若年正社員の定着のために、「労働時間の短縮・有給休暇の積極的な取得奨励」を実施している事業所が大幅に増加
 ――厚生労働省の2023年「若年者雇用実態調査」結果

国内トピックス

厚生労働省が9月25日に発表した2023年「若年者雇用実態調査」結果によると、若年正社員の定着のために、「労働時間の短縮・有給休暇の積極的な取得奨励」を実施している事業所の割合は52.9%にのぼり、2018年の前回調査から15.1ポイント上昇した。初めて勤務した会社で現在も働いている若年労働者の割合は55.5%。現在の会社から今後、転職したいと思っている若年正社員にその理由を尋ねると(複数回答)、「賃金の条件がよい会社にかわりたい」(59.9%)とともに、「労働時間・休日・休暇の条件がよい会社にかわりたい」(50.0%)が50%台にのぼり、それぞれ前回調査から割合が上昇した。

調査は5人以上の常用労働者を雇用する約1万7,000事業所を対象とする事業所調査と、そこで働く満15~34歳の若年労働者約2万3,000人を対象とする個人調査からなる。2023年10月1日現在の状況について尋ね、事業所調査は2023年9月21日~10月13日、個人調査は2023年11月22日~30日に行った。有効回答数は事業所調査が7,867事業所で、個人調査が1万3,218人。

若年労働者が就業している事業所の割合は前回調査から微減

事業所調査の結果からみていくと、若年労働者が就業している事業所の割合は73.6%。その内訳をみると、若年正社員がいる事業所が62.0%で、正社員以外の若年労働者がいる事業所が34.4%となっている。若年労働者が就業している事業所の割合を前回調査と比べると、2.4ポイント低下している。また、若年労働者がいない事業所の割合は26.4%で、前回調査から2.4ポイント上昇するとともに、2013年の前々回調査から7.1ポイント上昇している。

若年労働者が就業している事業所の割合を規模別にみると、「1,000人以上」(99.4%)、「300~999人」(99.2%)、「100~299人」(97.9%)、「30~99人」(92.9%)の各区分はいずれも9割台となる一方、「5~29人」(69.5%)は7割弱にとどまる。

全労働者に占める若年労働者の割合は23.7%で、正社員でみると25.4%、正社員以外でみると20.8%となっている。前回調査と比べると、全労働者(3.6ポイント低下)、正社員(2.3ポイント低下)、正社員以外(6.0ポイント低下)のいずれも割合が低下した。

正社員として採用された若年労働者がいた事業所の割合も微減

過去1年間(2022年10月~2023年9月)に正社員として採用された若年労働者がいた事業所の割合は33.4%で、前回調査の34.2%からわずかに低下。同割合を産業別にみると、「金融業、保険業」(56.2%)、「情報通信業」(53.1%)、「学術研究、専門・技術サービス業」(43.7%)などの順で高かった。さらに規模別にみると、規模が大きくなるほど高い割合となっており、「1,000人以上」が96.3%、「300~999人」が87.6%、「100~299人」が76.8%、「30~99人」が56.5%、「5~29人」が27.9%となっている。

一方、正社員以外でみた場合の同割合は19.8%で、前回調査の25.3%から5ポイント以上低下。産業別にみると、「宿泊業、飲食サービス業」(34.1%)、「教育、学習支援業」(32.7%)、「生活関連サービス業、娯楽業」(27.7%)などの順で高くなっている。

採用選考で重視した点は「職業意識・勤労意欲・チャレンジ精神」がトップ

若年正社員の採用選考をした事業所で、採用選考にあたり重視した点(複数回答)をみると、新規学卒者では「職業意識・勤労意欲・チャレンジ精神」(79.3%)、「コミュニケーション能力」(74.8%)がそれぞれ7割台と高く、これらに次ぐのが「マナー・社会常識」(58.6%)、「組織への適応性」(53.2%)となっている。中途採用者も「職業意識・勤労意欲・チャレンジ精神」(72.7%)と「コミュニケーション能力」(66.9%)の割合が高かったほか、「業務に役立つ職業経験・訓練経験」(42.3%)も4割以上にのぼっている。

過去1年間で自己都合退職した若年正社員がいた事業所は28.4%

過去1年間(2022年10月~2023年9月)に若年労働者がいた事業所のうち、「自己都合により退職した若年労働者がいた」事業所は40.9%で、前回調査の44.9%から4.0ポイント低下した。正社員だけでみた同割合は28.4%で、前回調査(28.7%)からあまり変わらない。

「自己都合により退職した若年労働者がいた」事業所の割合を産業別にみると、「生活関連サービス業、娯楽業」(56.5%)、「情報通信業」(47.5%)、「卸売業、小売業」(45.6%)などの順で高くなっている。正社員だけでみると、「情報通信業」(46.4%)が最も高く、「金融業、保険業」(41.6%)が次いで高い。

定着対策のトップは「職場での意思疎通の向上」で59.7%

若年正社員の「定着のための対策を行っている」事業所は73.7%。定着対策の具体的な方法をみると(複数回答)、「職場での意思疎通の向上」(59.7%)、「採用前の詳細な説明・情報提供」(58.4%)、「本人の能力・適性にあった配置」(55.6%)、「労働時間の短縮・有給休暇の積極的な取得奨励」(52.9%)が5割以上の回答割合で、前回調査と比べると、特に「労働時間の短縮・有給休暇の積極的な取得奨励」(15.1ポイント上昇)の上昇幅の大きさが目立った(図表1)。

図表1:若年正社員の定着のために実施している対策(複数回答)(単位:%)
画像:図表1

(公表資料から編集部で作成)

初めて勤務した会社に現在も勤務している割合は前回から上昇

個人調査の結果から、在学していない若年労働者が初めて勤務した会社で現在も働いているのかどうかをみると、初めて勤務した会社に現在も「勤務している」が55.5%、「勤務していない」が42.7%となっている。「勤務している」割合を前回調査と比べると、4.6ポイント上昇した。

「勤務している」割合を最終学歴別にみると、「大学院」(68.9%)と「大学」(64.5%)では6割以上となっているが、「高校」(48.1%)、「中学」(43.9%)などでは4割台にとどまっている。

初めて勤務した会社をやめた理由のトップは「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」

初めて勤務した会社を離職した人に、初めて勤務した会社をやめた理由(3つまでの複数回答)を聞くと、「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」(28.5%)が最も割合が高く、「人間関係がよくなかった」(26.4%)、「賃金の条件がよくなかった」(21.8%)、「仕事が自分に合わない」(21.7%)などと続く。

これを、初めて勤務した会社での勤続期間階級別にみると、「3カ月未満」しか勤務しなかった人で、「人間関係がよくなかった」(52.3%)と「仕事が自分に合わない」(42.1%)、「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」(40.8%)の回答割合が高いことが特に目立った。

今後「転職したいと思っている」人の割合は31.2%で前回から3.6ポイント上昇

若年正社員で、現在の会社から今後、「転職したいと思っている」人の割合は31.2%で、「転職したいと思っていない」が30.3%などとなっている。前回調査と比べると、「転職したいと思っている」人の割合は3.6ポイント上昇した。

「転職したいと思っている」人にその理由を聞くと(複数回答)、「賃金の条件がよい会社にかわりたい」が59.9%で最も割合が高く、次いで「労働時間・休日・休暇の条件がよい会社にかわりたい」(50.0%)、「仕事が自分に合った会社にかわりたい」(41.9%)、「自分の技能・能力が活かせる会社にかわりたい」(33.8%)、「将来性のある会社にかわりたい」(33.1%)などの順となっている(図表2)。前回調査と比べると、「賃金の条件がよい会社にかわりたい」「労働時間・休日・休暇の条件がよい会社にかわりたい」のほか、「独立して事業を始めたい」や「1つの会社で長く勤務する気はない」などの選択肢も、回答割合の上昇がみられた。

図表2:転職しようと思う理由(複数回答)(単位:%)
画像:図表2

注:不明の割合はグラフから割愛。

(公表資料から編集部で作成)

(調査部)

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