【東海】(OKB総研)
物価高や認証不正の影響で景気回復に一服感。中小では若干の賃上げにとどまっているとの見方

地域シンクタンク・モニター定例調査

1~3月期の東海地域の経済は、物価高や大手自動車メーカーの認証不正問題の影響もあって回復に一服感があるとして、モニターであるOKB総研は【やや悪化】と判断した。4~6月期の見通しは、個人消費の低迷が続くなどとして【横ばい】とした。雇用動向は、1~3月期実績は雇用指標の動きから【横ばい】、4~6月期見通しも回復のペースが緩やかなことから【横ばい】と判断している。モニターが実施した調査では、大企業で大幅な賃上げが進んだ一方、中小企業は若干の賃上げにとどまっているとの見方が多かった。

<経済動向>

生産は弱含み、ただ設備投資は前年比プラスに

生産は弱含みとなっている。鉱工業指数は99.8で前期比9.4%低下した。主な業種では電気機械工業が同14.5%低下、輸送機械工業は同12.4%低下となっている。

東海財務局の「法人企業統計調査」によれば、1~3月期の東海4県(静岡県含む)の設備投資額は前年同期比プラス16.2%と大幅に増加した。増加は5四半期連続。業種別にみると、製造業は同プラス26.8%で、10四半期連続で前年同期を上回った。非製造業は同プラス5.3%で、こちらも5四半期連続で前年同期を上回っている。

個人消費は緩やかに持ち直したが、一部に弱い動きもみられた。中部経済産業局管内5県(愛知県、岐阜県、三重県、富山県、石川県)の当期の販売額をみると、ドラッグストア(前年同期比プラス9.5%)、百貨店(同プラス8.6%)、スーパーマーケット(同プラス3.7%)、コンビニエンスストア(同プラス2.0%)、ホームセンター(同プラス1.2%)は前年同期を上回ったが、家電大型専門店(同マイナス2.2%)は前年同期を下回っている。

輸出をみると、名古屋税関管内の輸出通関額は1月が前年同月比プラス24.3%、2月が同プラス12.7%、3月が同プラス8.9%とプラスで推移している。

モニターは「物価高による消費の伸び悩みや大手自動車メーカーの認証不正問題が影響し、景気回復の動きに一服感がみられた」として、1~3月期の地域経済を【やや悪化】と判断した。

百貨店やスーパーなどの販売額は前年比プラスだが景況感は下降

4~6月期を分野別にみると、中部経済産業局管内5県の大型小売店販売額(4月)の前年同月比は、百貨店、スーパーマーケット、ドラッグストア、ホームセンター、コンビニエンスストアがプラスとなったが、家電大型専門店はマイナスだった。

モニターが作成する「OKB景況指数(6月期)」をみると、景気水準はマイナス1.1で前期(4.8)から約6ポイント悪化しており、モニターは「物価高を受けて個人消費の低迷が続く」と指摘している。

東海財務局の法人企業景気予測調査(4~6月期)では、景況判断BSIは、「下降」超幅は縮小したものの、2期連続で「下降」超となっている。企業規模別では大企業が「上昇」超に転じたものの、中堅企業、中小企業は「下降」超の状況。業種別では製造業が「下降」超が続いたものの、非製造業は2期ぶりに「上昇」超に転じた。

生産は持ち直しの動きがみられた。4月の鉱工業生産指数は105.1で前月比1.7%上昇した。主要業種では電子部品・デバイス工業が同13.3%上昇、生産用機械工業が同10.8%上昇となっている。モニター作成のOKB景況指数の生産活動は、前期のマイナス0.9から2.3に約3ポイント上昇している。

モニターは「総じて、景気は持ち直しの動きがみられる」ものの、「物価高や大手自動車メーカーの認証不正問題等の影響が続いている」として4~6月期の見通しを【横ばい】と判断した。

<雇用動向>

失業率が3期ぶりに悪化、雇用の回復ペースは緩やか

雇用の実績(1~3月期)について、有効求人倍率をみると当期は1.27倍で、前期(1.28倍)から横ばい。新規求人数は1月が前年同月比マイナス1.7%、2月が同マイナス2.0%、3月が同マイナス7.0%と減少傾向が続いた。完全失業率(原数値)は2.5%で前期(2.4%)からわずかに悪化した。悪化は3期ぶり。

モニターはこれらの統計の動きをもとに、「総じて、企業側の人手不足感が強まるなか、雇用情勢は持ち直しの動きが続いているが、回復ペースは緩やか」として判断を【横ばい】とした。

東海財務局の「法人企業景気予測調査」によると、6月末時点の従業員数判断BSIは30.6の「不足気味」超で、3月末(32.0)から「不足気味」超の幅がやや縮小している。一方でモニター作成の「OKB景況指数(6月期)」では、雇用は68.7の大幅な「不足」超の状況で前期(66.5)から不足幅がやや拡大している。

有効求人倍率は4月が1.26倍(前月比マイナス0.02ポイント)で、横ばいでの推移が続いている。

モニターは4~6月期の見通しについて、「雇用情勢は緩やかなペースで持ち直しの動きが続いている」として【横ばい】と判断した。

中小企業では若干の賃上げにとどまっているとの記述が目立つ

モニターが実施しているOKB景況指数調査では、東海3県にあるOKB大垣共立銀行の支店長を調査対象としており、地域の景況感を数値で回答してもらうだけでなく、地域企業の動向など地域の景気動向についてもコメントを寄せてもらっている。6月期調査で寄せられたコメントでは、大企業の大幅な賃上げに対し、中小企業は若干の賃上げにとどまっているとの記述が多かった。「収益力は向上していないが、人員確保のためやむを得ず賃上げに取り組む企業が多く、今後も継続して賃上げが実施されるかは不透明」という、厳しい状況にある中小企業が多いことがうかがえた。