労働力不足の改善と雇用拡大、就業・訓練の奨励
コロナ禍の影響などで生じた人手不足を補うために、台湾労働部は、2023年5月1日から「パンデミック後の人手不足改善および雇用拡大プラグラム」(以下:「プラグラム」)を開始した。失業者が人手不足の職種に従事することを奨励し、一人につき最高月額1万3,000台湾ドルの就業奨励金を提供する。プラグラムは当初2024年6月30日まで実施する予定だったが、宿泊業および飲食業における人手不足が依然として続いていること、および夏休みの旅行シーズンが到来することを考慮し、宿泊業および飲食業に対する実施期限を2024年12月31日まで延長することとした。
プラグラムの内容
このプラグラムは所管省庁等(中央目的事業主務機関)と労働部が協力し、労働力不足の産業と職種の範囲を確認し、適切な給与基準を設定し、労働者に対して就業奨励金と職業訓練参加奨励金を提供する。また、所管省庁等の産業支援リソースを活用して、企業が労働環境、労働条件、給与福利を改善し、労働者の採用と定着を促進する。
プラグラムの内容と推進のプロセスは以下の通りである。
現在、このプラグラムは観光宿泊業の客室清掃員を含むサービス業、飲食業の店内外のサービススタッフ、そして空港の地上支援業務や航空機清掃員を対象としている。職業別の賃金の基準は、宿泊業における客室清掃などを含む客室係の職務について、台湾北部地域(台北市、新北市、基隆市、桃園市、新竹市、新竹県)では月額3万台湾ドルとし、その他の地域では月額2万8,000台湾ドルを支給(2023年5月1日から適用)。一方、飲食業における店内外のサービススタッフおよび調理補助(シェフを除)の職務については、月額3万2,000台湾ドルに設定した(2023年6月26日から適用)。
求人と求職のマッチング
公共職業紹介機関が所管省庁等から提供された求人リストを活用し、労働力不足の企業と積極的に連絡を取りながら、求人情報を確認し、職種名、募集人数、勤務地、仕事内容、必要なスキル、資格、労働条件、給与などの詳細を把握し、求人情報を登録する。
次に、公共職業紹介機関は求職者登録データベース、失業者データベース、公共職業訓練修了者(2年以内)、技能試験に合格した未就職者(2年以内)などの情報を整理し、適任者を選定する。そして、適切な候補者に対して求人情報や採用イベントの情報を提供し、マッチングサービスを展開する。
公共職業紹介機関の推薦した求職者を企業が採用しなかった場合、具体的な理由を報告させる。一方、求人条件に沿った推薦を受けなかった企業は、労働部に対して改善を促すことができる。
就業支援、職業訓練の奨励
資格を満たす失業者が、公共職業紹介機関の評価と推薦を受け、「プラグラム」の指定した職種に就職する場合、最長12カ月間の就業奨励金を受け取ることができる。奨励金を受け取る対象は「一般労働者」と「特定対象者及び高齢者」に区分する。「特定対象者及び高齢者」とは、就業サービス法第24条に記載された者など11種類の特定対象者(注1)を指す。
一般労働者には、月額6,000台湾ドルの就業奨励金を支給する。勤務地が遠隔(特定)地域の場合、月額9,000台湾ドルに引き上げる。
「特定対象者及び高齢者」に対しては、フルタイムの場合は、月額1万台湾ドルの就業奨励金を給付する。さらに、勤務地が遠隔(特定)地域の場合、月額1万3,000台湾ドルまで引き上げる。パートタイム労働者で毎月の収入が規定を満たす場合、月額5,000台湾ドルの就業奨励金を給付する。遠隔(特定)地域の場合、月額6,500台湾ドルに引き上げる。
「特定労働力不足産業」で「雇ってから職業訓練を行う」企業に対して、職業訓練への補助金を支給する。一人あたり月額1万2,000台湾ドルを最大で3カ月間支給する。遠隔(特定)地域の場合、一人当たり月額1万5,000台湾ドルとする(同じく最大3カ月まで)。
また、失業者に公共職業訓練受講の奨励金を提供し、「プラグラム」で指定した労働力不足の職種への就業に必要なスキルを学ぶことを奨励する。受講者一人当たり5,000台湾ドル(遠隔(特定)地域は一人当たり8,000台湾ドル)の職業訓練参加奨励金を1回限り支給する。
労働部によると、現在、このプラグラムには800以上の企業が参加し、約2,900人の就職を見込んでいる。今後、少子化の影響などを受け、若年労働力が減少する中で、企業に対して女性や中高年層の再就職を促進する方針も推奨している。
注
- 該当する者は次のとおり。「単独で家計を負担している者(配偶者の死亡、離婚、未婚で、家庭の唯一の稼ぎ手として、子どもらを扶養している者など)」「中高年齢者」「身体障害者および精神障害者」「原住民」「低所得世帯または中低所得世帯で就労能力のある者」「長期失業者」「再就職を希望する女性」「家庭内暴力の被害者」「更生保護対象者」「15歳以上18歳未満で高等教育に進学していない失業者」「65歳以上の高齢者」。(本文へ)
参考文献
- 台湾労働部労働力発展署ウェブサイト(「パンデミック後の人手不足改善および雇用拡大プラグラム(疫後改善缺工擴大就業方案)」
参考レート
- 1台湾ドル(TWD)=4.77円(2024年7月23日現在 みずほ銀行ウェブサイト)
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