【東海】(OKB総研)
経営者協会の調べでは、春闘の平均賃上げ額が過去最高を記録

地域シンクタンク・モニター定例調査

1~3月期の東海地域の経済は、個人消費と生産活動のいずれも一部に弱い動きがあるが、全体では緩やかに持ち直しており、モニターであるOKB総研は【横ばい】と判断した。4~6月期の見通しは、生産活動が低下しているほか、輸出も半年ぶりに減少に転じており【やや悪化】とした。雇用動向の1~3月期実績は、有効求人倍率と新規求人数の動きをもとに【横ばい】。4~6月期見通しも人手不足感が緩和してはいるものの【横ばい】と判断している。愛知県経営者協会によると、2025年春闘における県内企業の平均賃上げ額は1万4,259円で、記録が確認できる1985年以降で最高となった。平均賃上げ率は4.72%。

<経済動向>

生産は一部に弱い動きもみられたが、持ち直す

1~3月期の経済動向からみると、生産は一部に弱い動きもみられたが、緩やかに持ち直した。当期の鉱工業生産指数は前期比プラス1.6%で、2期連続で前期を上回った。主な業種では、生産用機械工業、電子部品・デバイス工業、輸送機械工業は前期比プラスだったが、汎用機械工業、業務用機械工業、電気機械工業は前期を下回った。

東海財務局「法人企業統計調査」によれば、東海4県(静岡県含む)の当期の設備投資額は前年同期比マイナス1.6%で、9四半期ぶりに前年同期を下回った。業種別にみても、製造業、非製造業ともに前年同期を下回っている。日銀短観(3月調査)での2025年度の設備投資額(計画)をみると、製造業・非製造業ともに減少の見込みとなっている。

個人消費は一部に弱い動きがみられ、百貨店は落ち込む

個人消費は緩やかに持ち直しているが、一部に弱い動きがみられる。中部経済産業局管内5県(愛知県、岐阜県、三重県、富山県、石川県)の当期の販売額をみると、百貨店(前年同期比マイナス1.6%)が落ち込んだものの、ドラッグストア(同プラス5.7%)、家電大型専門店(同プラス5.1%)、スーパーマーケット(同プラス3.5%)、コンビニエンスストア(同プラス1.6%)、ホームセンター(同プラス0.2%)は前年同期を上回った。

輸出をみると、名古屋税関管内の輸出通関額は1月が前年同月比プラス2.6%、2月が同プラス12.7%、3月が同プラス1.4%と推移した。

モニターは「設備投資に対する慎重な姿勢が見受けられ、個人消費や生産は一部に弱い動きもみられたものの持ち直しており、景気は総じて持ち直したものの、緩やかな動きにとどまっている」として、1~3月期の地域経済を【横ばい】と判断した。

4~6月期はドラッグストアや家電などの販売額が前年同月比増

4~6月期について、個人消費をみると、大型小売店販売額(4月)の前年同月比は、百貨店とホームセンターがマイナスとなったものの、ドラッグストア、家電大型専門店、スーパーマーケット、コンビニエンスストアはプラスとなった。

東海財務局「法人企業景気予測調査」では、景況判断BSIはマイナス6.6で、6期連続の「下降」超となっている。企業規模別では大企業(マイナス2.4)、中堅企業(マイナス5.1)、中小企業(マイナス10.0)のいずれも「下降」超となっている。業種別にみても、製造業(マイナス13.1)、非製造業(マイナス2.1)ともに「下降」超となった。

景況指数は景気水準・生産活動ともに悪化、輸出は6カ月ぶりに減少

モニター作成の「OKB景況指数(6月期)」をみると、景気水準はマイナス12.7で前期から4.0ポイント悪化している。悪化は5期連続。

「OKB景況指数」の生産活動はマイナス4.9で、前期から2.8ポイント低下している。低下は2期連続。

4月の鉱工業生産指数は102.3で前月比5.5%低下した。低下は2カ月ぶり。主要業種は生産用機械工業を除いていずれも低下している。

輸出をみると、名古屋税関管内の輸出通関額は5月が前年同月比マイナス1.4%となっている。減少は6カ月ぶり。

こうした動きをもとにモニターは、4~6月期の見通しを【やや悪化】と判断した。

<雇用動向>

雇用情勢の持ち直すペースは緩やか

雇用の実績(1~3月期)について、有効求人倍率をみると当期は1.25倍で、前期(1.25倍)から横ばい。新規求人数は1月が前年同月比マイナス3.0%、2月が同マイナス4.5%、3月が同マイナス5.7%と推移している。

モニターはこれらの動きをふまえつつ、「企業の人手不足感は依然として続いているものの、雇用情勢は持ち直しの動きがみられた。ただし、そのペースは緩やか」として判断を【横ばい】とした。

人手不足感は3月末に比べれば緩和

「法人企業景気予測調査」によると、6月末時点の従業員数判断BSIは28.9の「不足気味」超で、3月末(35.5)から「不足気味」超の幅が縮小した。規模別、業種別のいずれも「不足気味」超となっている。

モニター作成の「OKB景況指数(6月期)」をみても、雇用は60.5の「不足」超の状況で、前期(70.5)から「不足」超の幅が縮小した。

有効求人倍率は4月が1.26倍(前月比変化なし)で、横ばいでの推移が続いている。

モニターはこうした動きをふまえて、4~6月期の見通しについても【横ばい】と判断した。

来春入社の大卒採用予定人数は今春実績比で1割増の見込み

愛知県経営者協会「2025年春闘の最終集計結果」によると、愛知県内の企業の平均賃上げ額は1万4,259円となり、記録が確認できる1985年以降で最高となった。平均賃上げ率は4.72%だった。

帝国データバンク名古屋支店による、東海4県の企業を対象にした2025年度採用意識調査の結果によると、「正社員の採用予定がある」と回答した企業は前年度比3.1ポイント減の58.6%で、3年連続で低下した。6割を下回るのは4年ぶり。モニターはこの結果について、「引き続き人手不足は深刻化しているものの、人件費の増加などで採用に踏み切れない企業が少なくない様子がうかがえる」としている。

日本経済新聞社と日経リサーチがまとめた2026年春入社の採用計画調査によると、中部地域の企業の大卒採用予定人数は2025年春実績比で10%増となる見込みで、特に理系学生の採用意欲が旺盛となっている。中部地域に集積する製造業を中心に、理系人材の争奪戦が激しくなっている一方、中部圏の大学の理工学部定員数が首都圏や関西圏より低いこともあり、人口流出で中部県外へ進学する若者が多いという指摘もあるという。