【北海道】(北海道二十一世紀総合研究所)
幅広い業種で業況判断が後退も、個人消費は緩やかに持ち直し
地域シンクタンク・モニター定例調査
北海道の1~3月期の地域経済について、幅広い業種で業況判断が後退しているものの、個人消費が緩やかに持ち直していることなどから、モニターである北海道二十一世紀総合研究所は【横ばい】と判断した。4~6月期の見通しは、販売額の底堅さや民間設備投資の増加見込みなどをふまえ【やや好転】としている。1~3月期の雇用動向については、人手不足感に一服感がみられるとして【横ばい】と判断。4~6月期の雇用見通しも、有効求人倍率が一進一退であることなどから【横ばい】としている。
<経済動向>
自動車の認証不正問題の影響で新車登録台数が大きく減少
モニターが実施している「道内企業の経営動向調査」によると、1~3月期の売上DIはマイナス9で前期から8ポイント低下した。利益DIもマイナス15と、前期から8ポイント低下した。業種別にみると、機械製造業を除く幅広い業種で、前期から業況が後退した。
分野別の動向をみると、個人消費は物価高の影響を受けつつも緩やかに持ち直している。当期の販売額はホームセンター(前年同期比マイナス3.5%)が低下したものの、百貨店(同プラス11.6%)、ドラッグストア(同プラス8.0%)、スーパーマーケット(同プラス5.1%)、家電大型専門店(同プラス3.5%)、コンビニエンスストア(同プラス3.1%)では増加した。
観光関連をみても、国内来道客数は前年同期比プラス9.9%となったほか、外国人入国者数は同プラス55.9%で大幅な伸びが続いている。
当期の新車登録台数は、大手自動車メーカーの認証不正問題による生産停止の影響で主力車種が販売できない状況が続き、前年同期比マイナス17.2%と大きく減少している。
公共投資は、当期の公共工事請負金額が前年同期比プラス1.9%で、4四半期連続で前年を上回った。
このように「道内経済指標は、濃淡はあるものの総じてみれば底堅く推移している」ことから1~3月期の地域経済を【横ばい】と判断した。
半導体製造の工場建設で関連需要が増加
北海道財務局の「法人企業景気予測調査」によると、4~6月期の景況判断は1.8の「上昇」超で、前期(マイナス13.2の「下降」超)から大きく改善している。業種別にみても、製造業が2.4、非製造業が1.6でいずれも「上昇」超となっている。窯業・土石製品製造業、鉄鋼業、食料品製造業、リース業、宿泊・飲食サービス業が押し上げに大きく寄与した。モニターは、こうした動きの背景には「観光関連需要の回復や、先端半導体製造業・ラピダスの工場建設の関連需要の増加」があるとみている。
4月の業態別販売額は、家電大型専門店(前年同月比プラス15.4%)、ドラッグストア(同プラス5.6%)、百貨店(同プラス4.7%)、ホームセンター(同プラス2.3%)、スーパー(同プラス1.9%)、コンビニエンスストア(同プラス1.1%)のすべての業態に底堅さがみられる。一方、乗用車新車登録台数(同マイナス11.1%)は4カ月連続で減少している。
モニターは個人消費について、「道内は新車販売を除き幅広い業態が前年を上回り底堅く推移しており、雇用所得環境も改善基調にあることから、今後も緩やかな持ち直しが見込まれる」としている。
観光関連では、4月の来道客数は前年同月比マイナス0.1%と30カ月ぶりに減少したものの、道内外国人入国者数は同プラス56.0%と22カ月連続で増加しており、観光は改善が続いている。
民間設備投資については、日銀短観での2024年度の民間設備投資額(計画)が前年比プラス10.9%と大きく伸びている。
こうしたことからモニターは、「足元の経済指標おおむね順調に推移しており、民間設備投資も増加が見込まれる」として、4~6月期の見通しを【やや好転】と判断した。
<雇用動向>
人手不足感に一服感
労働統計をみると、有効求人倍率は1月が1.04倍(前月比プラス0.02ポイント)、2月が1.03倍(同マイナス0.01ポイント)、3月が1.04倍(同プラス0.01ポイント)とほぼ横ばいで推移している。1~3月期の完全失業率(原数値)は2.4%で、前年同期(2.6%)から改善している。
日銀短観(3月調査)の雇用人員判断はマイナス48の「不足」超で、前期から1ポイント上昇している。業種別にみると、製造業がマイナス33で前期比8ポイント上昇、非製造業がマイナス52で横ばいと、「道内の人手不足感に一服感がみられた」。
こうした状況から、モニターは1~3月期の雇用について、完全失業率は改善しているものの、日銀短観では人手不足感に一服感がみられることから【横ばい】と判断した。
人手不足感は再び強くなる見込み
日銀短観(3月調査)での6月先行きの雇用人員判断はマイナス53で、前期から5ポイント低下して人手不足感が再び強くなる見込み。
4月の有効求人倍率は1.01倍で前月から0.03ポイント低下している。4月の新規求人数(常用)は前年同月比マイナス3.4%と、14カ月連続で前年同月を下回った。産業別にみると、「運輸業、郵便業」(前年同月比プラス16.3%)が増加したものの、幅広い産業が減少した。特に、「宿泊業、飲食サービス業」(同マイナス20.9%)、「情報通信業」(同マイナス14.7%)、「製造業」(同マイナス12.4%)の減少が目立った。
モニターは「『短観』では人手不足感が再び強まる見込みとなっているものの、有効求人倍率は一進一退となっており、新規求人数は前年の反動もあり足踏みがみられる」として、4~6月期の見通しについても【横ばい】と判断した。