【中国】(中国地域創造研究センター)
大手自動車メーカーの認証不正問題の影響で生産活動が低下。残業規制への対応でトラック運転手の求人が増加
地域シンクタンク・モニター定例調査
中国地域では、4~6月期の経済動向は、消費では猛暑による夏物商品の好調があったものの、大手自動車メーカーの認証不正問題の影響で生産活動が低下し、モニターである中国地域創造研究センターは【横ばい】とした。7~9月期は、認証不正問題の影響の長期化の懸念もあり、【やや悪化】としている。雇用動向については、有効求人倍率や新規求人数の動きをもとに4~6月期の実績、7~9月期の見通しともに【横ばい】とした。4月からの残業規制への対応で、トラック運転手の求人が増加している。
<経済動向>
生産は自動車の認証不正問題が影響、消費は一進一退
モニターは、4~6月期の中国地域の経済動向について【横ばい】と判断した。
4月は大手自動車メーカーの認証不正問題で昨年から停止していた生産が再開され、生産水準が上向きとなった。中国地方では、部品サプライヤーとして取引する岡山県内の10社ほどで生産が回復した。
5月は認証不正問題の影響がさらに和らぎ、自動車産業が製造業をけん引し、AI向け集積回路の需要も高まって生産回復が加速した。
しかし6月に入ると、大手自動車メーカー5社の認証不正が発覚し、自動車の生産指数が前月比マイナス12.6%と大幅下落となった。その他の製造業では、ビール製造拠点で新ブランドの投入効果があり、夏場に向けたアルコール飲料の生産が伸びたものの、製造業全業種での生産指数は前月比2.7%の下落となった。
消費は、値上げ前の駆け込み需要の反動、春先の雨や曇りなどはっきりしない天候、物価高がマイナスに影響した一方で、インバウンド需要や猛暑による扇風機やエアコン、冷感ウェアなどの夏物商品が好調となり、一進一退で推移した。
価格転嫁に苦しむ中小事業者は厳しい状況が続く
7~9月期の見通しについては、自動車の認証不正問題による生産停止の影響が長引くことが懸念される。加えて、円高や物価高が急速に進んでいることから、輸出型産業の出荷停滞も見込まれる。
また、日銀の追加利上げと米国の景気減退懸念を背景として、株式市場と為替市場で動揺が広がっていることが消費マインドに波及する可能性もあり、企業の事業活動への影響も不安視される。
特に、原材料や燃料価格の高騰を製品・サービス価格に転嫁できない中小事業者では、「コロナ禍からようやく回復してきたところだけに、人手不足の問題も含めて厳しい状況が続くことになる」とモニターはみている。
こうしたことからモニターは、7~9月期の経済動向を【やや悪化】と判断した。
<雇用動向>
有効求人倍率は全国と比べても高い水準
4~6月期の雇用実績について、モニターは【横ばい】と判断した。
有効求人倍率は前期と比べてやや低下したが、全国と比較して高い水準を示しており、6月の数値で島根県1.44倍(全国4位)、山口県1.43倍(全国5位)、広島県1.41倍(全国9位)となっている。
求人数は宿泊・飲食や生活関連サービス、製造で大きく減少。新型コロナウイルスの5類移行に伴う景気回復で急増した求人が落ち着いたことに加え、「特に中小企業では物価高が経営を圧迫して求人を控える動きが起こったものと考えられる」という。
ただ、4月に導入されたトラック運転手の残業規制への対応で求人が増える動きもみられ、医療・福祉でも活発な求人が続いている。
短期的な新規求人の増減が予想されるが雇用回復は続く
見通し(7~9月期)も【横ばい】としている。
その理由について、「有効求人倍率は下がっているものの、新規求人数が増加している現状から、大きな後退は懸念されていない」「業種によっては、小売業の新規出店や飲食チェーンの大型求人、警備・清掃業での人材流動化とその後の反動などといった短期的な大幅な新規求人数の増減は予想できるが、山陽のみならず山陰エリアでも雇用の回復は続くものと考えられる」としている。