【宮城】(七十七リサーチ&コンサルティング)
非製造業で特に見られる人手不足。しかし賃金上昇圧力から新規求人は弱含み
地域シンクタンク・モニター定例調査
宮城県の1~3月期の経済動向について、生産用機械など生産は持ち直しの動きがみられるものの、実質賃金減少や冬物商材の低調などによる個人消費の鈍化の動きもあるとして、モニターである七十七リサーチ&コンサルティングは【横ばい】と判断した。4~6月期の見通しも、生産活動は半導体関連が緩やかに持ち直す見込みだが、大手自動車メーカーの認証不正問題の影響もあり【横ばい】。雇用については、1~3月期実績は労働需要の弱さと特に非製造業での人手不足などから【横ばい】とし、4~6月期見通しも、賃上げ圧力による新規求人の弱含みなどから【横ばい】とした。
<経済動向>
半導体需要の回復で生産用機械が持ち直し
モニターは1~3月期の地域経済を「物価高や人手不足などが重石となり、全体として足踏みしている」として【横ばい】と判断した。
判断理由を詳しくみていくと、生産は、グローバルな半導体需要の回復に伴い生産用機械が持ち直し、主力の電子部品も、なお低調ながら底打ちの兆しがみられるなど、振れはあるものの全体としては持ち直しに向けた動きとなっている。
建設需要は、公共投資に下げ止まりの動きはみられたものの、請負金額はなお低調な状況。住宅投資は持家の着工戸数が過去最低水準圏で推移しており、貸家は仙台圏で動きがあるものの弱めの動きとなっている。民間非居住(産業用)建築物では、東北大学農学部跡地の再開発の目玉である大型商業施設の着工があったものの、2024年問題など人手不足による工期の長期化、資材高による建設コストの上昇などから、投資の見送り・先送りなどがみられ、投資姿勢は消極的な状況。
個人消費は、政府のエネルギー価格の激変緩和措置や暖冬による暖房費減少が可処分所得を下支えしたが、物価高による実質賃金の減少や冬物商材の不振などが響き、持ち直しの動きが鈍化している。
認証不正問題による生産・出荷停止により回復は年後半か
4~6月期の経済動向をみると、生産は、半導体需要の回復により半導体製造装置や電子部品・デバイスなどを中心に緩やかに持ち直す見込みだが、大手自動車メーカーの認証不正問題による長期の生産・出荷停止措置が強い下押しとなり、モニターは「本格的な回復は年後半にずれこむ可能性が高い」とみている。
建設需要は、公共投資が底打ちするものの、震災復興事業で需要が先食いされた被災地沿岸部を中心に低調な状況が続くと見込まれる。住宅投資も建設コストの高止まりや不確実な金利情勢などから需要が軟調に推移すると見込まれ、民間非居住建築物は仙台近郊で活発だった物流施設などの大型物件が一巡し、追加の再開発プロジェクトまでは低調に推移する見通し。
個人消費は、電気代の激変緩和措置終了や円安進行による輸入コスト上昇などで実質賃金が下押しされ、相次ぐ自動車の検査不正などにより弱めの動きがみられる一方、定額減税や賃上げなどの下支えにより底堅さを保って推移するとみられる。
4~6月期の見通しは、「引き続き物価高や人手不足に下押しされ、足踏み状態が続くとみられる」として前期同様に【横ばい】と判断した。
<雇用動向>
公務の上振れはあるが労働需要は依然として弱め
1~3月期の雇用をみると、有効求人倍率は1.32倍で前期から横ばい。当期の新規求人数は前年比プラス6.2%だが、「公務・その他」の一時的な上振れや、「医療、福祉」など景気感応度の低い業種で押し上げられており、労働需要は依然として弱めの動きとなっている。
モニターが実施している「県内企業動向調査」によると、当期の雇用DIはマイナス39の「不足」超で、前期(マイナス40)からほぼ横ばいとなっている。業種別にみると、製造業(マイナス22)と非製造業(マイナス47)で人手不足感の乖離がみられる。同調査で尋ねた「経営上の課題」(複数回答)をみても、「人手不足」は非製造業では57.4%だが、製造業では37.5%にとどまっている。
モニターはこうした状況について、「労働需要の改善に足踏みがみられる一方、需給のミスマッチなどに起因した人手不足なども企業の活動に影響を与えている」とコメントしたうえで、1~3月期の雇用動向を【横ばい】と判断した。
「2024年問題」の影響を尋ねると34%が「影響あり」と回答
4~6月期の見通しについては、「『2024年問題』などによる慢性的な人手不足の状況下、賃上げ圧力が一層強まる労働市場では新規求人が弱含んで推移すると見込まれる」として判断を【横ばい】とした。
モニターが実施している「県内企業動向調査」によると、4~6月期の雇用DIはマイナス36の「不足」超で、前期(マイナス39)から「不足」超幅がやや縮小。
また、同調査で「2024年問題の業況等への影響」を尋ねたところ、33.8%が「影響あり」と回答した。非製造業は37.5%で、このうち建設業が46.6%、運輸・倉庫業が55.5%となっている。
一方、その対応(複数回答)については「賃金・労働条件の改定」が30.7%で最も割合が高く、次いで「販売・受注価格の改定」(24.9%)、「業務フローの見直し・効率化」(22.5%)などとなっている。「賃金・労働条件の改定」は運輸・倉庫業では51.9%、建設業では43.3%となっており、モニターは「2024年問題による対象業種への賃金上昇圧力が極めて高いことがうかがえる」とコメントしている。