【山形】(山形銀行やまぎん情報開発研究所)
有効求人倍率が全国平均を上回るものの低下傾向。ただ、相変わらずの人手不足感。
地域シンクタンク・モニター定例調査
山形県の1~3月期の地域経済について、モニターである山形銀行やまぎん情報開発研究所は、認証不正問題による自動車の出荷・生産停止の影響や、暖冬による季節需要の減少から【やや悪化】と判断した。4~6月期の見通しは、半導体関連の需要に持ち直しの兆しなどがあることなどから【やや好転】とした。1~3月期の雇用動向は、有効求人倍率が全国平均は上回るものの低下傾向にあり【やや悪化】と判断。4~6月期の雇用見通しは、人手不足感の変化が小幅にとどまっていることから【横ばい】としている。モニターが実施した調査によると、夏のボーナスを増額する企業割合は約22%で、昨年の約17%から上昇している。
<経済動向>
記録的な暖冬で季節需要が減少
1~3月期の経済動向は弱めの動きとなっている。鉱工業生産指数は、主力の電子部品・デバイスや汎用・生産用・業務用機械は上昇に転じたものの、化学工業では10~12月に大幅増産となった分の反動減がみられたことなどから、全体では前期比4.0%低下した。
個人消費は、このところ持ち直しの動きが鈍化している。県内の販売統計は前年比プラス2.8%増で、3年以上にわたって前年比プラスの状況が続いている。しかしモニターが作成している「やまぎん消費総合指数」では、名目値が前期比マイナス0.9%、実質値も同マイナス1.5%で、いずれも2期連続のマイナスとなっている。
モニターが県内企業に実施した「やまぎん企業景況サーベイ」によると、当期の業況判断BSIは前期から10.2ポイント低下してマイナス8.6となった。
モニターは「不正認証問題による自動車の出荷・生産停止の影響や、記録的な暖冬による季節需要の減退などが業況を下押しした様子がうかがえる」として、1~3月期の地域経済を【やや悪化】と判断した。
半導体関連の需要で持ち直しの兆しがみられる
4~6月期について、生産活動は、半導体関連需要に持ち直しの兆しがみられることなどから、電子部品・デバイスや汎用・生産用・業務用機械は比較的底堅く推移する見込み。化学工業は、4月以降に医薬品の新設工場の稼働が見込まれることなどから、全体では徐々に持ち直しの動きに転じていくとモニターはみている。
個人消費は、春季賃上げによる賃金上昇を好感する動きもみられるものの、依然として強い物価上昇が続くなかで、総じてみれば横ばい程度の動きとなることが予想される。
「やまぎん企業景況サーベイ」によると、当期の業況判断BSIは前期から6.2ポイント上昇のマイナス2.4で、依然として「悪化超」のマイナス水準にあるものの、1年ぶりに上昇に転じた。内訳をみると、製造業では自動車の不正認証問題の影響減退や、半導体関連受注に持ち直しの兆しがみられることなどで、鉄鋼・金属、電気機械、一般機械、輸送機械など、外需の影響をうけやすい機械工業関連が総じて上昇している。非製造業については、暖冬による下押しの一巡に加えて、サービス業・その他などでは価格改定を好感する動きもみられる。
こうしたことからモニターは、「緩やかながら持ち直しの動きに転じる見通し」として4~6月期の見通しを【やや好転】とした。
<雇用動向>
新規求職の増加で有効求人倍率が低下
労働統計をみると、1~3月の有効求人倍率は1.31倍。5期連続で低下しているものの、引き続き全国平均を上回る水準を維持している。業種横断的に新規求人数の減少基調が続くなかで、新規求職者数は増加傾向にあり、有効求人倍率の低下につながっている。また工場閉鎖の動きなどもみられ、新規求職者のなかでも事業主都合離職者の増加が目立っている。
「やまぎん企業景況サーベイ」の雇用判断BSI(「多い」-「少ない」)をみると、前期から7.5ポイント上昇してマイナス30.6となった。上昇は2四半期連続。業種別にみると、製造業は2期連続の上昇、非製造業は1年ぶりの上昇で、「このところの業況弱含みをうけて、人手不足感が緩和し、求人減につながっていると考えられる」。
モニターは1~3月期の雇用状況を「強い人手不足感が続いているものの、【やや悪化】する動き」と判断した。
全体としては有効求人数の減少傾向は変わらず
4月の労働統計をみると、有効求人倍率は1.33倍で、全国平均を上回り東北では最も高い水準となっている。建設業の新規求人数が前年比プラスに転じる動きもみられるものの、全体としては有効求人数の減少傾向に変化がない。
4~6月期の雇用判断BSIは前期から1.5ポイント低下のマイナス32.1で、小幅ながら3期ぶりに低下している。
業種別にみると、製造業は前期比5.3ポイント低下のマイナス18.9で6期ぶりに低下に転じており、「業況が改善した機械工業において総じて人手不足感が増した様子がうかがえる」。非製造業は同1.1ポイント上昇のマイナス42.1で、依然として大幅な人手不足の状態にある。ただし卸売業、小売業などの販売業を中心に、消費不振により人手不足感が若干緩和している。
モニターは、4~6月期の見通しを「おおむね【横ばい】で推移する」とみている。
春季賃上げの影響もありボーナスは増額傾向
モニターが実施した調査によると、夏季賞与の1人あたり支給額は、前年に比べ「増加する」が22.2%(前年調査17.2%)、「前年並」が56.4%(同61.8%)、「減少する」が11.5%(同11.6%)、「支給なし」が9.9%(同9.5%)となった。「増加する」との回答割合が前年調査に比べ5.0ポイント上昇しており、モニターは「春季賃上げによる給与水準の上昇などもあって、今夏のボーナスは明確に増加傾向を示している」とコメントしている。