「職業相談の勘とコツの『見える化』ワークショップ」
マニュアル Ver.3.0(CD教材付き)

2016年5月30日発行

概要

開発の目的

表紙

本書は、「職業相談の勘とコツの『見える化』ワークショップ」(以下「勘コツワークショップ」と言う。)の職業相談の現場での普及を目的とし、勘コツワークショップを運営する担当者(以下「運営担当者」と言う。)向けに開発したマニュアルである。

勘コツワークショップの目的は、目に見えない職業相談の勘コツを「見える化」し、その勘コツを職員同士で分かち合い、職場の相談力を向上させることにある。

そのため、勘コツワークショップの参加者は、認知的タスク分析を取り入れたグループワークを体験する。認知的タスク分析とは、仕事における働く人の判断や選択などの〈こころ〉の働きや、その仕組みに焦点を当てた分析の手法である。

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開発の方法

勘コツワークショップの開発に当たっては、アクションリサーチの手法を採用した。その創始者であるレヴィンは、「『実践』、『研究』、『訓練』は1つの三角形のようなものであり、どれか1つでも欠けてはならない」(Lewin,1948:211)と述べ、具体的に現場で理論を展開するには訓練が必要であり、研究、訓練、実践が三位一体となってアクションリサーチを進めていくことを提唱した。

本研究も、このレヴィンのアクションリサーチの考え方に倣う。

まず、研修プログラムである勘コツワークショップの開発では、その基盤となる認知的タスク分析の考え方と手法を明らかにした上で、職業相談の研修プログラムへの応用を検討し、職業相談における重要な判断と働き方の選択を職員同士で共有化する研修プログラムを開発した。

次にこの研修プログラムを用いて、ハローワーク等の職員を対象とした研修コースで、この勘コツワークショップを実施した。これまで、厚生労働省、都道府県労働局、地方自治体就業支援機関、労働政策研究・研修機構等の主催の18の研修コースで実施され、365人の職員が勘コツワークショップに参加した。

実践を通した検討については、勘コツワークショップの終了後、職員が相談の窓口に戻ってから、職業相談がどの程度、改善したかを把握すべきところである。

しかし、今回は、勘コツワークショップの終了の直後に、アンケート調査により、職員がこのワークショップを体験して、職業相談の窓口業務を進める上で、どの程度役に立つ情報やノウハウを得ることができたと思うかを聞いて、現場を想定した勘コツワークショップの効果を検討した。

これらの研究→訓練→実践のサイクルを回していくことにより、認知的タスク分析の考え方と手法を応用して、より効果的な研修プログラムを研究開発し、実践を通して、更なる職業相談の改善を進めた。

内容

グループワークの内容

参加者は、グループワークを通じて、①職業相談の勘コツを〈ことば〉にして付箋紙に書き、それを模造紙に並べることにより、②相談での求職者とのやりとりにおいて、どのタイミングで、どのような勘コツを働かせていたかを図に整理した「勘コツマップ」(図表参照)を作成し、参加者同士で勘コツを分かち合う体験をする。そして、③「勘コツマップ」で整理した相談事例と同様の相談場面に直面したら、「今なら、どのような対応をしたいか」を検討し、自分自身の勘コツを鍛える。

図表 勘コツマップの作成例
模造紙に付箋紙を並べた例 黄色の付箋紙には、「相談でのやりとり」が記録されています。これを読むと、相談の流れが把握できます。 青色の付箋紙には、「その時の気持ち」が記録されています。これを読むと、職員が、相談の最中、何を感じ、思い、考えていたのかが理解できます。 赤色の付箋紙には、赤い丸のついた職員の“重要な判断・選択”について、その「きっかけとなった情報」が記録されています。 緑色の付箋紙には、参加者が、勘コツマップで整理した相談事例と同様な相談場面に直面したら、「今なら、どのような対応をしたいか」といった「『いま、ここ』での判断・選択」が記録されています。

参加者に期待される効果

勘コツワークショップの参加により、普段は、あまり意識せず、自動的に活用している「勘コツを意識化」する。これは「ハッとする」体験である。

この「勘コツの意識化」が進むと、職場に戻ってから、「意識的に勘コツを活用」できるようになる。「さぁ、勘コツを働かせよう」という気持ちになり、これは「グッとくる」体験である。

こうやって意識して勘コツを活用できるようになると、さらに勘コツを〈ことば〉にできるようになり、「職場での勘コツの分かち合い」ができるようになる。この勘コツの分かち合いにより、お互いに同じような職業相談の局面で問題を感じていたり、その問題のヒントとなる勘コツの働かせ方がわかったり、「ああ、同じような勘コツを働かせているな」と気づいたりする。これが「ホッとする」体験である。

このように勘コツワークショップへの参加により、これら「ハッとする」、「グッとくる」、「ホッとする」体験をくり返し、職場の相談力を向上させていくことが考えられる。

マニュアルの内容

運営担当者は、グループワークを円滑に進めるためのガイドシートを参加者に配付し、スライドを映写しながら、勘コツワークショップを運営する。マニュアルの巻末にはCD教材が付いており、そのなかにはガイドシート、スライド等のPDFファイルが入っている。

政策的インプリケーション

ハローワーク等や就業支援機関の職員を対象とした研修への活用により、職場における1人ひとりが経験的に蓄積した職業相談の勘コツを共有し、職業相談の質的向上に貢献できると考えられる。

政策への貢献

厚生労働省就労支援室では、平成28年度に、生活保護受給者等に対する職業相談の勘コツについて、グループワーク形式により相互学習を進める「リーダーナビ養成研修」を、全国4カ所で開催する予定である。この研修において、このマニュアルが活用される予定である。

研究の区分

プロジェクト研究「生涯にわたるキャリア形成支援と就職促進に関する調査研究」

サブテーマ「ハローワーク等における効果的な職業相談・紹介技法に関する研究」

研究期間

平成24~27年度

研究担当者

榧野 潤
労働政策研究・研修機構 主任研究員
上市 貞満
労働政策研究・研修機構 統括研究員

関連の研究開発成果

入手方法

非売品です。

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