【北海道】幅広い業種での価格転嫁の進展が景況改善の背景に

地域シンクタンク・モニター定例調査

北海道では、1~3月期の地域経済は、個人消費が好調なことから【やや好転】となった。4~6月期の見通しも、幅広い業種で価格転嫁が進んでいることなどをあげ、持ち直しの動きは緩やかに続くとみて【やや好転】としている。1~3月期の雇用動向は、日銀短観の雇用人員判断の動きから人手不足感に一服感がみられるとして【横ばい】と判断。4~6月期の雇用見通しも、日銀短観や雇用統計の動きをもとに【横ばい】としている。

<経済動向>

徐々に進みつつある企業の価格転嫁

モニターが実施した「道内企業の経営動向調査(1~3月期)」の結果をみると、売上DIが17で前期から5ポイント上昇し、利益DIはマイナス3で前期から横ばいとなった。この結果について、モニターは「企業の価格転嫁が徐々に進みつつあり、売上DIは上昇したが、仕入れ価格上昇分をフルに転嫁するまでには至っていないため、利益DIが横ばいにとどまった」としている。業種別の状況をみると、ホテル・旅館業は持ち直しが顕著な一方で、原材料価格の上昇に苦しむ製造業の利益DIがマイナス圏となるなど、明暗が分かれている。

分野別の動向をみると、個人消費は緩やかに持ち直した。1~3月の販売額は百貨店(前年同期比プラス22.1%)、コンビニ(同プラス6.7%)、ドラッグストア(同プラス6.1%)、スーパー(同プラス2.4%)、ホームセンター(同プラス1.4%)がプラスとなっており、家電大型専門店(同マイナス0.7%)を除く幅広い業種で前年同期を上回っている。

観光関連は、全国旅行支援が押し上げに寄与し、国内観光客数は前年同期比プラス78.2%と大幅な増加となった。外国人観光客は前期比19.4万人増の32.4万人と持ち直しの動きがみられる。

新車登録台数は、半導体不足の影響が緩和したことで、前年同期比プラス23.6%と大幅に増加している。民間設備投資は前年同期比プラス16.4%と堅調が続いている。

こうしたことからモニターは、1~3月期の地域経済を【やや好転】と判断した。

雇用所得環境も改善基調で今後も緩やかな持ち直しに

北海道財務局「法人企業景気予測調査」の結果によると、4~6月期の景況判断は1.2の「上昇超」で、前期のマイナス13.7から約15ポイント上昇した。モニターは「食料品製造業(前期マイナス39.1⇒当期24.0)や、宿泊・飲食サービス業(前期7.7⇒当期66.7)が押し上げに大きく寄与した。幅広い業種で価格転嫁が進んでいることが、景況感改善の背景」とみている。

個人消費の動向をみると、4月の販売額は家電大型専門店(前年同月比マイナス15.8%)、ホームセンター(同マイナス7.2%)は前年の反動もありマイナスとなったものの、百貨店(同プラス6.4%)、スーパー(同プラス3.7%)、コンビニ(同プラス5.3%)、ドラッグストア(同プラス5.5%)は引き続き堅調だった。モニターは「百貨店では国内富裕層向けのブランド品販売などが好調。外出機会の増加によって化粧品販売も復調している」としたうえで、「総じてみると、道内の個人消費は足元で持ち直しており、雇用所得環境も改善基調にあることから、今後も緩やかな持ち直しが見込まれる」とコメントしている。

こうしたことからモニターは、4~6月期の見通しを【やや好転】とした。

<雇用動向>

完全失業率改善の一方、有効求人倍率は低下

労働統計をみると、有効求人倍率は1月が1.19倍(前月比マイナス0.01ポイント)、2月が1.15倍(同マイナス0.04ポイント)、3月が1.10倍(同プラス0.05ポイント)と、3カ月連続で低下している。一方、1~3月の完全失業率(原数値)は2.6%で、前年同期(3.1%)から改善している。

日銀短観によると、3月調査の雇用人員判断(「過剰」-「不足」)はマイナス44で、前期(12月調査)から1ポイント上昇している。業種別にみると、製造業(マイナス35)、非製造業(マイナス47)ともに前期比1ポイント上昇と、小幅な動きになっている。

これらをふまえモニターは、完全失業率は改善しているものの、有効求人倍率はやや弱含みとなっており、「短観」の人手不足感にも一服感がみられるとして、1~3月期の雇用について【横ばい】と判断した。

4~6月期の見通しについても、「『短観』では人手不足感が再び強まる見込みとなっているものの、有効求人倍率や新規求人数は前年の反動もあり、足踏みがみられる」ことをあげて【横ばい】と判断した。

(調査部)