事例紹介1 〈かなで〉における人事の取り組み

講演者
人見 誠
株式会社みずほフィナンシャルグループ 執行理事 人事業務部長
フォーラム名
第124回労働政策フォーラム「日本の人事制度・賃金制度「改革」」(2023年2月6日-9日)

現在4社が共通の人事制度を運営

みずほフィナンシャルグループは、連結従業員数6万6,000人のコングロマリットの金融グループです。うち約半分の3万4,000人がみずほ銀行で、国内従業員が約5万6,000人となっています。

現在みずほフィナンシャルグループ、みずほ銀行、みずほ信託銀行、みずほリサーチ&テクノロジーズの4社が、会社を横断して共通の人事制度で運営しています。今後、会社間の「転籍異動」を拡大する予定で、会社をまたいだ異動でも雇用関係は引き継ぐユニークな仕組みです。

事務職員については、2021年10月には職系を廃止し、今は一本化されている状況です。その他の人事の取り組みでは、柔軟な働き方への対応として、週休3日・4日制を2020年前後から実施しており、約300人が利用しています。副業も2020年から認めています。会社の承認を得る前提ですが、基本的に、われわれのビジネスに競合・コンフリクトがない社会通念上許されるものなら認めています。

狙いは、会社と社員の関係性の見直し・再構築

「かなで」の取り組みについて説明します。「かなで」とは、アルファベットの頭文字CANADE(Co-creation, Authenticity, Nurturing, Agility, Diversity, Equity & Inclusion, Engagement)を取ったもので、社員と一緒に奏でていきたいという思いを込めて、2022年5月に、グループCEOの木原が全体のコンセプトをメッセージにまとめて発信しました。人口減少、働き手の価値観の多様化など、社会環境がさまざま変わってきており、会社と社員の関係性を見直す・再構築をするタイミングに来ているのではないかということで、大きな立て付けを抜本的に見直そうと打ち出したのが、「かなで」の枠組みになります。

社員一人ひとりが、みずほというフィールドの中で「自分らしくある」ことを実現していくことを目指そうじゃないか、という考え方でまとめています。社員にフォーカスし、社員に対するメッセージ性を持って、一人ひとりが自分らしく、いろんなフィールドで活躍し認められ処遇され働きやすい、こんなグループを目指していきたい、という内容です。

みずほは、エンティティ・セグメントオーダーのビジネス戦略を採用しており、いろいろな機能をつなげて社会・お客様にいろんなソリューションを提供しています。そのためには、まずグループ共通の基盤を作ったうえで、それぞれがビジネス戦略に合った形で人事制度運営を動かしていく。それをそれぞれの会社ではなく、グループ横断で使える枠組みを整備する、ということが必要です。

脱年功序列、脱一律をうたう

「自分らしくある」ということで、脱年功序列や、脱一律をうたっています。3つ柱があるのですが、大きく言うとキャリアに関するものと、処遇に関するもの2つが働きがいに関するものです。

2024年4月での完全移行を予定している「かなで」における人事制度の骨格は、1階部分がグループ共通の枠組みで動かしていく土台(新卒採用、教育、異動、評価、給与、賞与など)となっており、2階部分が、それぞれビジネスグループで、業界・ビジネス特性をふまえて柔軟に動かしていい部分となっています。例えば、「ビジネスやエンティティを軸にした採用コース」や「ビジネスユニークな専門性の形成」「ビジネス単位で柔軟な処遇設計」などです。制度の詳細について今、労働組合に提案しているところです。

予定している制度は「ジョブ型」とは思っておらず、社内では「ジョブ型」とは呼んでいません。みずほではずっと、人事が起点になって中央集権的にいろんなことを動かしてきました。それを、自律性を持たせて、中央集権から分散させていくということを考えています。

そうしたなかで、給与制度は、シンプル化と、それぞれの役割をベースにするということ(役割グレードの導入)をめざしています。基本的には仕事が変わらなければ給与は変わりません。ただし、役割の拡大が見てとれれば、異動等がなくても上げるということです。挑戦するインセンティブが働く制度としていきます。

最後に、社員とのコミュニケーションについて紹介します。従来は組合に提案して、会社から社員に資料を配って説明するという流れでしたが、それだけでは社員にとってわかりづらいということで、いろんな形で社員と「対話」することを心がけています。具体的には、「コ・クリエイター」という、人事部員ではない他部門の社員にも手挙げ制で一緒に参画してもらい、数十人規模でプロモートする枠組みも始めています。また、社内のイントラなどにページを設けて、インタラクティブな対話により理解を深めながら、社員の意見も吸い上げ、必要なものは見直しを行うようにしています。

プロフィール

人見 誠(ひとみ・まこと)

株式会社みずほフィナンシャルグループ 執行理事 人事業務部長

1993年、現みずほ銀行入社。法人営業などを経て、2006年から15年まで持株会社みずほフィナンシャルグループにてグループの人事企画業務に従事。その後、みずほ銀行で支店長を務めた後、20年にみずほ証券人事部長、21年から現職。現在は、みずほフィナンシャルグループとみずほ銀行、みずほ信託銀行、みずほ証券を兼務し、人事制度・運営全体の企画、人事システム・事務を担当している。