雇用労働者の37%が「病気休暇」などで欠勤
 ―フルタイム換算で1人年間平均22.3日

カテゴリー:雇用・失業問題勤労者生活・意識

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  • 国別労働トピック:2024年7月

近年、主に「病気休暇」による欠勤の増加が問題視されている。民間調査会社の報告書によると、2023年には雇用労働者2,200万人のうち130万人が欠勤した。病気休暇による欠勤者には、社会保障制度から日当などが支払われる。このため政府は不正受給対策を厳格化するとともに、諸外国の制度を参考にしながら、公的給付の在り方を検討すべきとの指摘も出ている。

2023年の「欠勤率」は6.11%

民間コンサルティング会社Aymingが実施した調査結果によると、2023年の雇用労働者の欠勤率は6.11%だった(注1)。ここで言う「欠勤率」とは、年間の欠勤日数を年間就労日数で割って算出した数値である。また、従業員1人当たり年間欠勤日数はフルタイム労働に換算して22.3日で、雇用労働者全体の37%が1年間に少なくとも1回欠勤している(注2)

欠勤率の推移を遡ってみたグラフが図表1(黒の実線がAyming調査)であり、2015年の4%台から上昇し2020年には6.87%に達し、その後、若干減少した。雇用労働者約2,200万人のうち130万人(2022年には150万人)に相当する。また、2023年の報告書によると、調査開始の2008年から2022年にかけて、欠勤率は上昇傾向をたどっている(注3)

図表1:欠勤率の推移 (単位:%)
画像:図表1

出所:「Ayming et le groupe AG2R La Mondiale」および「Groupe APICIL」「IFOP et le groupe Diot-Siaci」それぞれの調査結果より作成。

注:黒の実線=AYMING、点線=Groupe APICIL、青線=IFOP et le groupe Diot-Siaci

欠勤率に関する調査はGroupe APICILも行っており、2022年の数値が最新だが、5.76%(図表1の点線)となっており、ほぼ同じ水準を示している。なお、欠勤の内訳として、病気による欠勤の占める割合はAPICILの調査では92%となっており、「欠勤(absentéisme)」と「病気休暇(arrêts maladie)」はほぼ同じものとして考えられる(注4)。また、欠勤が労災や職業病など仕事によるものか、仕事以外の個人的な理由による欠勤かについては、各年の報告書で明記されているわけではないが、2015年の調査結果では仕事によるが56%で、仕事以外によるが44%となっている(注5)

このほか調査会社IFOPとDiot-Siaci グループが行った調査があり、2018年以降の調査を図表1の青線で示した。2020年が最も高く5.64%だった。

2020年の平均欠勤日数は25.1日

雇用労働者1人あたりの平均欠勤日数について、2017年以降の推移を見たグラフが図表2(黒実線・Ayming調査)である。この数値も2020年にかけて上昇し25.1日に達したが、その後、若干少なくなっている。2023年の報告書によると、2011年の14日が2022年には24.5日と1.75倍になった(注6)

図表2:雇用労働者1人あたりの平均欠勤日数
画像:図表2

出所、注とも図表1と同じ。

APICIL調査(点線)では22日前後の日数であり、IFOP他調査(青線)では2021年が最も長く22.6日だった。

雇用労働者の37%が病気休暇取得

上述のとおりAyming調査によると、少なくとも年に1回は欠勤したとする雇用労働者の割合は2023年には37%だった。この割合は、2022年には47%に達しており、雇用労働者のほぼ半数が少なくとも1年に1回は欠勤したことになる(注7)

APICIL調査(点線)が3つの調査では最も低く2021年には28%弱であるが、IFOP他調査(青線)はAyming調査とほぼ同じ水準になっている。

図表3:少なくとも1回欠勤した者の割合 (単位:%)
画像:図表3

出所、注とも図表1と同じ。

「病気休暇」の増加は社会保障会計にも影響

病気休暇の増加は、社会保障財政にも影響を与える。経済・財政省は、財政支出削減のため、病気休暇による欠勤者の日当(注8)や医療費の削減、就労支援による失業手当の削減、住宅手当の適正化などに着手している(注9)

経済・財政相によると、病気休暇の取得件数は1年で7.9%、10年で30%増加しており、2012年には640万件だったのが、2022年には880万件になった。社会保障制度から支払われる病欠者への日当は、年間160億ユーロ程度の規模になっており社会保障会計に重くのしかかっている。上院公聴会においてアタル首相は「このまま増加傾向が続けば、2027年までに年間230億ユーロの費用がかかる」との試算を公表している(注10)

政府は病気休暇の不正取得対策を行うことによって予算削減を講じたい構えだが、不正取得の現状は0.6~1%程度であると見込まれているためそれほど多くはない。病気休暇の取得増加は、政府の社会保障財政に影響を与え、単なる医学的な問題ではなく、経済財政上の問題であるとの見方がある(注11)。政府には、企業が病気休暇手当を負担するオランダやカナダの制度を参考に、制度改正を検討すべきとの指摘もある。フランスの制度は国の社会保障制度からの支給となっているため、企業が負担する場合よりも抑制が効かなくなっているのではないかと考えられている。

参考資料

(ウェブサイト最終閲覧日:2024年7月16日)

参考レート

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