3年前に比べ組合員数が減少した組合が半数超
――厚生労働省の2023年「労働組合活動等に関する実態調査」
国内トピックス
厚生労働省がこのほど発表した2023年「労働組合活動等に関する実態調査」の結果によると、3年前に比べ、組合員数が「減少した」と回答する組合が54.5%と半数を超え、2021年の同割合(42.7%)から10ポイント以上増加した。減少の理由(複数回答)は、「自己都合退職」が75.8%で最も回答割合が高く、2021年調査で最も回答割合が高かった「定年退職」を上回った。組織化を進めていくうえでの問題点(複数回答)は、未加入の正社員については「組織化対象者の組合への関心が薄い」(64.7%)が最も割合が高く、2021年調査(56.1%)から割合が上昇した。
調査は、2022年の労働組合基礎調査で把握した労働組合を母集団として、民営事業所における労働組合員30人以上の労働組合のうちから、産業、規模など層化抽出して無作為に抽出した約5,100組合を対象とした。2023年6月30日現在の状況について同年7月に実施。3,028の有効回答を得た。
組合員数が「増加した」とする組合は23.0%
詳しくみると、3年前(2020年6月)と比べ、組合員数が「増加した」とする組合は23.0%で、「変わらない」が22.3%、「減少した」が54.5%。2021年の調査結果と比べると、「増加した」は8.4ポイント減少する一方で、「減少した」が11.8ポイント増加した。
「減少した」の割合が全体平均を上回った主な産業は、「複合サービス事業」(81.5%)、「電気・ガス・熱供給・水道業」(73.4%)、「運輸業、郵便業」(68.0%)、「情報通信業」 (58.2%)など。
「正社員以外の労働者の組合加入」との増加理由は低下
組合員が増加した理由(複数回答)をみると、「新卒・中途採用の正社員の組合加入」が89.9%(2021年調査84.4%)で最も高く、「正社員以外の労働者の組合加入」が10.0%(同14.1%)、「在籍する正社員の組合加入」が8.6%(同9.5%)などとなっている。
減少した理由(複数回答)をみると、「自己都合退職」が75.8%(同65.0%)と最も割合が高く、次いで「定年退職」が64.9%(同66.7%)、「正社員の採用手控え」が34.5%(同38.3%)、「在籍する組合員の組合脱退」が21.9%(同17.4%)、「新卒・中途採用の正社員の組合非加入」が11.1%(同7.2%)、「会社都合退職(早期優遇退職を含む)」が10.3%(同13.3%)などとなっている。
組織拡大を重点課題とする組合の割合は微増
組織拡大を「重点課題として取り組んでいる」組合の割合は28.4%で、2021年調査(26.7%)からやや増加した。産業別に最も同割合が高い順に並べると、「医療、福祉」(60.7%)、「複合サービス事業」(59.5%)、「教育、学習支援業」(53.4%)、「運輸業、郵便業」(52.4%)、「情報通信業」(38.9%)などと続く。
組織拡大を重点課題として取り組まない理由(複数回答)は、「ほぼ十分な組織化が行われているため」が54.2%で最も割合が高く、次いで「組織が拡大する見込みが少ないため」(24.7%)、「他に取り組むべき重要課題があるため」(20.8%)、「組織化を進める人的、財政的余裕がないため」(11.6%)などの順だった。
特に重視する組織拡大の対象のトップは「新卒・中途採用の正社員」
組織拡大の取り組み対象として特に重視している労働者の種類をみると、「新卒・中途採用の正社員」が51.5%で最も割合が高く(2021年調査41.5%)、「在籍する組合未加入の正社員」が20.3%(同22.6%)、「パートタイム労働者」が9.1%(同13.6%)、「有期契約労働者」が7.5%(同9.6%)、「嘱託労働者」が8.7%(同10.7%)、「派遣労働者」が0.6%(同0.6%)。
組織化を進めていくうえでの問題点(複数回答)を組織拡大の取り組み対象としている労働者の種類ごとにみると、「在籍する組合未加入の正社員」では、「組織化対象者の組合への関心が薄い」が64.7%で2021年調査(56.1%)から8.6ポイント増加し、「組織化を進める執行部側の人的・財政的余裕がない」(38.4%)も4.4ポイント増加した。「パートタイム労働者」では、「組織化対象者の組合への関心が薄い」(62.3%)の割合が最も高かったものの、2021年調査(68.7%)からは低下し、「組織化を進める執行部側の人的・財政的余裕がない」(38.2%)は2021年調査(27.2%)から10ポイント以上増加した。
2割以上の組合が今後、ハラスメント対策や休業・休暇制度にも重点
労働組合活動において、今後重点をおく事項(5つまで回答)を聞くと、「賃金・賞与・一時金」(79.4%)、「労働時間(労働時間の適正把握を含む)・休日・休暇」(62.9%)、「職場の安全衛生(メンタルヘルスを含む)」(33.1%)、「組合員の雇用の維持」(32.2%)、「定年制、継続雇用制度(勤務延長・再雇用)」(28.3%)、「セクハラ対策、パワハラなどハラスメント等対策」(23.9%)、「育児休業制度・介護休業制度・看護休暇制度・介護休暇制度」(23.3%)などの順で高い割合だった。
2021年調査と比べると、「賃金・賞与・一時金」(3.1ポイント増)、「育児休業制度・介護休業制度・看護休暇制度・介護休暇制度」(4.1ポイント増)、「企業の適正行動に関する監視、経営者へのチェック」(3.9ポイント増)などの事項での増加が目立った。
(調査部)
2024年8・9月号 国内トピックスの記事一覧
- 3年前に比べ組合員数が減少した組合が半数超 ――厚生労働省の2023年「労働組合活動等に関する実態調査」
- 2022年の平均世帯所得は524万円で前年から3.9%減少 ――厚生労働省の2023年「国民生活基礎調査」