【九州】(九州経済調査協会)
自動車の生産停止が響くも輸出は上昇、消費は物価高が響く
地域シンクタンク・モニター定例調査
九州の1~3月期の経済動向は、大手自動車メーカーの認証不正問題による生産停止の影響で鉱工業生産指数は悪化したものの、輸出では上昇傾向がみられたとして、モニターである九州経済調査協会は【やや好転】と判断した。4~6月期の経済動向は、生産の低下が続き、消費も物価高の影響で落ち込むとみて【悪化】とした。雇用動向は、1~3月期は有効求人倍率の低下や新規求人数の減少を理由に【やや悪化】としたが、4~6期は人手不足感が強まるとみて【やや好転】とした。
<経済動向>
半導体関連の生産は好調に推移
九州地域のモニターは1~3月期の地域経済について「大手自動車メーカーの認証不正問題による自動車の生産停止による影響はみられるものの、景況や輸出などの面では上昇傾向が見られた」ことから判断を【やや好転】とした。
鉱工業生産指数は前期比マイナス3.6%と2期ぶりに低下した。半導体関連が堅調な推移を示した一方、認証不正問題による生産停止の影響で自動車関連の生産指数が大幅に低下したことが、全体を押し下げる要因となった。
モニター作成の「九州地域景気総合指数」をみると、1月が前月比プラス3.7%、2月が同マイナス1.5%、3月が同プラス6.1%と好調に推移した。
九州経済圏(九州・沖縄・山口)からの当期の輸出額は前年比プラス15.5%で、14期連続で増加した。前期に引き続き、自動車(前年同期比プラス31.1%)、半導体等電子部品(同プラス29.7%)、半導体等製造装置(同プラス18.9%)など九州の主力産業で特に好調な推移が続いている。
鉱工業生産指数が3カ月ぶりに低下
4~6月期の見通しについては、景気判断や観光関連、生産の指数の動きをもとに【悪化】と判断した。
4月の鉱工業生産指数は前月比マイナス1.3%で、3カ月ぶりに低下している。自動車の生産停止が指数を大きく引き下げている。
消費現場のマインドを示す「景気ウォッチャー調査」の現状判断DIをみると、4月が51.5、5月が48.2となっている。また5月の先行きDIは48.2と、5月以降は節目となる50を下回り見通しが悪化している。悪化の要因としては、「コロナ禍からの経済活動の回復が一服したことに加え、物価高騰の影響を強く感じているとの声が散見される」という。
モニター作成の宿泊稼働指数をみると、4月は前月比マイナス15.3ポイント、5月は同プラス7.3ポイントとなっている。
<雇用動向>
パートタイムの新規求人も3期連続で減少
雇用の実績(1~3月期)について、モニターは有効求人倍率や新規求人数、完全失業率が若干の悪化傾向にあることを理由に【やや悪化】と判断した。当期の有効求人倍率は1.24倍で、前期から0.01ポイント低下。新規求人数は前期比マイナス5.1%で、4期連続で減少となった。パートタイムに限ってみても、同マイナス6.5%と3期連続で減少している。
一方、4~6月期の見通しについては「今期よりも人手不足で推移する」とみて【やや好転】と判断している。
日銀短観(3月調査)の6月時点の先行き雇用人員判断DIは、前期比2ポイント低下してマイナス45の「不足」超。業種別にみると、製造業がマイナス30(前期比4ポイント低下)、非製造業がマイナス53(同2ポイント低下)となっている。