特集2:失業保険制度
失業保険制度の運用実態

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2003年9月

(1) 受給者

UNEDICによると、2002年12月31日の時点でASSEDICからなんらかの失業手当(失業保険制度と国の連帯制度)を受給している失業者は250万6100人で、前年同期比で7.1%増となった(前月比では1.0%の減少)。これに職業訓練・職種転換手当や早期退職制度の対象者を合わせると、ASSEDICからなんらかの手当を受給している人の数は272万人となり、前年比で4.7%増加している。

ARE、あるいは2001年7月以前の制度におけるAUD・ACAを受給している者は、最近増加傾向にある。

年齢別に見ると、失業保険手当受給者は30代に多い。2002年には20代前半の失業者に対する失業保険手当給付が大幅に増えているが、これは2001年の新協定によって受給資格要件が緩和され、失業保険手当がより広範な層(特に不安定な就労形態にあった者)を対象にするようになったことを示している。

失業者全体のなかで、失業保険制度によりなんらかの補償を受けている者の割合は、2001年12月時点で48.5%と、2年前から7ポイント増加した。

より長期の傾向では、被補償失業者の割合は1990年代に入っていったん急激に上昇した。1990年代初頭は、産業の減速と湾岸戦争の影響から経済が低迷し、失業が深刻な社会問題となった。失業者数は1993年まで増加を続け、90年から93年にかけて50万件の雇用が失われた。これに伴って、失業保険手当受給者は急増し、1994年1月には210万人に達した。1990年1月と比べると70万人の増加で、失業者中の失業保険手当受給者の割合は54%となった。

このような状況の下で、新失業保険協定が締結され、新たにAUDが導入された。これによって、失業保険手当受給の要件は厳格化し、給付額が引き下げられるとともに給付期間が短縮された。

1994年以降、景気が回復軌道に乗ると、失業保険手当受給者の割合は45%程度と経済危機前の水準に戻った。1995年には雇用代替手当(ARPE)と協力協定(Convention de cooperation)が導入されて、失業保険手当受給者の割合は下がり続け、1997年末には42%前後となり、その後約3年間その水準が維持された。

2000年半ば以降、失業保険手当受給者が再び増加しつつあり、失業者全体に占めるその割合は上述のとおり2001年12月時点で48.5%に達している。これには、景気よりも失業保険制度自体の改革が影響している。2001年の新失業保険協定によって、手当の受給要件が緩和され、特定職種転換手当(ASC)が失業保険手当のAREに統合され、また求職者登録から手当給付開始までの期間が短縮されたことなどから、失業保険手当受給者の実数が増加している。景気は減速傾向にはあるものの、2001年の経済成長率は1.8%を維持し、同年の雇用創出件数も25万4000件であった。

つまり、雇用創出が比較的好調であるにもかかわらず、失業保険手当を受給する失業者の割合が急増するという矛盾が最近発生している。

(2) 給付額

UNEDICが2001年に給付した失業手当の総額(ARE、AUD、ACA、AFR、ARE formation)は167億7100万ユーロで、前年に比べて5.8%増加した。

失業保険受給者1人当たりの失業手当額は、2001年12月31日時点で、月平均856ユーロ(税引き前)となり、失業前給与に対する置換率は58.3%であった。

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