【北陸】(北陸経済研究所)
北陸新幹線の延伸で需要が持ち直す。製造業で新卒の確保が困難な状況に

地域シンクタンク・モニター定例調査

北陸地域の4~6月期の経済動向は、北陸新幹線の延伸が需要面のプラスとなったほか、供給面も能登半島地震からの復旧が進んで持ち直しており、モニターである北陸経済研究所は【やや好転】と判断した。7~9月期は、被災地からの食品の受注減、仕入価格の上昇、人件費や光熱費のコスト増もあり【やや悪化】。雇用動向については、人手不足の状況が継続しているとして4~6月期実績、7~9月期見通しともに【横ばい】としている。製造業では、工業系高校の進学率が上昇するなかで新卒の確保が難しくなっている。

<経済動向>

スーパー、コンビニ、ドラッグストアのいずれも堅調

北陸地域について、モニターは4~6月期の地域経済を【やや好転】と判断した。

その理由として、需要面では「地震からの復旧・復興需要や北陸新幹線の敦賀延伸効果等もみられることなどから、持ち直している」ことをあげた。

小売の動向をみると、百貨店では衣料品の動きが鈍いものの、美術品などの高額品等に動きがみられることから、前年を上回っている。スーパーマーケットでは飲食料品に動きがみられることから、前年を上回っている。コンビニエンスストアは、被災地支援者や北陸新幹線の敦賀延伸効果による観光客の来店が増加しており、米飯類や飲料等に動きがみられることから堅調。ドラッグストアは、飲食料品等に動きがみられるほか、新規出店効果もあり、拡大している。ホームセンターは、園芸用品や被災家屋の復旧需要によりDIY 用品に動きがみられることから、持ち直している。家電大型専門店販売は、エアコンや給湯器等に動きがみられることから、持ち直しの動きがみられる。

新車販売台数は、普通乗用車、小型乗用車、軽乗用車がいずれも前年を下回っており、弱含んでいる。

主要観光地の入込客数は前年を上回っているが、主要温泉地の宿泊客数は前年を下回っている。北陸新幹線の敦賀延伸や北陸応援割の効果等もあり、能登地域以外では回復しているほか、能登地域でも営業を再開する動きが一部にみられる。

生産活動は能登半島地震からの復旧が進み持ち直す

供給面は、「地震後の復旧が進んでいることなどから、持ち直しつつある」という。

業種別の動きをみると、化学は地震後の復旧が進むなかで大半を占める医薬品が回復しつつある。電子部品・デバイスは、地震後の復旧が進むなか、家電向けが弱まっているものの、スマートフォン向けが持ち直しつつあることなどから、全体では下げ止まっている。生産用機械は、半導体製造装置が持ち直しているものの、繊維機械が拡大の動きに一服感がみられるほか、金属加工機械が弱含んでいることなどから、全体では一進一退の状況にある。金属製品は、大半を占めるアルミ建材で住宅用が弱まっているものの、ビル用に持ち直しの動きがみられることから、全体では下げ止まっている。繊維は、地震後の復旧が進むなか、衣料向けが弱含んでいるものの、非衣料向けが持ち直しつつあることから、全体では緩やかに持ち直しつつある。

中小企業の景況判断はマイナス14.1の「下降」超

北陸財務局「北陸3県の法人企業景気予測調査(7~9月調査)」によれば、企業の景況判断はマイナス5.9の「下降」超で、前期から6.7ポイント悪化している。業種別にみると、製造業がマイナス13.2、非製造業はマイナス0.9で、いずれも「下降」超となっている。規模別にみると、大企業がプラス4.4、中堅企業がプラス2.6の一方、中小企業はマイナス14.1となっている。

モニターは7~9月の地域経済について「被災地からの食品の受注減、仕入価格の上昇、人件費や光熱費のコスト増が響いた。中小企業の多い北陸地域では経営環境の悪化は避けられない」として、【やや悪化】と判断した。

<雇用動向>

労働市場は全国平均を上回る「タイトな状況」

4~6月期の雇用動向について、モニターは「北陸3県の有効求人倍率は1.50倍で、前期から0.04ポイント低下している。全国平均(1.24倍)と比較すると、北陸の労働市場は引き続きタイトな状況にある」「新規求人数は4月が前年比マイナス2.8%、5月が同マイナス1.8%、6月が同マイナス11.6%となっており、マイナスで推移している」と報告したうえで、判断は【横ばい】とした。

北陸財務局「北陸3県の法人企業景気予測調査(7~9月調査)」によれば、9月末時点の従業員数判断BSIは34.7の「不足気味」超となった。業種別にみても、製造業が27.7、非製造業が39.6でいずれも「不足気味」超。規模別でも大企業が22.1、中堅企業が49.3、中小企業が35.4でいずれも「不足気味」超となっている。

モニターは7~9月期の雇用状況の見通しについて、「慢性的な人手不足からタイトな状況のまま」として判断を【横ばい】とした。

6割近くの企業で採用実績が予定枠に届かず

製造業では新卒の人材確保が厳しさを増している。石川県鉄工機電協会が6月に会員企業に実施したアンケートによると、今春の新卒採用の実績は141社で計602人と、当初計画(計879人)の68.5%にとどまった。採用実績が予定枠に届かなかった企業は6割近くにのぼる。

同協会の関係者によると、工業系高校の生徒の大学や専門学校への進学率が上昇していることで「特に高卒がいない」状況にある。県の教育委員会によると、県内公立高の工業科の進学率は、2019年の28%から2023年には38%に上昇している。

そうしたなか、製造現場では女性の採用が増加傾向にある。今春入社の602人のうち、女性は157人(26.0%)を占めている。同協会は昨年、普通科高校の女子生徒を中心に工場見学を初めて実施したほか、保護者向けの企業説明会や大学と連携した交流会を開き、ものづくり企業で働く人材の確保を後押ししている。