【北海道】(北海道二十一世紀総合研究所)
人手不足感が強まるなかでも、最賃引き上げで企業は新規求人に慎重な姿勢

地域シンクタンク・モニター定例調査

北海道の4~6月期の地域経済について、モニターである北海道二十一世紀総合研究所は、日銀短観で業況判断が改善していることや外国人観光客の増加をもとに、【やや好転】と判断した。7~9月期の見通しは、日銀短観の悪化や個人消費での生活必需品の節約志向もみられることから【横ばい】としている。4~6月期の雇用動向は、有効求人倍率や新規求人数の減退の動きをもとに【やや悪化】と判断。7~9月期の雇用見通しは、企業の人手不足感は強くなっているものの、最低賃金の引き上げによる新規求人への慎重な姿勢をふまえて【横ばい】としている。

<経済動向>

短観では製造業も非製造業も上昇

日銀短観(6月調査)によると、6月の業況判断は17で前期(3月調査)から4ポイント上昇した。業種別にみると、製造業が19で前期から4ポイント上昇しており、非製造業が10で前期から1ポイント上昇した。

分野別の動向をみると、一部に弱さがみられるものの、財・サービスともに持ち直しがみられた。当期の販売額は家電大型専門店(前年同期比プラス13.0%)、百貨店(同プラス9.3%)、ドラッグストア(同プラス5.1%)、スーパーマーケット(同プラス2.9%)、コンビニエンスストア(同プラス1.2%)、ホームセンター(同プラス0.7%)で、いずれもプラスとなった。モニターは個人消費の状況について、「物価高による節約志向の強まりがみられる一方で、高額品販売も好調で、二極化している」とコメントした。

乗用車新車登録台数は、認証不正の影響を受けて前年同期比マイナス5.9%と2四半期連続で減少した。

外国人入国者数の大幅増が続く

観光関連をみると、国内来道客数は昨年の全国旅行支援の反動減から前年同期比マイナス0.9%となったが、外国人入国者数は同プラス52.1%で大幅な伸びが続いている。

公共投資は、公共工事請負金額が前年同期比プラス10.6%となった。

これらをもとにモニターは、「物価高の影響は受けつつも、日銀短観および経済指標から、足元の道内経済は持ち直しがみられる」ことから4~6月期の地域経済を【やや好転】と判断した。

持ち直しの動きにも一服感か

北海道財務局「法人企業景気予測調査」によると、7~9月期の景況判断は2.7の「上昇」超で、前期(1.8)から小幅に改善している。一方、日銀短観(9月)の先行き業況判断は11と、6月実績から6ポイント悪化の見通しとなっており、モニターは「持ち直しも一服することが見込まれる」との見方を示す。

7月の業態別販売額は、家電大型専門店(前年同月比マイナス7.5%)、コンビニエンスストア(同マイナス2.4%)、ホームセンター(同マイナス2.4%)、スーパーマーケット(同マイナス0.8%)が前年を下回ったものの、百貨店(同プラス12.1%)、ドラッグストア(同プラス4.2%)は前年を上回った。乗用車新車登録台数(同プラス9.0%)も7カ月ぶりに前年同月を上回った。

モニターは個人消費について、「業態により濃淡があるが、物価高の影響から生活必需品を中心に節約志向がみられる」とコメントしている。

新設住宅着工戸数が2カ月ぶりに増加

観光関連では、7月の来道客数は前年同月比マイナス0.2%と減少したものの、外国人入国者数は同プラス20.2%と好調を維持している。

住宅投資をみると、7月の新設住宅着工戸数は前年同月比プラス8.1%と2カ月ぶりに増加した。貸家(前年同月比プラス27.9%)が押し上げており、モニターは「半導体関連企業進出による特需が寄与している」とみている。一方、持家は物件価格の高止まりにより前年比マイナスが続いており、住宅投資全体では基調として弱さがみられる。

モニターは「個人消費に一服感がみられる」として、7~9月期の見通しを【横ばい】と判断した。

<雇用動向>

有効求人倍率が低下傾向で推移

労働統計をみると、有効求人倍率は4月が1.01倍(前月比マイナス0.03ポイント)、5月が0.99倍(同マイナス0.02ポイント)、6月が0.94倍(同マイナス0.05ポイント)で低下傾向となっている。4~6月期の新規求人数は前年同期比で7.1%減少した。

4~6月期の完全失業率(原数値)は3.0%で、前年同期から0.2ポイント低下している。

日銀短観(6月調査)の雇用人員判断はマイナス46の「不足」超で、前期から2ポイント上昇している。業種別にみると、製造業がマイナス34で前期比1ポイント低下、非製造業がマイナス49で同3ポイント上昇している。

モニターは4~6月期の雇用について、完全失業率は改善しているものの、日銀短観では人手不足感に和らぎがみられ、有効求人倍率が低下、新規求人数が減少していることから【やや悪化】と判断した。

労働時間の上限規制がかかる運輸や建設の求人が増加

日銀短観(6月調査)での9月先行きの雇用人員判断はマイナス52で、前期から6ポイント低下して人手不足感が強くなる見込み。産業別にみると、製造業はマイナス39で同5ポイント低下、非製造業はマイナス56で同7ポイント低下となっている。

7月の有効求人倍率は0.96倍で前月から0.02ポイント上昇している。7月の新規求人数は前年同月比マイナス1.6%と、17カ月連続で前年同月を下回った。産業別にみると、「運輸業、郵便業」(前年同月比プラス15.6%)、「建設業」(同プラス3.5%)がいわゆる「2024年問題」の影響から増加している。

モニターは「企業の人手不足感は強まっているなかで、今年度の賃上げや10月からの最低賃金引き上げによるコスト増から、企業は新規求人に慎重になっている」とみたうえで、7~9月期の見通しについて【横ばい】と判断した。