ビジネス・レーバー・トレンド2024年11月号
毎月25日更新
人手不足を乗り切る企業
少子高齢化で労働力供給に制約があるなか、人手不足がますます顕在化している。日本銀行の「全国企業短期経済観測調査」(短観)の雇用人員判断では、雇用が「不足」の企業割合が「過剰」の企業割合を大幅に上回る状況が続いており、有効求人倍率の全国平均も1.2倍を超える水準が1年以上も継続している。こうした状況のなかで、人手不足を乗り切ろうと、人材を惹きつけ、働く人の意欲を向上させるために、処遇改善や働きやすい職場づくり、仕事の遂行体制の見直しなどに取り組む企業もみられる。本号では、調査部で行った企業ヒアリング結果など、人手不足の解消に向けたさまざまな取り組みを紹介する。
目次
企業ヒアリング
調査部では、人材の獲得競争が激しくなるなか、処遇や勤務制度の見直し、工夫した働き方の構築などにより、人材確保に取り組む企業をヒアリングした。斬新な輸送方式を取り入れる運輸業の朝日通商(香川県高松市)、勤務制度を工夫した介護事業者のウェルフェア三重(三重県伊勢市)、社員に高い時給を設定するコストコホールセールジャパン(千葉県木更津市)、育成型の採用にも取り組むDX支援企業のメンバーズ(東京都中央区)の4社の事例を掲載する。(記事は企業名の五十音順に掲載)
- 労働時間規制を守る長距離輸送方式として「リレー輸送」を構築 ――朝日通商の働き方改革の取り組み
- 日勤週休3日制度・夜勤専従制度の分業制を導入することで人手不足を解消 ――ウェルフェア三重の働き方改革の取り組み
- 全国一律で時給額を高く設定することで人材確保に成功 ――コストコホールセールジャパンの取り組み
- 育成型採用と働き方改革 ――メンバーズの取り組み
政府白書
政府調査
地域シンクタンク・モニター特別調査
JILPTが年4回実施している地域シンクタンク・モニター調査では、9月に実施した特別調査で、各地域における倒産の最新状況を尋ねた。
(定例調査の結果については本号の後段に掲載)
スペシャルトピック
注目度の高い国内のトピックスを、より詳しく紹介します。
国内トピックス
行政、企業、労働組合などの最新動向を、政策課題担当の調査員がわかりやすく紹介します。
- 若年正社員の定着のために、「労働時間の短縮・有給休暇の積極的な取得奨励」を実施している事業所が大幅に増加 ――厚生労働省の2023年「若年者雇用実態調査」結果
- 昨年の年間給与は460万円で3年続けて増加 ――国税庁の2023年分「民間給与実態統計調査」結果報告
地域シンクタンク・モニター定例調査
各地域のシンクタンクのモニターに、地域経済や地域雇用の動向などについて、定期的に調査を実施しています。
<2024年第2四半期(4~6月期)実績および第3四半期(7~9月期)の見通し>
[調査結果の全体概況]
[各地域の調査結果]
- 【北海道】(北海道二十一世紀総合研究所)人手不足感が強まるなかでも、最賃引き上げで企業は新規求人に慎重な姿勢
- 【岩手】(いわぎんリサーチ&コンサルティング)販売額、公共工事は増加も自動車販売はマイナス。強い人手不足感が依然として続く
- 【宮城】(七十七リサーチ&コンサルティング)鈍い景気の回復感。非製造業では経営上の課題に「人件費の上昇」をあげる企業割合が過去最高に
- 【山形】(山形銀行やまぎん情報開発研究所)豪雨災害の影響で非製造業の景況感が悪化。賃上げ実施企業割合、賃上げ率はともに昨年から上昇
- 【福島】(とうほう地域総合研究所)大型小売の販売額はプラスも、公共投資は減少。8割弱の県内企業が賃上げを実施
- 【茨城】(常陽産業研究所)海外経済の減速、供給制約などから景況感は大きく低下。仕入価格の上昇分を転嫁している企業割合が7割弱との調査結果
- 【北陸】(北陸経済研究所)北陸新幹線の延伸で需要が持ち直す。製造業で新卒の確保が困難な状況に
- 【東海】(OKB総研)経済は堅調な状況で「横ばい」続く。夏のボーナスは6%超の増加
- 【近畿】(アジア太平洋研究所)家計、輸出入、インバウンド需要でやや好転の判断も、次期は台風・地震の影響を懸念
- 【中国】(中国地域創造研究センター)大手自動車メーカーの認証不正問題の影響で生産活動が低下。残業規制への対応でトラック運転手の求人が増加
- 【四国】(四国経済連合会)すでに景気回復・回復傾向とみる企業が67%。6割以上の企業が人手不足と回答
- 【九州】(九州経済調査協会)自動車生産停止の影響は一巡し、半導体関連の生産・輸出増加が継続。人手不足は次期のほうが強まる見通し
フォーカス
当機構の池田心豪副統括研究員はJILPTプロジェクト研究「育児・介護と働き方に関する国際比較研究」の情報収集の一環として、2024年8月21日から30日までドイツのベルリンに滞在し、父親の育児支援をしている団体や労使団体、研究機関を訪問し、仕事と家事・育児における男女平等と男性育休の関係について、ヒアリング調査を行った。本稿は、個人のヒアリングから得た興味深いエピソード等を交えて、現地の最新の事情を分かりやすく解説したものである。(海外情報担当)
海外労働事情
海外情報を担当する調査員が、欧米・アジアを中心に、労働市場・賃金動向・職業紹介・職業訓練・労使関係など様々な視点から最新事情を紹介します。
- アメリカ
- 米東海岸の港湾労組が47年ぶりに大規模スト ―6年間に61.5%の賃上げで暫定合意
- フランス
- 高年齢者の労働力率が50年ぶりの高水準に
- 中国
- 中国政府、法定退職年齢の引き上げを決定 ―70年ぶりの見直し
- 韓国
- 子育て支援3法が国会で可決 ―育児休業及び配偶者出産休暇の期間を延長
- カンボジア
- 最低賃金、2025年1月に月額208ドルへ2%引き上げ
- ILO
- 世界の高齢者人口は過去30年で倍増したが、労働力の活用不足が課題 ―国際高齢者デーでILOが分析
- OECD
- 教育部門は労働市場と連携強化しニーズに適合を ―OECD「Education at a Glance 2024」の分析から
ちょっと気になるデータ
最近公表された公的統計のなかから、ちょっと気になるデータを統計解析担当の調査員がピックアップし、わかりやすく紹介します。(統計解析担当)
2024年10月25日掲載