「児童労働反対世界デー」で撲滅を訴え
 ―第182条条約採択から25周年

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  • 国別労働トピック:2024年7月

ILO(国際労働機関)は6月12日の「児童労働反対世界デー」にあたり、改めて児童労働の撲滅を呼びかけた。ウングボ事務局長は、「児童労働撤廃は社会・経済政策の最重要課題だとする「ダーバン行動要請」を実行に移さなければならない」と、1.6億人が児童労働に従事する現状への危機感を強く訴えた。

第182号条約は初めてすべての加盟国が批准

ILO条約「最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃のための即時の行動に関する条約」(第182号)は1999年に採択された。2020年、191あるILO条約の中で初めて、加盟187カ国のすべてが批准を終えた。今年(2024年)は、1999年の条約採択から25年目を迎える。

このため、今年の世界デーでは、改めて、1973年採択の「最低年齢に関する条約」(第138号)を批准していない加盟国(注1)に批准を訴えるとともに、児童労働に関するこれら2つの基本条約(第182号及び138号)の実施を念押しした。

第182号条約は、ILOの基本条約の1つで、子どもの安全、健康、道徳を害するおそれのある危険有害労働を禁止する。人身取引、債務労働、強制労働、児童買春、および児童ポルノ、犯罪など不正な活動、武力紛争での子どもの使用が含まれ、日本は2001年に批准している。また、第138号条約は、全産業を対象とする就業最低年齢を定めたもので、義務教育終了年齢後、原則15歳、軽労働は一定の条件の下13歳以上15歳未満、危険有害業務は18歳未満を禁止としている(開発途上国のための例外あり)。2024年6月現在、176カ国が批准している(日本の批准は2000年)。

世界で1.6億人が児童労働に従事

ILOによると、2020年現在、世界で1億6,000万人の子どもが児童労働に従事しており、うち7,900万人が危険な仕事に就いている。男女別には、男子が9,700万人、女子が6,300万人。児童労働とは「子どもの健康と発達に有害な仕事、長時間労働、幼すぎる子どもが行う労働」と定義している。

ILOは、児童労働の削減はここ数年、大きく進展してきたものの、コロナ禍や紛争などの影響もあり、世界の傾向が逆転していると指摘する。あらゆる形態の児童労働を終わらせるための行動を加速させ、これまで以上に力を合わせることが重要になっているという。

国際社会(国連持続可能な開発サミット)は2015年、「持続可能な開発目標(SDGs)」を採択し、その「ターゲット8.7」として、「強制労働を根絶し、現代の奴隷制、人身売買を終らせるための緊急かつ効果的な措置の実施、最悪な形態の児童労働の禁止及び撲滅を確保する。2025年までに児童兵士の募集と使用を含むあらゆる形態の児童労働を撲滅する」ことをあげ、あらゆる形態の児童労働の撤廃を約束している。

2年前の「ダーバン行動要請」を実行に

事務局長のウングボ氏は「児童労働反対世界デー」にあたりメッセージを寄せ、「児童労働の犠牲者は1億6,000万人に及び、これは子ども10人に1人にあたる。2年前、指導者たちはダーバンの世界会議で、児童労働の撲滅は社会・経済政策の最重要課題だと宣言した。われわれはこの「ダーバン行動要請(注2)」を実行に移さなければならない。これほどまでに多くの子どもの教育と健康の権利が奪われるならば、社会正義は実現されないも同然だ」と訴えた。

参考資料

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