【近畿】家計部門を中心に緩やかな回復がみられ経済はやや好転

地域シンクタンク・モニター定例調査

近畿の1~3月期の経済動向は、家計部門を中心に緩やかな回復がみられたことから【やや好転】の判断となった。4~6月期の見通しは、消費は緩やかに増加しているものの、生産と輸出で下振れが懸念されることから【横ばい】の見込み。雇用指標は、1~3月期実績については、雇用統計の動きが小さいことから【横ばい】としている。4~6月期見通しは、サービス業の求人増をもとに【やや好転】としている。

<経済動向>

百貨店は宝飾品や衣料品が好調

1~3月期について、近畿地域の家計部門の動向をみると、大型小売店販売額は9,233億円で前年同期比プラス7.1%となり、6四半期連続で前年を上回った。内訳をみると、百貨店が同プラス18.1%で大幅に増えた。特に宝飾品などの高額商品や衣料品が好調だった。コンビニは同プラス6.6%、スーパーは同プラス1.1%となっている。

企業部門は、業種間で明暗が分かれている。製造業は原材料価格の高騰や海外経済の減速などから生産・景況感ともに軟調となった。一方、非製造業は経済活動再開にともない、宿泊、飲食・小売などの対面型サービスを中心に総じて復調している。

景況感について日銀短観(3月)をみると、業況判断DIは5で前期から変動がなく、6四半期連続でプラス圏を維持した。規模別にみると、大企業が8(前回調査比マイナス6ポイント)、中堅企業が10(同プラス3ポイント)、中小企業が0(同変化なし)となっている。業種別では製造業がマイナス3(同マイナス4ポイント)、非製造業が13(同プラス4ポイント)だった。

輸出の動向をみると、関西の輸出額は4兆9,694億円で、前年同期比プラス2.1%となり10四半期連続で前年を上回った。地域別にみると、米国向けが堅調となっている。

これらの指標を勘案し、モニターは「家計部門を中心に緩やかに持ち直した」として、1~3月期の実績を【やや好転】と判断した。

先行きは足踏みの兆しがみられる

4~6月期の見通しについては、モニターは「消費は緩やかに増加している」ものの、「欧米を中心とした海外経済減速リスクから生産と輸出の下振れが懸念されており、先行きは足踏みの兆しがみられる」として【横ばい】と判断した。

4月の大型小売店販売額は3,082億円で前年同月比プラス6.6%と19カ月連続で増加となった。外出機会の増加とマスク着用ルールの緩和などで、衣料品や化粧品の需要が増え、売上をけん引した。高額商品も引き続き高い伸びを示した。

景況感をみると、5月の景気ウォッチャー調査の現状判断DIは55.5で、前月から0.9ポイント低下した。低下は6カ月ぶり。先行き判断DIは55.2で、前月から1.2ポイント低下している。

生産動向をみると、4月の鉱工業生産指数(速報値)は91.6で、前月比マイナス0.5%と小幅に低下している。電気・情報通信機械や汎用・業務用機械が減産した一方、輸送機械や窯業・土石製品が増産となっている。近畿経済産業局は生産の基調判断を「底堅い動き」として前月から据え置いている。

<雇用動向>

サービス業で目立つ求人増

1~3月期の雇用実績について、モニターは「改善に一服感がみられる」として【横ばい】と判断した。雇用統計をみると、「有効求人倍率は1.21倍で、前期から0.01ポイント低下」「新規求人倍率は2.33倍で前期から0.04ポイント上昇」「完全失業率(モニターによる季節調整値)は2.9%で前期から変わらず」と、いずれも動きは小さい。

日銀短観(3月調査)によると、雇用人員判断指数DI(「過剰」-「不足」)はマイナス29で前回調査から3ポイント低下した。業種別では製造業がマイナス21、非製造業がマイナス36で、特に非製造業で人手不足感が強い。

4~6月期の雇用の見通しについては、「非製造業を中心に改善が継続しており、労働需給の動きが活発になっていることがうかがえる」ことから【やや好転】と判断している。

4月の新規求人数は前月比プラス4.5%で2カ月ぶりに増加した。産業別にみると、宿泊業・飲食サービス業(前年同月比プラス12.9%)、生活関連サービス業・娯楽業(同プラス7.9%)、卸売業・小売業(同プラス7.2%)などのサービス業で増加が目立つ。

(調査部)