健康経営宣言や健康づくりのための休暇制度、装置を活用した腰痛予防などが報告。協議会をつくり労災防止を進める地域も
 ――各地域における働く人の健康・安全を守る取り組み

地域シンクタンク・モニター特別調査

地域シンクタンク・モニター調査では、定例調査とあわせて、地域の企業や公的機関などにおける労働災害防止や健康保持などの取り組み状況を尋ねる特別調査を行った。各モニターの報告からは、従業員の運動習慣の改善を支援する動きのほか、子宮頸がん・乳がんの検診費用補助、禁煙のサポートなどが報告された。一企業の枠を越えた取り組みでは、岡山労働局が小売、介護業界での労災防止対策を進める協議会を設置している。

健康経営優良法人の北洋銀行は「健康経営宣言」を取りまとめ

北海道、岩手のモニターからは、健康経営に取り組む企業の事例報告があった。

北海道のモニターによると、経済産業省・日本健康会議から6年連続で健康経営優良法人(大規模法人部門)の認定を受けている株式会社北洋銀行(札幌市)は昨年10月、従業員や家族の健康を守ることを目的に「健康経営宣言」を取りまとめた。2021年度時点で40.2%だった女性従業員の子宮頸がん・乳がん検診比率を、55%以上にすることを目指している。また、歯科疾病の予防・管理のほか、提携スポーツクラブの費用補助やウォーキングキャンペーンの実施による従業員の運動不足解消のサポートにも取り組んでいる。

警備事業を営む株式会社美警(釧路市)は、女性従業員の健康づくりに力を入れるため、子どもの誕生日や従業員自身のリフレッシュのための「ウェルネス休暇制度」を昨年から導入したほか、子宮頸がんや乳がんなどの女性特有の検診にかかる費用を全額会社負担としている。同社は「健康経営優良法人認定制度」の中小規模法人部門において、「健康経営優良法人の中でも優れた企業」かつ「地域において健康経営の発信を行っている企業」に付与される「ブライト500」に2年連続で認定されている。

スーパーマーケットのマイヤは被災経験を生かして事業継続体制を強化

岩手県のモニターによると、スーパーマーケットを展開する株式会社マイヤ(大船渡市)は、東日本大震災の被災経験を生かし、事業継続体制の強化に継続的に取り組んでいる。具体的には、防災訓練を継続的に行い、震災対応マニュアルの改訂を毎年実施しているほか、衛星電話の活用や、内陸部にバックアップサーバーを設けることでデータの二重化を進めている。

建設分野でコンサルティング行う株式会社菊池技研コンサルタント(大船渡市)は社員の健康増進を図るため、外部講師による健康に関する講話や研修の開催、歩行運動の習慣化の促進、禁煙の取り組みを実施している。このうち禁煙については、毎月22日を社内禁煙デーとしており、構内に限らず、原則終日禁煙としている。また社内禁煙デー当日は、社内放送による周知やポスター掲示、健康ニュースの発信も行っている。非喫煙者に対しては健康増進手当を支給している。こうした取り組みにより「ブライト500」にも認定されている。

福島県の老人ホームでは装置を導入して腰痛を予防

福島県のモニターは、安全衛生の取り組み事例を紹介している。それによると、県内のある社会福祉法人では、運営する特別養護老人ホームにおいて、重要課題である職員の腰痛防止のため、腰補助を目的とした装着型の動作補助装置を導入し、介護用リフトが使用できない場所で活用している。

また、ある製造業の企業では、運行台数が多いフォークリフトにかかる労働災害の危険性が高いことが問題となっていた。そのため、速度超過警報装置やバックモニターによる「見える化」に取り組んでいるほか、ドライブレコーダーによる記録、音声チャイムによる注意喚起など、労災のリスク低減を進めているという。

岡山では労働局が協議会を立ち上げて労災防止を推進

公的機関による取り組みについては、中国地域のモニターから報告があった。それによると、岡山労働局では、転倒や腰痛が多い小売と介護業界で労災防止対策を進める「岡山県+SAFE協議会」を立ち上げ、労災防止に向け県内企業の実践例を共有化したり、業界全体で安全意識の向上を図ることとした。これらの業界は、大型機械や高所での作業がある製造業や建設業と比べると安全意識が必ずしも十分ではなく、労災防止を専門とする団体もないことから、転倒や腰痛などの労災も徐々に増えている。同協議会では、安全・安心な職場づくりが人手確保にもつながるとして、官民一体となって対策を考えていくこととしている。

同協議会ではまた、好事例の共有も行っており、スーパーマーケットを展開する株式会社天満屋ストア(岡山市)によるスイングドアの安全対策や、同じくスーパーマーケットを展開する株式会社ハローズ(福山市)による切り傷の防止対策、介護事業を行う社会福祉法人天神会(笠岡市)による腰痛ゼロへの挑戦などを紹介している。

(調査部)