【近畿】雇用人員の過不足判断は「不足」超の状況が続く

地域シンクタンク・モニター調査

近畿の10~12月期の経済動向は、個人消費で堅調な回復がみられたことから【やや好転】となった。1~3月期の見通しは、中国向けの輸出に弱さがみられ、生産活動も停滞がみられることから【やや悪化】の見込み。雇用指標は、10~12月期実績については、日銀短観で「不足」超の状況から動きがみられないことなどから【横ばい】としている。1~3月期見通しも、持ち直しの動きが継続するとみて【横ばい】としている。

<経済動向>

行動制限や水際対策の緩和で百貨店が好調

10~12月期について、近畿地域の家計部門の動向をみると、大型小売店販売額は1兆363億円で前年同期比プラス5.5%となり、5四半期連続で前年を上回った。内訳をみると、百貨店が同プラス10.0%と大きく増えた。行動制限や水際対策の緩和により、インバウンドを含む客足が回復したほか、宝飾品などの高額商品や衣料品が好調だった。そのほか、スーパーは同プラス2.6%、コンビニエンスストアは同プラス14.3%となっている。

企業部門の動向をみると、経済活動が正常化に向かっていることから、おおむね緩やかに持ち直した。景況感は非製造業を中心に持ち直しており、設備投資計画も積極的な姿勢がうかがえる。

短観では対個人サービスや宿泊・飲食サービスが大幅に改善

景況感については、日銀短観(12月)をみると、業況判断DIは5で前期から2ポイント上昇し、5四半期連続でプラス圏を維持した。規模別にみても、大企業が14(前回調査比プラス3ポイント)、中堅企業が7(同プラス1ポイント)、中小企業が0(同プラス3ポイント)と、いずれも上昇している。中小企業は14四半期ぶりにマイナス圏を抜け出した。業種別では製造業が1(同変化なし)、非製造業が9(同プラス5ポイント)だった。非製造業のなかでも、対個人サービスが21(同プラス21ポイント)、宿泊・飲食サービスが0(同プラス17ポイント)と顕著に改善しており、モニターはその理由を「全国旅行支援の影響」とみている。

大阪商工会議所・関西経済連合会「経営・経済動向調査」(調査期間11月11日~25日)によると、自社業況BSIは13.6で前期比プラス17.7ポイントとなり、4四半期ぶりにプラスに転じた。業種別では製造業が14.6、非製造業が13.1で、いずれもプラスに転じている。規模別では、大企業が22.3で2018年3月調査以来の約5年ぶりの高水準となっている。中小企業も7.0で4四半期ぶりにプラスに転じた。

輸出額は8四半期連続で前年比増

輸出の動向をみると、関西の輸出額は5兆5,405億円で、前年同期比プラス28.9%となり8四半期連続で前年を上回った。地域別にみると、米国向けは堅調だが、EU向けはやや伸び悩み、中国向けは停滞した。

設備投資計画については、日銀短観(12月)によると、2022年度は前年度比プラス15.9%と大幅に増えている。9月調査時点(前年度比プラス17.6%)からやや下方修正となったものの、コロナ禍で手控えられていた2021年度実績(同マイナス8.9%)からの反動で、企業は設備投資に積極的となっている。業種別にみると、製造業が同プラス24.0%、非製造業が同プラス10.6%と、特に製造業で伸びている。

以上を勘案し、モニターは「内需を中心に幅広い項目で堅調な回復がみられた」ことから、「前期に続き緩やかに持ち直した」として、10~12月期の判断を【やや好転】とした。

マンションの新規発売戸数が30年ぶりの低水準に

1~3月期の見通しについては、モニターは「内需関連では緩やかに回復基調がみられ、景況感も足下、先行きとも改善している」ものの、「外需関連では中国向けの輸出に弱さがみられ、生産は大幅減産で弱い動きが続いている」として【やや悪化】と判断した。

1月の大型小売店販売額は3,197億円で前年同月比プラス7.3%と16カ月連続で増加となった。百貨店では気温の低下により冬物衣料品の需要が高まったことに加え、高額品の売り上げも引き続き好調だった。

2月の新規物件マンション契約率(売却戸数/販売戸数、モニター推計の季節調整値)は47.4%で、前月比マイナス25.5ポイントと大幅に低下するとともに、好不況の境目とされる70%を7カ月ぶりに下回った。新規発売戸数(原数値)は833戸で、2月としては1993年以来の低水準となっている。

景況感をみると、2月の景気ウォッチャー調査の現状判断DIは53.6で、前月から3.2ポイント上昇した。インバウンド需要の増加が続いていることに加え、感染状況の落ち着きもあり、ホテルや百貨店などを中心に景況感が改善した。先行き判断DIは52.7で、前月から4.1ポイント上昇している。

貿易収支は、2月はプラス2,527億円で2カ月ぶりの黒字となった(前月はマイナス2,805億円)。1月の赤字は中国の春節の影響を受けたもので、1、2月をならしてみれば、赤字となっている。

2月の貿易収支を地域別にみると、対アジアはプラス2,973億円で2カ月ぶりの黒字となっている。うち、対中貿易収支はプラス276億円と12カ月ぶりの黒字だが、春節の影響を受けた1月(マイナス2,689億円)の赤字額をカバーできていない。対中輸出では非鉄金属、コンデンサー等が減少につながった。対米貿易収支はプラス1,607億円の黒字、対EU貿易収支はプラス261億円で8カ月連続の黒字となっている。

生産動向をみると、1月の鉱工業生産指数(速報値)は89.5で、前月比マイナス5.2%と大きく低下した。業種別にみると、特に生産用機械(前月比マイナス25.9%)、輸送機械(同マイナス11.3%)、電気・情報通信機械(同マイナス6.5%)で低下が目立つ。

<雇用動向>

サービス業を中心に強い人手不足感

10~12月期の雇用実績について、モニターは「雇用環境は改善が継続しているものの、ペースは鈍化している」として【横ばい】と判断した。

雇用統計をみると、「有効求人倍率は1.22倍で、前期から0.02ポイント上昇」「新規求人倍率は2.33倍で前期から0.07ポイント上昇」と改善がみられる一方で、「完全失業率(モニターによる季節調整値)は2.9%で前期から0.2ポイント上昇」となっている。

日銀短観(12月調査)によると、雇用人員判断指数DI(「過剰」-「不足」)はマイナス26で前回調査から変化がなかった。業種別では製造業がマイナス19、非製造業がマイナス33で、特に飲食・宿泊をはじめとする非製造業で不足感が強い。

1~3月期の雇用の見通しについては、失業率が低下するとともに、サービス業を中心とする人手不足感が強いことから、モニターは「求人が大きく低下するとは考えにくい」とみている。また、大企業で賃金のベースアップ回答が相次ぐ今次春闘について、「中堅・中小企業への波及効果は不透明」ではあるものの、「政府による後押しもあり雇用情勢は持ち直しの動きを継続する」とみて、【横ばい】と判断している。

(調査部)