【近畿】(アジア太平洋研究所)
好不調の景気指標が混在。中小の7割強が賃上げを実施予定

地域シンクタンク・モニター定例調査

近畿の1~3月期の経済動向は、家計部門では緩やかに持ち直しつつあるが、生産活動では自動車の大幅な減産で弱い動きとなっており、モニターであるアジア太平洋研究所は、全体として【横ばい】と判断した。4~6月期の見通しも、統計で好不調の結果が混在していることなどから【横ばい】とした。雇用動向は、1~3月期実績については、雇用指標がやや悪化したものの、依然として人手不足感が強いため【横ばい】とした。4~6月期見通しは、求人減などにより【やや悪化】としている。関西経済連合会・大阪商工会議所の調査によると、中小企業の7割強が賃上げを実施予定。大阪府の調査では、府内の労働組合が春闘で妥結した賃上げ率は4.82%と前年(3.62%)を上回った。

<経済動向>

自動車の大幅な減産で生産活動は弱い動き

1~3月期について家計部門の動向をみると、一部に弱い動きも見られるが緩やかに持ち直しつつある。大型小売店販売、センチメント、所得、雇用など多くの指標で回復ないし持ち直しの動きとなっている。

企業部門は足踏みの状況が続いている。生産は自動車工業の大幅減産で弱い動きとなっている。設備投資計画は、非製造業で前年の反動が見られるなど、全国に比べてやや控えめとなっている。

輸出・輸入ともに底打ちの兆し

景況感について日銀短観(3月)をみると、業況判断DIは9で前期から2ポイント低下した。悪化は2期ぶり。製造業では、輸送用機械、鉄鋼など自動車関連業種で悪化が目立った。非製造業では対事業所サービスや物品賃貸などが悪化となった。

関西経済連合会・大阪商工会議所の「経営・経済動向調査」をみると、1~3月期の自社業況BSIが3.5、国内景気BSIが9.2でいずれも4四半期連続のプラスだが、前期からは自社業況が13.4ポイント悪化、国内景気が6.0ポイント悪化している。

財貿易は輸出・輸入ともに底打ちの兆しが見られる。輸出は対中国向けが持ち直してきていることを背景に4四半期ぶりの前年比プラスとなった。インバウンド需要は順調に回復。関西国際空港経由の外国人入国者数、免税売上高などは増加傾向が続いている。

これらを勘案し、モニターは「足踏み状況から緩やかな持ち直しに向かう局面にある」として1~3月期の判断を【横ばい】とした。

生産は上方修正も、景気ウォッチャー判断が低下

4~6月期の見通しについても、モニターは「足元の統計は好不調の結果が混在している」として、【横ばい】と判断した。

4月の鉱工業生産指数は99.8で、前月から4.5%上昇している。上昇は2カ月連続。近畿経済産業局は生産の基調判断を「底堅い動き」とし、前月の「弱含み」から上方修正している。

5月の景気ウォッチャー現状判断DIは45.7で、前月から2.4ポイント低下している。景気判断の分岐点である「50」を2カ月連続で下回った。先行き判断DIは45.1とさらに低下しており、モニターは「物価やコストの上昇に対する警戒感が、悪影響を与えている」とみている。

関西経済連合会・大阪商工会議所「経営・経済動向調査」によると、4~6月期の自社業況判断BSIは1.5で、前回調査(3.5)から小幅な動きとなっている。

5月の貿易は輸出入ともに前年比増加となった。好調な対中国に加え、対欧米が増加に転じた影響で輸出は2カ月ぶりの前年比増加に転じた。輸入は対アジアが堅調に推移したため、2カ月連続で増加した。

<雇用動向>

来期は幅広い業種で求人が減少

1~3月期の雇用実績について、失業率は上昇したものの、依然として人手不足感が強いことから【横ばい】と判断した。

雇用統計をみると、有効求人倍率は1.16倍で前期から0.01ポイント低下、新規求人倍率は2.28倍で前期から0.06ポイント上昇している。完全失業率(モニターによる季節調整値)は3.0%で、前期から0.2ポイント上昇している。

関西経済連合会・大阪商工会議所「経営・経済動向調査」における1~3月期の雇用判断BSIはマイナス37.6の「不足」超で前期(マイナス34.0)を上回る不足超過幅となった。日銀短観(3月調査)によると、雇用人員判断DIはマイナス31で、前回12月調査から1ポイント低下している。

4~6月期の雇用の見通しについては、「求人数の減少が大きく、総じて労働需要の動きが低調」とみて【やや悪化】と判断している。

4月の有効求人倍率は1.15倍で、前月比マイナス0.02ポイントと3カ月ぶりに低下した。有効求人数は同マイナス2.3%、有効求職者数は同マイナス0.7%で、いずれも2カ月連続で減少している。府県別でみると、滋賀県を除いたすべての府県で有効求人倍率が3月から低下している。

新規求人倍率をみると、4月は2.20倍で前月比0.18ポイントと大きく低下した。新規求人数は同マイナス4.6%、新規求職者数は同プラス3.0%となっている。新規求人数(原数値)を産業別にみると、建設業(前年同月比マイナス11.6%)、卸売業・小売業(同マイナス11.1%)、製造業(同マイナス9.7%)、宿泊業・飲食サービス業(同マイナス8.2%)などで減少している。

中小企業の7割強が賃上げを実施

関西経済連合会・大阪商工会議所「経営・経済動向調査」において2024年の賃上げ予定を尋ねたところ、中小企業の72.4%が「賃上げを実施予定」と回答した。また、賃上げ実施予定企業のうち、中小企業では61.3%が「業績改善はないが賃上げを実施」と回答している。

同調査において2024年に賃上げを実施予定の企業に賃上げ率を尋ねたところ、未定を除くと「3%以上4%未満」が21.1%で最多となった。次いで「2%以上3%未満」が15.7% 。

なお、大阪府商工労働部がまとめた今年の府内労働組合の春季賃上げの妥結状況等によると、妥結額が1万4,578円(前年1万792円)、賃上げ率が4.82%(前年3.62%)となっている。