ビジネス・レーバー・トレンド2024年8・9月号
毎月25日更新
カスタマーハラスメントをなくす ――企業・業界・労組の取り組みを中心に
顧客や取引先からの働く者に対する行き過ぎた暴言や暴力などの「カスタマーハラスメント」の防止・撲滅に向け、各界の取り組みの動きが活発化してきた。厚生労働省は2022年に「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を作成。それに伴い、業界や企業による基本方針策定の動きが急速に進みつつある。労働組合でも、実態把握、啓発活動や政策要請に精力的に取り組む組織がみられる。本号では、主な企業のプレスリリースの内容、業界団体として取り組みの歴史が長い日本菓子BB協会への取材や、過去3回実態調査を行っているUAゼンセンからの報告など、カスハラ撲滅に向けた各界の取り組みを紹介する。
目次
企業の取り組み
業界団体の取り組み
- 【取材】協会内方針やガイドラインで過剰で不当な要求への適切な対応方針を明示し、対応で苦慮する担当者を後押し ――日本菓子BB協会のカスハラ対策に向けた取り組み
- 定義や行為を明示することで、業界一体となってカスハラに対峙 ――日本民営鉄道協会のカスハラ基本方針と最近の駅員などへの暴力行為の状況
- カスハラの内容のトップは「暴言」。「客観的な判断指標の持ち方」が取り組みの課題 ――空港グランドハンドリング協会がカスタマーハラスメント対策調査結果を公表
労働組合の取り組み
- 迷惑行為の被害にあった人の割合は46.8%に低下したものの、勤務先の4割で対策が見えず ――UAゼンセンが3回目となるカスタマーハラスメント対策アンケート調査の結果を公表
- 過去3年間で4割以上が迷惑行為、4人に1人がカスハラの被害にあう ――UAゼンセンとヘルスケア労協が医療・介護現場のカスハラに関する初の共同調査を実施
政府の関連調査
- 「顧客等からの著しい迷惑行為」の該当事例があった企業は8割超で、「パワハラ」「セクハラ」で事例があった割合を上回る ――厚生労働省の2023年度「職場のハラスメントに関する実態調査」
- ハラスメントを受けたと感じたことがある職員で相談した人は35.8%にとどまる ――人事院「各府省におけるハラスメント相談に関する職員アンケート調査結果」
女性活躍に向けた最新の政策動向
- 男女賃金格差の是正や開示企業の拡大検討を。人材育成を軸に働く女性を支援 ――政府の「女性版骨太の方針2024」
- 男女間賃金格差が大きい金融業などの5産業に対し、2024年中でのアクションプランの策定の着手を要請 ――政府の「女性の職業生活における活躍推進プロジェクトチーム」が中間とりまとめを公表
- 健康課題に関する調査分析を報告。20~39歳の女性では3割弱が女性特有の健康課題に対する職場の配慮として「生理休暇を取得しやすい環境の整備」を要望 ――2023年版「男女共同参画白書」
- 100人~299人規模の企業でも一般事業主行動計画を作成した割合が7割以上に ――厚生労働省が女性活躍推進法の浸透状況に関する調査結果を公表
スペシャルトピック
注目度の高い国内のトピックスを、より詳しく紹介します。
国内トピックス
行政、企業、労働組合などの最新動向を、政策課題担当の調査員がわかりやすく紹介します。
- 3年前に比べ組合員数が減少した組合が半数超 ――厚生労働省の2023年「労働組合活動等に関する実態調査」
- 2022年の平均世帯所得は524万円で前年から3.9%減少 ――厚生労働省の2023年「国民生活基礎調査」
地域シンクタンク・モニター定例調査
各地域のシンクタンクのモニターに、地域経済や地域雇用の動向などについて、定期的に調査を実施しています。
<2024年第1四半期(1~3月期)実績および第2四半期(4~6月期)の見通し>
[調査結果の全体概況]
[各地域の調査結果]
- 【北海道】(北海道二十一世紀総合研究所)幅広い業種で業況判断が後退も、個人消費は緩やかに持ち直し
- 【岩手】(いわぎんリサーチ&コンサルティング)生産活動が一進一退の動き、依然として強い人手不足感
- 【宮城】(七十七リサーチ&コンサルティング)非製造業で特に見られる人手不足。しかし賃金上昇圧力から新規求人は弱含み
- 【山形】(山形銀行やまぎん情報開発研究所)有効求人倍率が全国平均を上回るものの低下傾向。ただ、相変わらずの人手不足感。
- 【福島】(とうほう地域総合研究所)新設住宅着工や新車登録の前年同期比減が続く。県内企業のベア実施予定は4割近くにのぼる
- 【茨城】(常陽産業研究所)今期に続き、来期も供給制約や消費マインドの低下が下押し材料か
- 【北陸】(北陸経済研究所)震災の復興需要や北陸新幹線の延伸が需要面でプラス材料に
- 【東海】(OKB総研)物価高や認証不正の影響で景気回復に一服感。中小では若干の賃上げにとどまっているとの見方
- 【近畿】(アジア太平洋研究所)好不調の景気指標が混在。中小の7割強が賃上げを実施予定
- 【中国】(中国地域創造研究センター)懸念されるゼロゼロ融資の返済による中小企業の「息切れ倒産リスク」
- 【四国】(四国経済連合会)経営者の景況感も明るさが増す。ベースアップを実施する企業割合は約8割に
- 【九州】(九州経済調査協会)自動車の生産停止が響くも輸出は上昇、消費は物価高が響く
地域シンクタンク・モニター特別調査
2024年春闘では、大手企業を中心に高水準の賃上げが相次ぎ、5%を超える賃上げ率を達成した。賃上げの波は地域や地場企業にも波及しているのだろうか。地域シンクタンク・モニターには特別テーマとして、「地域企業における大幅な賃上げ事例」についても報告してもらった。
フォーカス
2023年から2024年にかけて、ドイツでは労働争議が目に見えて激化しており、労働組合がより対立的な姿勢を見せている。そこで、これらの要因を探るため、現地の情勢に詳しい有識者に、賃金の引き上げや労働時間の削減をめぐる要請などの背景も含めて、最新の労使関係の状況について解説してもらった。(海外情報担当)
海外労働事情
海外情報を担当する調査員が、欧米・アジアを中心に、労働市場・賃金動向・職業紹介・職業訓練・労使関係など様々な視点から最新事情を紹介します。
- アメリカ①
- 首都やカリフォルニア州主要都市などで最賃引き上げ ―物価上昇に連動、7月から適用
- アメリカ②
- 残業代支給対象拡大の新規則施行 ―ホワイトカラー・エグゼンプション俸給要件引き上げ
- アメリカ③
- 「つながらない権利」に関する法案提出 ―カリフォルニア州議会
- フランス①
- 病気休暇中の有休取得権に関する新しいルール
- フランス②
- 雇用労働者の37%が「病気休暇」などで欠勤 ―フルタイム換算で1人年間平均22.3日
- 中国①
- 労働保障、「軽微な違法行為」の処罰免除
- 中国②
- 北京市朝陽区、「人材サービス企業」の誘致策を発表
- 韓国①
- 第二次団塊世代の定年が経済成長に与える影響を分析 ―韓国銀行レポート
- 韓国②
- 2025年の最低賃金は時給1万30ウォン ―1.7%増で初の1万ウォン超え
- 台湾
- 労働力不足の改善と雇用拡大、就業・訓練の奨励
- ILO①
- 112回ILO総会を開催 ―「労働環境における生物学的リスク」や「ケア労働」をテーマに議論
- ILO②
- 途上国や女性の「労働力の未活用」解消を ―ILO世界の雇用及び社会の見通し(5月版)
- ILO③
- 「児童労働反対世界デー」で撲滅を訴え ―第182条条約採択から25周年
ちょっと気になるデータ
最近公表された公的統計のなかから、ちょっと気になるデータを統計解析担当の調査員がピックアップし、わかりやすく紹介します。(統計解析担当)
2024年7月25日掲載