事例紹介2 健康でいきいきした職場づくりから始める健康経営

講演者
佐藤 光弘
株式会社富士通ゼネラル 健康経営推進部長(兼)人事統括部主席部長
フォーラム名
第126回労働政策フォーラム「労働と健康─職場環境の改善と労働者の健康確保を考える─」(2023年3月15日-20日)

2017年に「健康いきいき職場づくり」をスタート

当社が目指す「人を思い活かす経営」を実現するため、健康経営を戦略的に取り組もうと、「健康いきいき職場づくり」を2017年に始めました。当初は看護師1人と産業医1人という体制で、まだ健康経営には至らず、産業保健も最低限レベルでしたが、一つひとつ改善して今に至っています。

背景には、社長の「社員をもっと元気にして、生き生きと働けるような組織をつくりたい」との思いがありました。2017年にストレスチェックの法制化があり、そのストレスチェックの組織評価を活用し、経営陣にもわかるようにワークエンゲージメントという観点を入れて、フィードバックしました。社長が健康経営最高責任者(CHO)に就任して、ストレスチェックの組織評価を見ながら、それぞれの組織の傾向や働きがいを見ています。

安全配慮義務について、河野慶三先生に週に1回来てもらい、幹部社員全員を対象に産業カウンセラーの基礎となる教育をしています。まず、その安全配慮義務をベースにしながら、職場環境配慮義務でいろいろな取り組みをしています。

保健師を3人置くなど産業保健体制を強化

ハード・ソフト面の取り組みをいくつか紹介します。健康経営の具体的な取り組みとして、産業保健体制の強化を図りました。それまでは看護師1人でしたが、今は保健師3人体制とし、おおむね社員700人を1人でケアする体制になっています。全社員に健康面談を実施し、必ず健康管理室に足を運んで、どんな先生がどんなケアをするのかを体験して、いわゆる心理的安全性のベースとなる取り組みをしています。あまり社員数が多いと難しいのですが、本社工場は2,000人弱ぐらいなので、定期的に実施しています。

このほか、健康診断受診100%などの取り組みをしています。変わったところでは、当社は富士通とは別に健康保険組合を単一健保で持っており、健康保険組合と労働組合で、健康の取り組みも連携しながら重複しないように取り組んでいます。また、ワークショップを座学ではなく社内で、学習者同士が対話を通して学ぶピア・ラーニングで展開しています。

全社員健康面談は、当初、社員から「なぜ就業時間中に呼ばれるんだ」との声がありましたが、2年経ち、ようやく当たり前のように社員が産業保健スタッフと健康について気軽に話すようになりました。面談の内容は、セルフケアの話が4割、業務負荷の話が2割などで、職場の話は結構多いと感じています。

シート1は、心理的安全性の確保のための具体的な取り組みの一覧です。

医療職による全員面談や管理監督者研修、褒め方研修、職場行事の拡大、従業員慰安行事の復活のほか、2022年には、よみうりランドで園遊会を開催し、従業員家族のためにメッセージを伝える場をつくりました。また、経営トップ健康ミーティングとして、社長と副社長が産業医の先生と直接ディスカッションする場をつくりました。ワークショップメンバー全員が発言して全員が共感する場を体験する「健康いきいきワールドカフェ」は、ピア・ラーニングを自社で開発・展開したもので、ようやく社内で根づいてきたところです。

また、健康デザインセンターを設立しました。健康管理センターを中心に、ちょっとしたスペースですが、アクティブゾーン、ヘルスケアゾーン、デザインワーキングゾーン、リラックスゾーンがあり、社内だけではなく、社外の人も含めてワークショップを開催しています。

職業性ストレス簡易調査で組織評価して改善につなげる

生き生きとした職場を目指した心理的安全性の確保のため、働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」にある「職業性ストレス簡易調査」結果の組織評価をもとに、どうすれば職場改善できるか、先生方のサポートを受けながら、「ワールドカフェ」形式で取り組んでいます。その延長として、将来を考えるワールドカフェや社会課題解決型のワールドカフェなど、部署を超えたワークショップを実施しています。

ストレスチェックの組織評価説明会も行っています。経営層にも直接説明します。いわゆる総合健康リスクが150を超えるような組織については(平均は100)、何らかの介入をしなくてはならないといわれています。実は、当社の数値は最初140ぐらいでしたが、そこから職場改善活動に取り組んでいます。

ワールドカフェは6年活動して社員にも定着

職場活性化プログラムとして行っている「健康いきいきワールドカフェ」について、詳しく説明します。シート2にあるような「職場活性化への5ステップ」に沿って活動をしています。

ワールドカフェでは、それぞれ思っていることを発信・共感して何かを作り出すということを実施しました。6年前に始めた頃は、社員からは「なんだ?」という感じでしたが、もう一般的になり、各職場で実施している状況にあります。

チームビルディングやワークショップ、チーム力発揮のための情報共有、学び、体験などの健康経営の取り組みをすることによって、いきいきした職場にしようとしています。当然、人事統括部も、1on1やダイバーシティ&インクルージョンなど様々な取り組みをしています。取り組みを行う健康系の推進部には数人が所属しています。

様々なICTを活用した健康ツールを提供

当社も、今はコロナ禍の関係でオフィスに人がいないため、LINEでのサービス支援やヒーリング音楽アプリの提供など、いろいろなICTを活用して健康ツールを提供しています。また、自社で「健康いきいきチャレンジ」というアプリを開発し、世界中の社員がレコーディングダイアリーのような形で気づきを得るという取り組みを行っています。

コロナでなかなか出社できない時に、本社が一方的に売り上げや利益、施策の話をするなか、支店長間の情報交換ができなくて困っているという話がありました。そこで、Zoomを使い、支店長同士のメンタルヘルスマネジメントやセルフケアという切り口で、3回ほど支店長同士がディスカッションする場を設けたところ、非常に好評で、部長級や課長級にも拡げて実施した経緯があります。

少しコロナが収まってきたので、当社の屋台骨である空調部門の管理職向けにも同じように、今度はリアル(対面)でセルフケアの研修をしています。社会政策課題研究所の江崎禎英さんが、健康経営とは、社員のコミュニケーション、信頼関係が成り立っている組織の証拠であるとおっしゃっていますが、私も今まさしくそのように感じています。当社は健康経営に関する認定も各種取得しており、おかげさまで2023年はホワイト500の表彰を受けました。

健康経営は「人を思い活かす経営」のため

最後に、企業理念実現に向けての健康経営の取り組みをお話しします。2021年にサステナビリティ推進本部を作り、中期事業計画で3つの重点テーマを掲げて事業展開しています。ともに未来を生きるという企業理念のもと、「地球との共存」「社会への貢献」「社員との共感」という3つを掲げています。この社員との共感のなかに、健康経営2.0として社員・家族だけではなく、社会に向けて健康経営の取り組みを普及させることも当社の役割と位置づけて実施しています。

シート3は2021年に社長の斎藤が作った資料です。コロナのなか、自立・分散・協働をテーマにして、Good JobGood Lifeを目指そうと社長が呼びかけました。

これまでは、社員・社会への貢献としてのCSR、健康経営ということで取り組んできましたが、これからは社会的責任として、社会課題に取り組むいわゆるCSV(Creating Shared Value)という活動で、健康経営をさらにドライブしていきたいと思います。皆さんも健康経営に取り組まれるといいことがたくさんあると思いますので、ぜひ取り組んでいただければと思います。

プロフィール

佐藤 光弘(さとう・みつひろ)

株式会社富士通ゼネラル 健康経営推進部長(兼)人事統括部主席部長
一般社団法人 社会的健康戦略研究所 理事

1984年富士通(株)入社、2016年(株)富士通ゼネラルの健康経営推進室長として、社長の想いと共に、健康経営を推進していく。健康でいきいきした職場に向け、産業保健スタッフ増強、心理的安全性のある職場を目指し、ウォーキングイベントや社員慰安行事(園遊会)等、社員のコミュニケーションの場として次々と開催。また、大学・市民とも連携し、ワークショプを開催する等、社員だけでなく地域の方々にも目を向け、健康経営の活動を続ける。

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