北京市朝陽区、「人材サービス企業」の誘致策を発表
北京市朝陽区はこのほど、企業と専門職等人材のマッチングサービスなどを行う「人材サービス企業」の誘致や、高度人材育成サービスの提供を目指す新たな政策を発表した。人材サービス企業に対する奨励金や運営補助金の支給を含む、各種施策を盛り込んでいる。
制度の整備と国内誘致の支援
中国商務部と人力資源・社会保障部は2022年3月、北京市朝陽区の人力資源サービス産業集積拠点を、全国で初めて「国家レベルの人材サービス集積拠点」として認定した。2023年末時点で、同集積拠点には1,600社以上の人材サービス企業があり、総売上高は1,100億元に達する、この地域には、国内外の大手人材サービス企業が集積している。
北京市朝陽区がこのほど発表した政策は「朝陽区における国家レベルの人材サービス進出拠点の高品質建設に関する意見(注1)」(以下、「意見」)である。「人材サービスビジネスの標準化と制度化の強化」「人材サービス企業の国内誘致と海外進出の促進」「人材サービス水準向上のための支援」など、6つの項目と20の措置をあげている。
まず、同区内に「人材サービス企業」の集積拠点を設け、その中で人材ビジネスサービスの標準化・制度化を強化していく。模範となる企業には1回に限り10万元の報奨金を与える。また、科学的かつ効果的な統計メカニズムを整備し、集積拠点内の人材サービスビジネスの実態を把握するための枠組みを構築する。さらに、国際人材の出入国、ビザ申請、海外留学生の受け入れなどの手続きを効率化し、ビザ申請時には特別な「グリーンチャンネル(簡略化措置)」を設ける。
次に、人材サービス企業(多国籍企業の子会社や支店など)の「国内誘致」を支援する。集積拠点内の優秀な企業を支援し、前年度の売上が1億ドル以上で、かつ集積拠点内でトップ10にランクインした企業には、最大50万元までの奨励金を支給する(1回限り)。また、多国籍企業の新設または転入を奨励し、最大1,000万元の奨励金を提供する。
企業が人材サービスビジネスをインキュベート(起業や新規事業の育成支援)する拠点を設立し、「海外進出インキュベート拠点」に認定されると、奨励金30万元を支給する(1回限り)。海外でのインキュベート育成企業やチームの設立が、朝陽区の集積拠点への企業の定着に貢献した場合、それぞれに奨励金10万元を支援する(1回限り)。成長企業には、3年間で年間10万元の成長補助金を与える。
海外展開を積極支援
この他、北京市朝陽区は人材ビジネスサービスを支援するために、さまざまな取り組みを進めている。企業の合併、買収、再編、提携などを活用して海外に事業拠点を設立する際の支援を行う。海外で新たに拠点を設立する企業には、建設費用の50%相当額、最大10万元の補助金を提供する(1回限り)。また、海外での企業買収や合併に必要な資金に対して、最長5年間、同期最優遇貸出金利(LPR, Loan Prime Rate)を上回らない利子補助も行う。
さらに、海外に設立された事務所や支社の売上高のうち、全額または80%以上が集積拠点内の親会社の財務や課税項目に計上される企業には、初年度の売上高に応じて180万元から400万元までの特別資金援助を支給する場合がある(1回限り)。また、海外人材サービスのアウトソーシングビジネス事業で年間売上高の上昇率が30%を超える企業に対し、地域への貢献度に応じた奨励金を提供する。
海外での競争力を高めるため、北京市朝陽区は人材サービスビジネス専門委員会を設立し、国際市場の開拓やサービスネットワークの構築を支援する。また、オンラインとオフラインの融合を進めて「クラウドプラットフォーム」を構築し、海外での雇用情報の公開、採用、オンライン契約などの機能を実現させていく。このため、毎年最大30万元を限度に補助金を提供する。
高度人材の集結と専門能力育成の重要拠点に
高度な人材の導入促進に関して、世界トップクラスの人材や革新的なインキュベートチームの誘致を支援する。リーダー1人あるいは国際的なトップチーム1組あたりに対しては最大100万元の奨励金を提供し、ノーベル賞やチューリング賞(Turing Award)(注2)受賞者、院士(注3)などには特別な支援政策を適用する。
国際的な職業資格の相互認証の試行として、人材サービスビジネスに関する海外の職業資格を認め、その資格を持つ人材には集積拠点において同等の待遇や昇進の機会を与える。
さらに、自主的な人材育成の強化策として、大学や人材サービス企業が協力し、人材サービスビジネスに必要な管理職や技術者を育成するための研修プログラムを実施する。研修を修了し、評価をクリアした者には資格認定を行い、1人あたり1,000元の研修補助金を支給する。
エリート人材育成のため、産業界、学界、研究者が協力する「拠点・研究・プロジェクト」というモデルを確立し、高度な人材サービスを担う専門家を育成する。
サービス水準向上を目指す
政府は国際専門家チームを編成し、集積拠点内の各組織に対し、関連法規、労働政策、社会保障、出入国政策などの無料コンサルティングサービスを提供し、サービス水準の向上を目指す。毎年の政策の集約版や雇用指針を発行する。
政府の指導と企業の自主的な取り組みにより、国際人材サービスチームを専門化する。集積拠点内の組織には、国際人材の定着サービスを整備し、情報、医療、住居(集合住宅)などの個人サポートサービスを提供する。また、国際人材コミュニティの構築を加速するため、年間運営費の50%を補助金として支給する。
注
- 北京市朝陽区ウェブサイト(朝阳区高质量建设国家级人力资源特色服务出口基地的意见
)参照(本文へ)
- 計算機協会(Association for Computing Machinery)が計算機科学分野で重要な業績をあげた人物を毎年表彰しているもの。(本文へ)
- 中国工程院の「院士」は、工学・技術科学分野における最高位の称号のことで、終身の称号である。新任の院士は既に院士である者たちによって選挙で選ばれる。院士、資深院士、外籍院士で構成されている。(本文へ)
参考文献
- 北京市朝陽区人民政府、人民網、北京日報、各ウェブサイト
参考レート
- 1中国人民元(CNY)=22.18円(2024年7月11日現在 みずほ銀行ウェブサイト
)
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