【東海】離職防止のために賃上げの実施やインフレ手当検討の動き

地域シンクタンク・モニター調査

10~12月期の東海地域の経済は、乗用車販売台数が6四半期ぶりに前年同期を上回るなど、持ち直しの動きがみられることから【やや好転】となった。1~3月期の見通しは、総じて持ち直しているものの、物価高騰が影響するとみて【横ばい】と判断した。10~12月期の雇用は有効求人倍率の8期連続上昇や完全失業率の改善をうけて【やや好転】、1~3月期の雇用見通しは、モニターが実施した調査での従業員数の過不足判断をもとに【横ばい】とそれぞれ判断している。人手不足の状況が続くなかで、離職防止を目的に賃上げやインフレ手当の支給を検討する動きもある。

<経済動向>

個人消費が持ち直したほか輸出も好調に推移

東海財務局の「法人企業統計調査」によれば、東海4県(静岡県含む)の設備投資額は前年同期比マイナス0.1%で、ほぼ横ばいだった。業種別にみると、製造業は5四半期連続で、非製造業は2四半期連続で前年同期を下回った。

個人消費は持ち直している。中部経済産業局管内5県(愛知県、岐阜県、三重県、富山県、石川県)の当期の販売額をみると、ドラッグストア(前年同期比プラス7.7%)、百貨店(同プラス4.9%)、スーパー(同プラス2.0%)コンビニ(同プラス1.4%)、ホームセンター(同プラス0.8%)、家電大型専門店(同プラス0.1%)のいずれもプラスとなっている。

東海3県の当期の乗用車販売台数は、前年同期比プラス7.2%で6四半期ぶりに前年同期を上回った。

輸出をみると、名古屋税関管内の輸出通関額(円ベース)は10月が前年同期比プラス26.1%、11月が同プラス16.2%、12月が同プラス7.5%とプラスで推移している。

東海地域のモニターは10~12月期の地域経済について、「原材料高や急激な円安進行、部品調達難、ロシアのウクライナ侵攻による影響等が引き続き懸念される」ものの、「持ち直している」として【やや好転】と判断した。

総じて持ち直すも物価高騰が影響する見通し

1~3月期を分野別にみると、中部経済産業局管内5県の大型小売店販売額(1月)は、ホームセンター(前年同期比マイナス3.4%)と家電大型専門店(同マイナス3.1%)は減少となったが、百貨店(同プラス15.8%)、ドラッグストア(同プラス3.3%)、スーパー(同プラス1.6%)、コンビニ(同プラス0.7%)は増加している。

ただしモニターが作成するOKB景況指数(3月期)をみると、個人消費はマイナス19.4で前期(マイナス15.7)から下落している。

設備投資は、東海財務局の法人企業景気予測調査によれば増加見込みだが、伸び幅は縮小している。規模別にみると、大企業は増加見込みだが中堅企業、中小企業は減少見込みとなっている。

生産については、持ち直しているが一部弱い動きがみられる。1月の鉱工業生産指数をみると、前月比マイナス5.0%となっている。主要業種では電気機械工業がわずかに上昇したものの、生産用機械工業、汎用・業務用機械工業、電子部品・デバイス工業、輸送機械工業はいずれも下落している。

こうしたことからモニターは、「総じて景気は持ち直している」ものの、「物価高騰の影響が出ている」として1~3月期の見通しを【横ばい】と判断した。

<雇用動向>

有効求人倍率は8期連続で上昇

雇用の実績(10~12月期)についてモニターは、「有効求人倍率は8期連続で上昇」「新規求人数(原数値)は前年同月比でプラス」「完全失業率(原数値)は2期連続で低下」といずれも好調なことから【やや好転】と判断した。

1~3月期の判断は、「東海財務局の『法人企業景気予測調査』によれば、3月末時点での従業員数判断BSIは『不足気味』超で、3期連続で『不足気味』超幅が拡大している」ものの、「1月の有効求人倍率は前月から0.02ポイント低下の1.42倍」と横ばいであることから【横ばい】とした。

なお、モニター作成のOKB景況指数(3月期)では、雇用(「不足」-「過剰」)は59.2(12月調査比プラス5.7)で不足超幅が拡大している。モニターは「全般的に人手不足の状況が続いており、採用ニーズは高い。社員の離職を防ぐために賃上げやインフレ手当を検討する動きもある」こともあわせて報告した。

(調査部)