【宮城】企業の収益環境の悪化で労働需要の持ち直しが鈍化

地域シンクタンク・モニター調査

宮城県の経済動向について、10~12月期実績は、政府の観光支援策等でサービス消費が持ち直し、教養娯楽サービスや外食などが好調だったことから【やや好転】となった。1~3月期の見通しは、経済活動が正常化に向かっているものの、電気料金の上昇で製造業を中心にコスト増となっていることから【横ばい】。雇用については、10~12月期実績は企業の収益環境が悪化し、労働需要の持ち直しが鈍っていることを理由に【横ばい】とし、1~3月期見通しも、モニターが実施した雇用動向の調査で小幅な動きとなっていることから【横ばい】としている。

<経済動向>

政府の観光支援策等でサービス消費が持ち直し

モニターは10~12月期の地域経済について、「輸入インフレのほか海外経済の減速による需要減少などに下押しされた」ものの、「新型コロナの経済活動への影響の緩和や、政府の観光支援策の効果などからサービス消費が持ち直した」として【やや好転】と判断した。

判断理由を詳しくみていくと、生産は、供給制約の緩和により輸送機械などで挽回生産がみられたものの、海外での急ピッチの金融引き締めにともなう設備投資の減退により半導体関連の生産が減少するなど、全体として弱含みの動きがみられた。

個人消費は、記録的な物価上昇にともない、値上げ幅の大きい食料や光熱・水道など生活必需品を中心に節約志向が強まったものの、新型コロナの影響が和らぎ、政府の観光支援策の効果などから教養娯楽サービスや外食などが好調で、一部に弱い動きがあるものの総じて緩やかな持ち直しの動きとなった。

企業の景況感は、製造業や建設業に弱めの動きがみられるものの、全体としては持ち直しの動きとなっている。

電気料金の上昇で製造業を中心にコスト増

1~3月期の見通しについてモニターは、「経済活動が正常化に向かう一方で、海外経済の減速や、原材料・エネルギー価格の高止まりで企業・家計の持ち直しの動きが鈍化する見込み」として、判断は【横ばい】を選択している。

モニター実施の「県内企業動向調査(12月調査)」によると、1~3月期の見通しは県内景気DIが前期比10ポイント低下のマイナス24と、回復に足踏み感がうかがわれる。売上高DIはマイナス11で同10ポイント低下、経常損益DIはマイナス16で同11ポイント低下となっている。

モニターは「東北電力管内での電力平均価格は、足元では旧一般電力会社の全10社で2番目に高く、電力投入量の多い製造業などでコスト増の要因となっている」とコメントしている。

<雇用動向>

賃金増で需要増に対応する人員を確保できず

10~12月期の雇用をみると、有効求人倍率は1.41倍で前期から0.03ポイント上昇した。

上昇の要因についてモニターは、「有効求職者数が継続的に減少していることによるもので、有効求人数の増加ペースはやや鈍化している」と指摘している。

新規求人数は前年同期比で1.8%増加したものの、建設業(前年同期比マイナス10.7%)では大幅に減少しているほか、運輸業(同マイナス3.9%)や宿泊・飲食サービス(同マイナス2.8%)などでは需要増加による人手不足にもかかわらず求人の減少がみられるなど、収益環境の悪化により労働需要の持ち直しは総じて鈍いものとなっている。

その背景についてモニターは、「宮城県の最低賃金は10月に過去最大の上げ幅(30円)となるなど処遇改善にかかるコストが大きく上昇した」ことから、「宿泊・飲食サービスなど一部では政府の支援策によって増加した需要に対応する人員確保ができず、営業時間や稼働率を縮減して機会損失が生じているところもある」としている。

モニター実施の県内企業動向調査(12月実施)をみると、10~12月期の雇用DI(「過剰」-「不足」)は前期比10ポイント低下のマイナス41と不足超幅が拡大している。このうち非製造業はマイナス48で、そのなかでも小売業・サービス業はマイナス50で、人手不足感が非常に強まっている。

なお、同調査によると冬季賞与の支給予定は「増額」が11.5%で前年比1.1ポイント上昇、「同水準」が同65.8%で3.7ポイント上昇しており、モニターは「支給状況はおおむね改善している」とみている。

こうしたことを総合的に踏まえてモニターは、10~12月期の雇用を【横ばい】と判断した。

雇用の過不足感は小幅な動きの見込み

モニターが実施した同調査(12月実施)によると、県内企業の1~3月期の雇用DI見通し(「過剰」-「不足」)はマイナス40で、前期比1ポイント上昇と小幅な動きにとどまっており、モニターは1~3月期の見通しについても【横ばい】と予測した。

(調査部)