健康課題に関する調査分析を報告。20~39歳の女性では3割弱が女性特有の健康課題に対する職場の配慮として「生理休暇を取得しやすい環境の整備」を要望
――2023年版「男女共同参画白書」
女性活躍に向けた最新の政策動向
内閣府男女共同参画局が6月に公表した2023年版「男女共同参画白書」では、特集の第2節において「仕事、家事・育児等と健康課題の両立」と題し、内閣府の「2023年度男女の健康意識に関する調査」の結果をもとに、健康課題や対処法等について、女性・男性それぞれの回答を分析している。それによると、女性・男性ともに、最も気になる症状に対して、特に対処していない割合が2~3割超に及んでいる。女性特有の健康課題では、女性特有の健康課題に対する職場の配慮として、20~39歳の女性では28.1%が「生理休暇を取得しやすい環境の整備(有給化や管理職への周知徹底など)」を要望。40~69歳の女性では、27.3%が「病気の治療と仕事の両立支援制度」を望んだ。
「男女共同参画白書」は、男女共同参画社会基本法に基づき作成している年次報告書で、男女共同参画の現状と施策についてとりまとめている。今年の特集テーマは「仕事と健康の両立~全ての人が希望に応じて活躍できる社会の実現に向けて~」。すべての人が希望に応じて、家庭でも仕事でも活躍できる社会「令和モデル」の実現に向けた基盤として重要な「健康」に着目している。調査・分析結果を紹介する第2節に絞り、その概要を紹介する。
最も気になる症状は男女とも肩こり・関節痛がトップ
健康意識について尋ねた設問の回答割合を、雇用形態別にみると、女性・男性ともに、「健康だと思う」と「どちらかといえば健康だと思う」を合わせた割合は、正規雇用労働者(女性82.5%、男性80.2%)、非正規雇用労働者(同79.1%、71.3%)、無業者(同71.5%、53.9%)の順で高くなっている。
1カ月の間での気になる症状をみると(複数回答)、女性では「肩こり、関節痛(腰、膝、手足)」が40.1%で最も高く、次いで「だるい、疲れやすい、動悸・息切れ」(29.8%)、「頭痛、めまい、耳鳴り」(28.0%)、「手足の冷え、むくみ、だるさ」(26.2%)、「不眠、いらいら」(23.1%)、「胃腸の不調(胸やけ、下痢、便秘など)」(21.3%)などの順となっている。男性でも「肩こり、関節痛(腰、膝、手足)」が26.4%で最も高く、以下、「だるい、疲れやすい、動悸・息切れ」(21.3%)、「不眠、いらいら」(15.1%)、「頭痛、めまい、耳鳴り」(14.7%)、「胃腸の不調(胸やけ、下痢、便秘など)」(14.3%)などが続く。各症状の回答割合はおおむね、男性より女性のほうが高くなっている(図表1)。
図表1:最も気になる症状(男女、年代別)
(白書掲載の図表データ)
症状のうち最も気になるものをみると、女性・男性ともに、「肩こり、関節痛(腰、膝、手足)」が最も高い(女性26.3%、男性24.8%)。次いで高い症状は、女性では「頭痛、めまい、耳鳴り」(12.9%)、「だるい、疲れやすい、動悸・息切れ」(12.8%)などの順。男性では「だるい、疲れやすい、動悸・息切れ」(14.7%)、「胃腸の不調(胸やけ、下痢、便秘など)」(10.0%)などの順となっている。
症状に対処できている割合は正規雇用労働者が最も低い
最も気になる症状があると回答した者に対し、十分に対処できているか尋ねた設問の回答割合を雇用形態別にみると、「十分に対処できている」と「どちらかといえば十分に対処できている」を合わせた割合は、女性では無業者(44.5%)、非正規雇用労働者(43.1%)、正規雇用労働者(42.9%)の順に高く、男性では正規雇用労働者(47.7%)、非正規雇用労働者(44.3%)、無業者(37.8%)の順で高くなっている。
最も気になる症状への対処法について、年代別(20~39歳、40~69歳の2区分)・雇用形態別にみると(複数回答)、特に対処していない人の割合が、女性・男性ともに、雇用形態にかかわらず、20~39歳では2~3割台にのぼり、40~69歳で3割を超える(図表2)。
図表2:最も気になる症状への対処法(男女、年代、雇用形態別)
(白書掲載の図表データ)
回答のあった対処法では、20~39歳の女性はいずれの雇用形態でも「市販の薬や漢方、サプリメントを飲んでいる」(正規雇用労働者26.5%、非正規雇用労働者28.4%、無業者29.0%)や「ひどい時は休暇をとっている・休んでいる」(同19.3%、26.6%、28.0%)などが上位にのぼるが、各対処法の回答割合はおおむね、正規雇用労働者より非正規雇用労働者や無業者のほうが高くなっている。同年代の男性では、女性と同様に「市販の薬や漢方、サプリメントを飲んでいる」(同26.1%、20.6%、23.0%)や「ひどい時は休暇をとっている・休んでいる」(同23.5%、22.0%、20.4%)などが上位にのぼり、正規雇用労働者では「仕事の量や時間、働き方(在宅勤務など)を調整している」(25.2%)も高い。
40~69歳の女性では、いずれの雇用形態においても「市販の薬や漢方、サプリメントを飲んでいる」(正規雇用労働者28.4%、非正規雇用労働者28.4%、無業者25.3%)、「病院や診療所に行っている」(同19.1%、19.8%、25.3%)が高い。同年代の男性も、女性と同様に「市販の薬や漢方、サプリメントを飲んでいる」(同24.2%、23.3%、19.8%)、「病院や診療所に行っている」(同20.6%、27.3%、37.7%)などが高くなった。
女性の正規雇用労働者の4割は仕事や家事等で病院に行く時間を取れず
小学生以下の子どもと同居しており、最も気になる症状に十分に対処できているか尋ねた設問で「どちらかといえば十分に対処できていない」または「十分に対処できていない」と回答した者に対し、その理由を尋ねたところ(複数回答)、女性の正規雇用労働者では「仕事や家事・育児・介護で忙しく病院等に行く時間がない」が40.0%で最も割合が高く、以下、「我慢すればいいと思っている」(31.0%)、「金銭的な余裕がない」(26.2%)、「病院の空いている時間に行けない・予約できない」(22.4%)などが続く(図表3)。
図表3:最も気になる症状に十分に対処できていない理由(女性雇用形態別、正規雇用労働者男女別。小学生以下の子どもと同居している者が回答)
(白書掲載の図表データ)
女性の非正規雇用労働者および無業者と比べると、「仕事や家事・育児・介護で忙しく病院等に行く時間がない」(非正規雇用労働者31.9%、無業者30.0%)や「病院の空いている時間に行けない・予約できない」(同10.9%、9.4%)の回答割合は、正規雇用労働者のほうが10ポイント前後高くなっている。
男性・正規雇用労働者と比べると、「仕事や家事・育児・介護で忙しく病院等に行く時間がない」の割合は男性では24.6%となり、男女差が大きくなった。
20代女性の4割超が月経不調で生活にかなりの支障を感じている
第2節では続いて、女性特有の健康課題について、生活への支障や対処法などの結果を分析している。
過去1年間で月経(生理)がある者における、月経不調の生活(仕事や家事・育児・介護)への支障の程度をみると、「かなり支障がある」が32.1%、「ある程度支障がある」が24.2%、「少し支障はある」が25.5%となっており、これらを合わせた「支障がある」割合は81.9%にのぼっている。
「支障がある」割合を年代別にみると、20代(86.4%)、30代(85.1%)では8割を超えており、特に20代ではうち42.3%が「かなり支障がある」と回答している。
「支障がある」割合を症状別にみると、「月経痛(下腹部の痛み、腰痛、頭痛等)」が72.9%で最も高く、次いで「月経中の体調不良(だるさ、下痢、立ちくらみなど、痛み以外)」(69.7%)、「月経前の不調(月経前症候群(PMS)等)」(66.3%)、「月経中のメンタルの不調」(64.1%)などとなっている。
職場において月経に関することで困った経験をみると(複数回答)、「経血の漏れが心配で業務に集中できない」が24.5%で最も割合が高く、以下、「生理用品を交換するタイミングを作りにくい(長時間の会議や窓口業務等)」(20.6%)、「立ち仕事や体を動かす業務で困難を感じる」(18.7%)、「生理休暇を利用しにくい」(18.4%)などと続く。
女性の4割超、男性の6割超は更年期障害に関わる症状に特に対処せず
更年期障害に関わる症状(更年期障害以外の原因による症状も含む)の有無を年代別にみると、「症状があり、更年期障害だと思う」割合は、女性・男性ともに50代が最も高い(それぞれ32.1%、9.7%)。次いで高いのは、女性では60代(19.5%)、40代(14.0%)、男性では40代(7.9%)、60代(7.7%)となっている。
「症状があり、更年期障害だと思う」と回答した者のうち、一般的に更年期障害に関わる症状が現れることが多い、女性の40代~50代、男性の40代~60代に絞って、更年期障害に関わる症状の生活への支障の程度をみると、女性では「かなり支障があると思う」が29.1%、「ある程度支障があると思う」が28.2%、「少し支障はあると思う」が30.4%となっており、これらを合わせた「支障があると思う」割合は87.7%にのぼる。男性では「かなり支障があると思う」が23.8%、「ある程度支障があると思う」が21.6%、「少し支障はあると思う」が17.3%となっており、合わせた62.7%が生活に支障を感じている。
更年期障害に関わる症状への対処法をみると(複数回答)、女性の45.5%、男性の65.4%が特に対処していない。一方、回答のあった対処法では、女性では「市販の薬や漢方、サプリメントを飲んでいる」が26.9%で最も割合が高く、次いで「ひどい時は休暇をとっている・休んでいる」(16.9%)、「病院や診療所に行っている」(16.7%)などとなっている。男性では「病院や診療所に行っている」が13.0%で最も割合が高く、以下、「ひどい時は休暇をとっている・休んでいる」(11.1%)、「市販の薬や漢方、サプリメントを飲んでいる」(10.9%)などと続いた。
男女で最も回答差があるのは「婦人科健診・検診への金銭補助」
女性特有の健康課題に関して、職場にどのような配慮があると働きやすいと思うかについて、年代別(20~39歳、40~69歳の2区分)にみると(複数回答)、20~39歳の女性では「生理休暇を取得しやすい環境の整備(有給化や管理職への周知徹底など)」が28.1%で最も割合が高く、次いで「出産・子育てと仕事の両立支援制度(育児休暇取得、休職時サポート、復職支援など)」(27.5%)、「女性の社員全体の理解」(25.5%)、「婦人科健診・検診への金銭補助」(25.5%)などが高くなっている(図表4)。
図表4:女性特有の健康課題に対して、どのような配慮があると働きやすいと思うか(男女、年代別)
(白書掲載の図表データ)
40~69歳の女性では、「病気の治療と仕事の両立支援制度」が27.3%で最も割合が高く、次いで「更年期障害への支援(通院への休暇取得など)」(25.9%)、「経営陣・トップの理解」(25.6%)、「介護と仕事の両立支援制度」(25.6%)などが高くなった。
男性では、20~39歳、40~69歳ともに、「男性上司の理解」(21.3%、22.6%)、「男性の社員全体の理解」(20.6%、22.3%)、「経営陣・トップの理解」(18.5%、23.1%)などが上位にのぼる。
全項目の回答割合はおおむね男性より女性のほうが高くなっている。最も男女差がある項目は、20~39歳、40~69歳ともに、「婦人科健診・検診への金銭補助」で、20~39歳の女性(25.5%)と男性(9.1%)では16.4ポイント、40~69歳の女性(24.3%)と男性(10.2%)では14.1ポイント差となった。
(調査部)
2024年8・9月号 女性活躍に向けた最新の政策動向の記事一覧
- 男女賃金格差の是正や開示企業の拡大検討を。人材育成を軸に働く女性を支援 ――政府の「女性版骨太の方針2024」
- 男女間賃金格差が大きい金融業などの5産業に対し、2024年中でのアクションプランの策定の着手を要請 ――政府の「女性の職業生活における活躍推進プロジェクトチーム」が中間とりまとめを公表
- 健康課題に関する調査分析を報告。20~39歳の女性では3割弱が女性特有の健康課題に対する職場の配慮として「生理休暇を取得しやすい環境の整備」を要望 ――2023年版「男女共同参画白書」
- 100人~299人規模の企業でも一般事業主行動計画を作成した割合が7割以上に ――厚生労働省が女性活躍推進法の浸透状況に関する調査結果を公表