「社会正義のためのグローバル連合」新設に向けた動き
 ―ILO事務局長構想

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  • 国別労働トピック:2023年4月

2022年10月1日に第11代国際労働機関(ILO)事務局長に就任したジルベール・F・ウングボは、初めての理事会で「社会正義のためのグローバル連合体」を設置する必要があるとの構想を発表した。同氏の構想に基づき、ILOは従来よりも幅広い連携の枠組みである「社会正義のためのグローバル連合体」を発足させるため、第347回理事会(2023年3月開催)、第111回総会(2023年6月開催)で具体的な検討を始める。

社会正義のためのグローバル連合が必要

2022年10月31日から11月10日にかけて、スイス・ジュネーブにおいて開催された第346回ILO理事会の中で、ウングボ事務局長は「世界では現在、デジタル経済の発展や新型コロナウイルス感染症ワクチンの迅速な製造といった科学技術の進歩や経済成長が見られる一方で、国内外の格差の拡大や雇用の不安定化、社会的保護の欠如などの様々な課題が山積している」と話した。その上で、「世界は新たな社会契約を必要としており、1919年ILO創設当時の価値観は今日でも同様に重要である」との認識を改めて強調した後、「環境を保護しながら、共通の価値観である平和、社会正義、公平な経済成長、連帯をはじめとするILO創設時の価値観を守るために全力を尽くすことを約束する」と就任時の決意表明を行った。

ウングボ事務局長はまた、「デジタル経済やデジタル・プラットフォームの出現、グリーン・ジョブへの移行、サプライチェーンといった多くの変化に直面する状況下で社会正義を実現するには、今後ILOだけでなく国際機関や市民社会などのあらゆる関係者が参加する『社会正義のためのグローバル連合(Global Coalition for Social Justice)』を設置する必要がある」と語った。

同氏の構想を具体化するため、ILOは従来よりも幅広い連携の枠組みである「社会正義のためのグローバル連合体」の発足に向けて、第347回理事会(2023年3月開催)、第111回総会(2023年6月開催)で具体的な検討を行う。同連合体は、より広い多国間レベルで政策的一貫性を保ちつつ、開発協力および金融・貿易・投資協定などの枠組みとして機能し、社会・経済の機能の向上および貧困・不平等・社会的緊張を軽減させることを目指す。

初のアフリカ出身事務局長

トーゴ出身のジルベール・F・ウングボ事務局長は、2022年3月開催の第344回ILO理事会において第11代ILO事務局長に選ばれ、同年10月1日に就任した。

同氏は、2008~2012年にトーゴ首相を務めた後、2013~2017年にILO事務局次長(フィールド活動・パートナーシップ担当)を務め、2017年に国際農業開発基金(IFAD)第6代総裁に任命された。また、国連水関連機関調整委員会(UN-water)議長も務め、2021年には国際塩水農業研究センター(ICBA)理事、自然資源ガバナンス・インスティチュート理事長にも就任している。ILO初のアフリカ出身の事務局長である。

参考文献

  • ILO:(02/11/2022) 346th ILO Governing Body The world needs a new social contract says ILO Director-General
  • ILO:(31/10/2022) Director-General’s opening address to the 346th Session of the ILO Governing Body

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