められており、この期間中に申請ができないと再度新規発行申請しなければならないおそれがあるため注意を要する。

(2)労働許可証の取得要件

ベトナムにおいて使用者が外国⼈労働者を雇⽤できるのは、①管理者・監督者、②専門家、又は③技術者のいずれかに該当し、ベトナム⼈では代替できない場合に限られている。これは、旧法下も同様であった。政令第152号は、これらのうち専門家と技術者について旧法下で定められていた満たすべき要件を実質的に変更した。以下、順に説明する。

① 管理者・監督者

まず、管理者及び監督者については定義の変更はない。労働許可証の申請に必要な提出書類も、管理者又は監督者であることを証明する書類が必要とされている点で変更はない(政令第152号第3条第4項及び同第9条第4項)。なお、管理者の定義が引⽤している企業法第4条第24項は、会社の会⻑、社員総会や取締役会の構成員、社⻑などを企業法上の「管理者」として定義している。

② 専門家

旧法の下の政令(政令第11/2016/NÐ-CP号及び政令第140/2018/NÐ-CP号。以下、「旧政令」)では、専門家は、

(ア)当該外国⼈労働者が専門家であることを外国企業等が確認した証明書を有する者、⼜は
(イ)ベトナムで就労する職種にかかる専門分野において、⼤学かそれ以上を卒業し、かつ3年以上の実務経験を有する者

とされていた。

上記(ア)の要件については、基本的に、当該駐在員が所定の分野の専門家である旨を⽇本の親会社等が証明すればこれを満たすことができたため、実務上は、(ア)の要件に基づいて専門家として労働許可証を取得するケースが多かった。他⽅で、上記(イ)の要件については、日本で⼤学を卒業したものの、ベトナムで就労する職種の専門分野の学部を卒業していないケースでよく問題になっていた。

改正法下の政令第152号第3条第3項では、上記下線部(ア)の要件が変更され、「ベトナムで就労する職種で5年以上の実務経験を有し、資格認定証を有する者」は専門家に該当すると置き換えられている。「資格認定証」とは、⼠業の免許など特定の職業での活動を認められた証明書を意味する。旧政令の要件(イ)は変更が無く、就労する職種の専門分野と卒業学部の関連についても従前と同様である。これを踏まえ、引き続き、学歴と業務の関連性及び整合性に注意して申請することになる。

③ 技術者

旧政令では、技術者は、(ア)当該外国⼈が従事する技術分野で1年以上の技術訓練を受け、かつ当該分野で3年以上の実務経験がある者と定めていた。政令第152号第3条第6項では、この(ア)に該当する場合に加えて、(イ)当該技術分野で5年以上の実務経験を有する者も追加された。

(3)労働許可証の取得の免除要件

労働許可証の免除要件としては様々なものがあるが(改正法第154条)、ここではその中でも特に旧法及び旧政令下で積極的に活⽤されてきた事由及び改正点を中心に説明する。

なお、労働許可証の取得を免除される場合であっても、労働許可証の申請を要しない旨の書面を提出して、取得免除対象であることの確認手続をとらなければならない場合があることに注意を要する(政令第152号第8条)。

① 専門家等の短期就労

旧政令では、ベトナムで管理職、専門家、又は技術者として就労する場合、その期間が30⽇未満、かつ1年間に合計で90⽇以内であれば、労働許可証は免除された。

政令第152号では、この要件が⼀部変更され、その期間が30⽇未満、かつ1年間に3回以内であれば、労働許可証は免除されるとしている(政令第152号第7条第8項)。この場合は、免除対象確認手続は不要とされている(政令第152号第8条第2項)。

② ベトナムで設⽴された有限責任会社の(個⼈)出資者・株式会社の取締役

旧政令では、会社の資本⾦の⾦額にかかわらず、ベトナムで設⽴された有限責任会社の個⼈出資者及びベトナムで設⽴された株式会社の取締役は労働許可証の免除対象とされていた。

改正法第154条第1項及び同第2項では、ベトナムの有限責任会社の出資者及び株式会社の取締役などであって、別途政府が定める⾦額以上の資本⾦の出資をしている者が免除対象とされている。これを受けた政令第152号第7条第1項及び同第2項では、その具体的な⾦額は30億ベトナムドン以上と定められた。当該金額は出資者一人ずつが保有すべき資本金の額であり、企業の資本金の総額ではないことに注意を要する。この場合は、免除対象確認手続は不要とされている(政令第152号第8条第2項)。

③ 拠点設⽴の責任者

旧政令では、ベトナムにおける商業拠点(現地法⼈や駐在員事務所など)の設⽴の責任者は、免除対象者とされていなかった。政令第152号第7条第13項では、かかる責任者は、労働許可証の免除対象となっている。

④ 社内異動

WTOコミットメントで規定される11のサービス分野(経営、情報・通信、建設、流通、教育、環境、⾦融、医療、観光、⽂化・娯楽、運輸)を取り扱う会社で、連続で12か⽉以上勤務後に社内異動する者は、旧政令から引き続き免除対象である(政令第152号第7条第3項)。

旧政令では、異動元での雇⽤期間が12か⽉以上あることが要件とされていたが、政令152号第3条第1項ではこの12か⽉の勤務期間は、一社で連続していなければならないことが明確化されている。そのため、異動直前の12か⽉の間に、同一企業グループ内であっても、別会社に勤務していたような場合は、注意を要する。

⑤ ベトナム人配偶者を有し、ベトナムで生活する者

「ベトナム人配偶者を有し、ベトナムで生活する者」も免除対象者に加えられている(改正法第154条第8項)。この場合は、免除対象確認手続は不要とされている(政令第152号第8条第2項)。

(4)外国人労働者の雇用予定の報告

政令第152号第4条第1項に従い、使用者は、ベトナム人労働者では代替できない業務に外国人労働者を雇用する場合、その予定人数を確認し、外国人労働者の採用予定日から少なくとも30日前までに、労働・傷病兵・社会問題省又は外国人労働者が就労する省級の人民委員会に対して、同政令付録1のフォーム01/PLIに従った報告書を提出する必要がある。また、この外国人労働者の雇用予定を変更したい場合、採用予定日から少なくとも30日前までに、当該省級人民委員会又は労働・傷病兵・社会問題省に、同政令付録1のフォーム02/PLIに従い報告しなければならない。

(5)外国人労働者使用の定期報告義務

政令第152号第6条では、外国人労働者を雇用する使用者は、外国人労働者の雇用状況について毎年7月5日までに半期報告を、翌年1月5日までに年次報告を省級の労働傷病兵社会問題局に提出することが義務づけられている。この報告義務は、旧政令でも定められていたが、政令第152号では報告期限が明確になっている点に注意を要する。

プロフィール

写真:上東 亘氏

上東 亘(かみひがし わたる)

渥美坂井法律事務所・外国法共同事業 パートナー
Asia Pacific International Law Firm(APAC)ハノイオフィス出向等を通じて、合計4年間程度ベトナムに駐在。その他、ILOベトナム国別事務所External Collaborator、労働政策研究・研修機構 ベトナム労働情報研究会委員など就任。主な著作として、「ILOによるベトナム労働法・労働組合法に関連する技術協力の概要―2013年から2015年にかけての14の政令制定に対する支援の評価―」自由と正義 Vol.67 No.12(2016)、「JILPT海外労働情報19-03 ベトナムの労働を取り巻く現状」(労働政策研究・研修機構、2019)<共著>など。

フォーカス:ベトナム労働法の現状

関連情報