子育て支援3法が国会で可決
 ―育児休業及び配偶者出産休暇の期間を延長

カテゴリー:雇用・失業問題多様な働き方

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  • 国別労働トピック:2024年10月

韓国の国会は2024年9月26日、子育て支援3法(男女雇用平等及び仕事・家庭両立支援に関する法律、雇用保険法、勤労基準法の改正法案)を可決した。低出生傾向を反転させるため、育児休業期間の延長、配偶者出産休暇の拡大など、仕事と家庭の両立支援策を推進するのための制度的基盤を整備することを目的としている。

低出生傾向を反転させるための対策

少子高齢化が急速に進展する韓国では、2005年に制定された「低出産・高齢社会基本法」に基づき、韓国政府が5年ごとに「低出産・高齢社会基本計画」を策定し、低出産対応政策を推進している。大統領が委員長を務める直属機関の「低出産高齢社会委員会」は、政府が推進する低出産高齢化関連政策を総括する役割を果たしている。

韓国政府は2024年6月19日、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が主宰する「低出産高齢社会委員会」を開催し、「人口国家緊急事態」を宣言した。超低出生による人口危機を韓国社会が直面する困難の中で最も根本的で致命的な問題であるとして、1)仕事と家庭の両立、2)教育・保育、3)住居及び結婚・出産・子育て、の3大分野に重点を置いた「低出生傾向を反転させるための対策」を発表した。仕事と家庭の両立に関しては、主に以下の中核課題に関する対策を盛り込んでいる(注1)

○仕事と家庭の両立

  • 妊娠・育児期の労働時間短縮制度の利用条件の改善
  • 育児休業給付金の上限引き上げ(月150万ウォン→最大月250万ウォン)
  • 育児休業給付の25%を復職後6カ月以上勤続した場合に後払いで支給する事後支給金の廃止
  • 同僚に対する業務分担支援金の新設(月20万ウォン)
  • 育児期労働時間短縮給付の上限(月200万ウォン)引き上げの検討及び支援期間拡大(毎週最初の5時間→10時間)
  • パパ出産休暇の期間延長(10日→20日)、請求期限の延長(90日→120日)及び分割回数の拡大(1回→3回)
  • 両親とも3カ月以上の育児休業を取得した場合、育児休業期間を延長(1年→1年6カ月)
  • 育児休業代替人材支援金の対象を派遣労働者に拡大及び支援金の引き上げ(月80万ウォン→120万ウォン)
  • 中小企業の配偶者出産休暇給付の支給期間拡大(5日→20日)

尹大統領は、企業規模、雇用形態に関係なく、誰でも仕事をしながら必要な時期に出産と子育てを並行できるようにすると主張した。また、現在6.8%に過ぎない男性の育児休業取得率を任期中に50%に引き上げるため、育児休業給付の引き上げ、出産休暇と育児休業の同時申請、パパ出産休暇の拡大などにより、両親が一緒に仕事と子育てを行えるような社会的雰囲気を定着させると約束した。

子育て支援3法による仕事と家庭の両立支援の拡充

韓国の国会では2024年9月26日、「低出生傾向を反転させるための対策」に含まれる仕事と家庭の両立支援策を推進するための「子育て支援3法(男女雇用平等及び仕事・家庭両立支援に関する法律、雇用保険法、勤労基準法の改正法案)」が可決・成立した。同法には上記計画等を具体化する以下の内容が盛り込まれている(注2)

両親による育児を普及させるため、両親それぞれが3カ月以上の育児休業を取得する場合、ひとり親や重度障害児を持つ親が育児休業を取得する場合は、育児休業期間を1年から1年6カ月に延長する。また、必要に応じて育児休業を4回に分けて利用できるようにする。

子供が生まれたら、少なくとも1カ月は母親と新生児をケアできるよう、配偶者出産休暇を10日から20日まで拡大し、優先支援対象企業(中小企業)の労働者に対しては、政府の給与支援期間を5日から20日に拡大する。また、請求期限も出産後90日以内から120日以内に拡大し、最大4回まで分割して利用できるようにする。

育児期労働時間短縮の対象年齢を8歳(小2)から12歳(小6)に拡大し、育児休業未使用期間はその2倍の期間を育児期労働時間短縮に使用できるようにする。育児休業を取得しなかった場合は、育児期労働時間短縮を最大3年まで利用することができる。現在3カ月の最小使用単位期間も1カ月に短縮し、休暇など短期的な育児需要にも利用できる。

流産・早産のリスクから妊娠中の労働者と胎児を保護するため、妊娠期労働時間短縮期間を現行の「12週以内、36週以降」から「12週以内、32週以降」に拡大する。特に、早期陣痛、多胎児妊娠など高リスクの妊婦は、医師の診断を受けて妊娠全期間について労働時間短縮を利用することができる。

これまで育児休業期間は、勤労基準法に基づき勤務したものとみなして年次休暇が付与される一方、育児期・妊娠期の労働時間短縮は勤務時間に含めず年休が算定されていた。今回の法改正により、育児期・妊娠期に短縮された労働時間も年休算定の勤務時間に含めて不利益を解消することとした。

未熟児を出産し、新生児集中治療室に入院した場合は、出産休暇が現行の90日から100日に拡大される。

現在、不妊治療休暇は年間3日であり、そのうち1日だけが有給休暇であるが、今回の法改正により6日に拡大され、有給期間も2日に増える。また、不妊治療休暇の有給期間に対する給与支援を新設し、優先支援対象企業の労働者及び事業主の負担を軽減する。

雇用労働部は、少子化の状況下、現場の需要などを考慮し、制度の改善が迅速に行われるよう、下位法令整備及びシステム改善などにかかる期間を最大限短縮し、法律公布後4カ月後に施行する予定である。10月中旬に法律が公布されれば、施行時期は来年2月中旬になると予想される。ただし、育児期・妊娠期労働時間短縮の年休算定関連制度の改善は、公布日から施行される。

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