ビジネス・レーバー・トレンド2023年5月号
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- <お知らせ>2022年5月号からデジタル提供に移行しました。
日本の人事制度の強みを今後も活かすために
DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展や働き方改革、人材獲得競争の激化などを背景に、「ジョブ型雇用」への改革論議なども含め、日本企業の人事制度や雇用システムの見直しに対する関心が高まっている。これまで日本企業が強みとしてきた人材育成や労使コミュニケーションなどの機能を残しつつ、新たな環境に適応した人事・賃金制度はどのようにつくりあげていったらよいのだろうか。本号では、日本企業の労使関係に精通する研究者と企業の人事制度担当者が参加した労働政策フォーラムの内容を中心に、会社も労働者も納得する制度構築に向けた道筋を探る。
目次
労働政策フォーラム
日本の人事制度・賃金制度「改革」
2023年2月に開いた労働政策フォーラムでは、第45回(2022年度)労働関係図書優秀賞に、梅崎修氏の『日本のキャリア形成と労使関係――調査の労働経済学』(慶應義塾大学出版会2021年12月刊)と青木宏之氏の『日本の経営・労働システム――鉄鋼業における歴史的展開』(ナカニシヤ出版2022年3月刊)が選ばれたことを記念し、両氏に記念講演してもらうとともに、経営戦略の一環として人事・賃金制度の改定を実施・予定している企業の事例をふまえ、制度改革するうえでの従業員の納得性の高め方や管理職の今後の役割などについて議論した。(各報告およびパネルディスカッションの概要は調査部で再構成したものを掲載している。)
(※講師の所属・肩書きは開催当時のもの)
【記念講演(1)】
【記念講演(2)】
【コメント】
【事例紹介(1)】
【事例紹介(2)】
「ジョブ型」と「キャリア自律」のリアルケース ――個の“らしさ”を解放する新人事制度
【パネルディスカッション】
政府、労使の『ジョブ型雇用』に対するスタンス
スペシャルトピック
注目度の高い国内のトピックスを、より詳しく紹介します。
- 地域間格差の是正を目指して最低賃金のランクを4区分から3区分に変更 ――中央最低賃金審議会が報告を取りまとめ
- 青森、秋田、岩手の3県で年間所定休日に関する労働協約を地域的拡張 ――UAゼンセン加盟労組の家電量販店2社
国内トピックス
行政、企業、労働組合などの最新動向を、政策課題担当の調査員がわかりやすく紹介します。
- 一般労働者の月額賃金における男女格差が2年連続で縮小 ――厚生労働省「2022年賃金構造基本統計調査」
- 物価上昇への対応などを理由に、中小企業の6割で賃上げを実施予定 ――日本商工会議所・東京商工会議所の「最低賃金および中小企業の賃金・雇用に関する調査」
- 男性育休取得に向けた施策を行う企業のほうが高い育休取得率 ――大企業での男性育休公表義務付け前に厚生労働省がイベントを開催
地域シンクタンク・モニター定例調査
各地域のシンクタンクのモニターに、地域経済や地域雇用の動向などについて、定期的に調査を実施しています。
[調査結果の全体概況]
[各地域の調査結果]
- 【北海道】全国旅行支援で国内観光客が大幅増
- 【秋田・山形】景気動向調査の結果や海外情勢から、経済動向の見通しは秋田・山形ともにやや悪化の見込み
- 【岩手】公務や医療・福祉で求人が大幅増
- 【宮城】企業の収益環境の悪化で労働需要の持ち直しが鈍化
- 【福島】来期は製造業・非製造業ともに人手不足感が強まる見通し
- 【茨城】仕入れ価格の上昇を価格転嫁する動きが製造業を中心に進むも、転嫁率の向上が課題
- 【北陸】業種・規模問わず人手不足の状況が続く
- 【東海】離職防止のために賃上げの実施やインフレ手当検討の動き
- 【近畿】雇用人員の過不足判断は「不足」超の状況が続く
- 【中国】求人が対面サービスや製造業で増加し、資材高騰の影響から建設業で減少
- 【四国】原材料価格の上昇などを背景に企業業績は足踏み
- 【九州】好調が続いた生産活動が調整局面に転じる
フォーカス
フランスの失業保険制度
フランスの失業保険制度は、時代ごとの雇用情勢と政治・経済を反映する歴史をたどり、その性格は大きく変化している。高い失業率が続いたため、手厚い給付水準の一方で、失業者に積極的な求職活動を義務づけ、早期再就職を促す理念を基本に据える制度になっていった。特に2017年以降のマクロン政権下で、労働市場の流動化を促す改革が矢継ぎ早に行われている。
そこで今回は、現地の情勢に詳しい有識者に2回の連載でフランスの失業保険制度の現状と制度改革の議論について寄稿して頂いた。連載第1回では、まず失業保険制度の改革の歴史を概観する。第2回では、制度の管理運営を担うPôle emploi(雇用センター)の組織概要と役割を紹介する。その上で、労使自治を主軸とする社会保険の原則と労働者保護のための普遍的な制度としての失業保険という理念的な対立関係を考察し、最近公表された失業保険制度改革の影響に関する実証研究を紹介する。最後に、日本の雇用保険とフランスの失業保険の比較の難しさについて触れる。(海外情報担当)
海外労働事情
海外情報を担当する調査員が、欧米・アジアを中心に、労働市場・賃金動向・職業紹介・職業訓練・労使関係など様々な視点から最新事情を紹介します。
- アメリカ
- ストライキが増加傾向 ―2022年労働統計局集計、労組組織率は低下続く
- ドイツ①
- 男女賃金格差18% ―格差をめぐる最近の動向
- ドイツ②
- 2023年の労働分野における主な法改正
- 中国①
- 定年後の再就職と政府の支援策
- 中国②
- 政府による女性労働権益保護の強化
- 韓国①
- 雇用労働部、労働時間制度改編案を発表
- 韓国②
- 労働時間改編案を巡る論争 ―政府は見直しの検討を開始
- ILO
- 「社会正義のためのグローバル連合」新設に向けた動き ―ILO事務局長構想
ちょっと気になるデータ
最近公表された公的統計のなかから、ちょっと気になるデータを統計解析担当の調査員がピックアップし、わかりやすく紹介します。(統計解析担当)
2023年4月25日掲載