定年後の再就職と政府の支援策

カテゴリー:高齢者雇用

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  • 国別労働トピック:2023年4月

中国では、高齢化社会の進展に伴い、高齢者の再就職が注目されている。平均寿命や健康寿命の延伸とともに定年後の過ごし方に変化が生じ、再就職を通して自分の生きがいを見つけたいという人が増えているためだ。これに呼応し、政府の支援や法整備も進んでいる。

高齢化社会への突入

中国の高齢化が進展しつつある。「第7回 国勢調査(注1)」の結果によると、2020年11月1日時点の60歳以上の高齢者人口は2億6400万人を超え、人口の18.7%を占めた。そのうち60~69歳の低齢高齢者(注2)は約1億4800万人で、高齢者人口の55.83%を占めている。2035年には、60歳以上の高齢者の総数が4億人を超え、人口の30%以上を占める「超高齢化」の段階に入ると予想されている(注3)

なお、60歳以上の人口のうち、高学歴者は13.9%(前年比4.98ポイント増)を占める。

再就職の意欲の高まり

現在、定年退職年齢は、男性が一律に定められた満60歳で、女性幹部が55歳、一般従業員が50歳である。

大手求人サイト「前程無憂」が、2022年10月に発表した「2022年版 高齢者の定年後再就職に関する調査報告書(注4)」によると、高齢者の就業意欲は年々高まっており、68%が定年後の再就職に強い意欲を持っていた。再就職の動機は、「個人的・社会的価値を求めるため」が46.7%、「家族のために収入を得ることでより高いレベルの消費ニーズを満たすため」が34.3%、「スキルを活かしてキャリアを追求するため」が19%という結果になっている。

「再就職時の給料の主な支出」については、「日常生活費(37.7%)」「老後のための貯蓄(21.3%)」「子どもの生活費の分担(18.3%)」が上位を占める。従来の「子どもが老後を支えてくれる」という考え方には大きな変化が生じており、定年後は子どもを支援するために、高齢者が積極的もしくは消極的に働くようになってきている。また、「旅行などの娯楽費(8.3%)」、「医療費(5.3%)」も、主要な支出項目となっていた。

他方、若者たちは高齢者の再就職について、それぞれ異なる見解を持っているようである。報告書によると、親の再就職を支持するのは35.7%、逆に、親が定年後には休むべきだと考えるのは25.3%、親を心配するのは24.7%となっていた。また、高齢者の再就職が若者の就職機会を奪っていると考えるのは7.3%であった。

政府の高齢者再就職支援

中国政府は近年、高齢者の再就職支援に取り組んでいる。

2021年11月に発表した「新時代における高齢者対策強化に関する意見(注5)」によると、「学校や病院などの施設、地域の家事サービスや公共場所サービス管理などの業界において、高齢者に対する柔軟な雇用モデルを模索することが求められる。さらに、地方に高齢者人材情報バンクを設置し、働く意欲のある高齢者に対して職業紹介や職業技能訓練、イノベーションや起業に関する指導サービスを提供するよう奨励する」と明記している。

さらに、国務院は2022年2月に「『第14次五カ年計画』における国家高齢化対策事業の発展及び高齢者サービスシステムの計画(注6)」を発表し、「高齢者が引き続き役割を果たすことを奨励する」と述べている。計画では、高齢者向けの雇用サービスの強化、高齢者の社会参加の促進、高齢者向け人的資源の開発を目指すこと等が掲げられている。

2022年8月には、「中国高齢者人材網(注7)」が発足し、中国全土の高齢者人材情報データベースと人材情報サービスプラットフォームの構築が始まった。同月に発表された「国務院が老年に関する業務を強化し推進することについての進展状況報告書(注8)」では、60~69歳の高齢層の人的資源はまだ十分に開発されておらず、彼らの再就職を保障するための規制や政策の改善が必要になると指摘。高齢者が自主的に活動できるように支援するための施策も継続的に改善する必要があると提言している。

以上のように、中国政府は「高齢化に伴う働き方の変化や年金受給の開始時期の調整は、老後生活の安定につながるため、社会や高齢者の就労意識を変え、老後の不安を軽減することが必要である」として、高い就業意欲をもつ高齢者に対する労働市場の調整、定年退職年齢の見直し、年金制度の改革などの法整備を急いでいる。

参考文献

  • 中国政府網、中国人大網、人民網

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