ビジネス・レーバー・トレンド2023年8・9月号
毎月25日更新
労働者が安全・健康で働ける職場づくりに向けて
安全・健康で働くことは、労働者のためであることはもちろん、安心できる豊かな社会づくりや、働きやすい職場と充実した職業生活を通じての企業発展にとっても、最重要なテーマだと言える。近年の労働災害の状況をみると、死亡者数は減少傾向にあるものの、精神障害での労災保険給付請求件数は増加傾向にあり、また、高齢化などを背景に「転倒」などでけがをする労働者も目立ってきている。本号では、職場環境の改善と労働者の健康確保のあり方をテーマとした労働政策フォーラムや、各地域からのモニター報告、労働災害に関する最新の公的統計や労働組合による実態調査結果などを紹介し、これからの安全・健康確保に向けた職場づくりの方向性を考える。
目次
労働政策フォーラム
労働と健康─職場環境の改善と労働者の健康確保を考える─
2023年3月に開いた労働政策フォーラムでは、調査研究結果からみた働き方が変化するなかでの健康確保の課題や、従業員の健康確保と労働環境の改善に取り組んでいる企業の取り組み事例、働く人からの悩み・相談に長年対応している専門家からの報告などを交え、労働者が安全で健康に働くことができる環境整備のあり方などについて議論した。(各報告およびパネルディスカッションの概要は調査部で再構成したものを掲載している。)
(※講師の所属・肩書きは開催当時のもの)
【研究報告】
【事例紹介(1)】
【事例紹介(2)】
【報告】
【パネルディスカッション】
地域シンクタンク・モニター特別調査
地域シンクタンク・モニターに対し、特別テーマとして「地域の企業や公的機関などにおける労働災害防止や健康保持などの取り組み」について尋ねた。
※地域シンクタンク・モニター定例調査結果については本号後段に掲載
労働災害をめぐる最新状況
〔厚生労働省集計から〕
- 労働災害による死傷者数が過去20年で最多。目立つ「転倒」や腰痛など「動作の反動・無理な動作」による事故 ――厚生労働省の公表資料からみる最新の労働災害の発生状況
- 「精神障害」の労災請求件数が2年連続、支給決定件数が4年連続の増加 ――2022年度「過労死等の労災補償状況」
〔制度見直しに向けた議論〕
労働組合の取り組み
〔取り組み指針〕
〔調査結果〕
- 面接指導の対象となる長時間労働の労働者がいる事業場が微増 ――連合の第11回「労働安全衛生に関する調査」
- 4割の看護職員が職場にメンタル障がいで休む・治療を受けている職員がいると認識 ――日本医労連・全大教・自治労連の「2022年看護職員の労働実態調査」結果と日本医労連の「看護師の入退職に関する実態調査」結果から
教員の勤務実態
スペシャルトピック
注目度の高い国内のトピックスを、より詳しく紹介します。
国内トピックス
行政、企業、労働組合などの最新動向を、政策課題担当の調査員がわかりやすく紹介します。
- 9割の労組が労使関係は「安定的」と認識 ――厚生労働省の2022年「労使間の交渉等に関する実態調査」
- 2021年の平均世帯所得は545万円で、過去10年ほぼ横ばいで推移 ――厚生労働省の2022年「国民生活基礎調査」結果でみる世帯所得の状況
地域シンクタンク・モニター定例調査
各地域のシンクタンクのモニターに、地域経済や地域雇用の動向などについて、定期的に調査を実施しています。
<2023年第1四半期(1~3月期)実績および2023年第2四半期(4~6月期)の見通し>
[調査結果の全体概況]
[各地域の調査結果]
- 【北海道】幅広い業種での価格転嫁の進展が景況改善の背景に
- 【岩手】小売販売額・生産指数が改善。雇用では会計年度任用職員の求人の動きも
- 【宮城】仙台市中心部の再開発や人流回復で見込まれる消費需要の増加
- 【福島】企業の労働需要は一定水準を持続する見込みで雇用は「横ばい」
- 【茨城】物価高や人手不足を背景に賃上げ実施企業が増加
- 【東海】設備投資、個人消費ともに好調が続き、経済は好転へ
- 【近畿】家計部門を中心に緩やかな回復がみられ経済はやや好転
- 【中国】宿泊・飲食、運輸の求人が増加傾向で雇用は実績・見通しともに「やや好転」の判断
- 【四国】設備投資が堅調で個人消費も回復が続き、景況感は改善の動きが強まる
- 【九州】新規求人数が11期ぶりに減少、人手不足も続く見通し
フォーカス
コロナ期間中の経済停滞にもかかわらず、ドイツの労働市場はきわめて安定していた。これは主として、「操業短縮手当(操短手当)」を迅速かつ大規模に活用し、失業率の急増を抑制したためである。しかし、じつは、操短手当以外の「企業内の柔軟な取り組み」も、雇用維持の点で労働市場の安定化に寄与したのだが、今般の雇用政策を巡る議論では、操短手当ほど注目を集めていない。そこで、現地の情勢に詳しい有識者に、具体的な企業の取り組みに関する現状と分析を解説してもらった。
台湾では、民間人材仲介会社を通した方式などで外国人非熟練労働者(移工、外籍労工)の受入れを制度化している。受入れにあたっては、対象業種(製造、建設、農業、介護等)や受入れ枠(外国人雇用率)を規制。また、外国人の求人を行う前に、台湾人向けの求人活動を実施する「労働市場テスト」も義務付けている。台湾労働部は6月17日、労働力不足に対応するため、外国人労働者の受入れ枠を一部拡大した。その概要を報告する。
(海外情報担当)
海外労働事情
海外情報を担当する調査員が、欧米・アジアを中心に、労働市場・賃金動向・職業紹介・職業訓練・労使関係など様々な視点から最新事情を紹介します。
- アメリカ①
- 採用プロセス等でのAI活用を規制 ―ニューヨーク市、「事前監査」を義務化
- アメリカ②
- 州や市の一部が最低賃金を引き上げ ―物価上昇反映し、時給19ドル超えの市も
- アメリカ③
- フードデリバリー従事者の「最低報酬」を制定 ―ニューヨーク市
- アメリカ④
- 企業年金資産の管理・運用と「ESG」をめぐる対立
- イギリス
- 男女間賃金格差透明化指令の成立
- ドイツ
- 最低賃金委員会が2024年と25年の「二段階引き上げ」を勧告
- フランス①
- 年金制度改革の成立と全国的な抗議行動(1) ―1995年以降、最大最多のデモ活動
- フランス②
- 年金制度改革の成立と全国的な抗議行動(2) ―ITUCは労働者の権利が政府によって尊重されていないと指摘
- OECD
- 世界の成長予測2.7%、日本は1.3% ―「OECD経済見通し2023」
ちょっと気になるデータ
最近公表された公的統計のなかから、ちょっと気になるデータを統計解析担当の調査員がピックアップし、わかりやすく紹介します。(統計解析担当)
2023年7月25日掲載