2003年 学界展望
労働経済学の現在─2000~02年の業績を通じて

学界展望とは、第一線で活躍中の研究者による座談会形式で、学界の主要業績を振り返るとともに、今後の研究動向を展望しようとする「日本労働研究雑誌」2・3月号恒例の特集企画です。

日本労働研究雑誌 2003年2・3月号(No.512) 掲載 2006年9月 Web公開 全文印刷用


目次

出席者紹介 , はじめに

  1. 1 失業
  2. 2 雇用調整
  3. 3 転職
  4. 4 若年
  5. 5 高齢者
  6. 6 女性の就業選択
  7. 7 賃金
  8. 8 その他
  9. おわりに
  10. 文献リスト

出席者紹介

冨田 安信(とみた・やすのぶ)大阪府立大学教授(司会)

大阪府立大学経済学部教授。共著書に『大卒女性の働き方―女性が仕事をつづけるとき、やめるとき―』(日本労働研究機構、2001年)など。労働経済学専攻。

太田 聰一(おおた・そういち)名古屋大学助教授

名古屋大学大学院経済学研究科助教授。主な論文に「景気循環と転職行動」(『日本経済の構造調整と労働市場』、日本評論社、1999年)など。労働経済学専攻。

安部 由起子(あべ・ゆきこ)亜細亜大学助教授

亜細亜大学経済学部助教授。主な論文に「地域別最低賃金がパート賃金に与える影響」(『雇用政策の経済分析』(猪木武徳・大竹文雄編)、東大出版会、2001年)など。労働経済学専攻。

川口 大司(かわぐち・だいじ)大阪大学講師

大阪大学社会経済研究所講師。主な論文に"Human Capital Accumulation of Salaried and Self-Employed Workers", Labour Economics, Vol.10, 2003 など。労働経済学、応用計量経済学専攻。


はじめに

冨田

『日本労働研究雑誌』では3年に1度、労働経済学の学界展望を掲載しています。今回は、亜細亜大学の安部さん、名古屋大学の太田さん、大阪大学の川口さん、そして、私、司会進行役の大阪府立大学の冨田の4人で学界展望をすることになりました。最近3年間に発表された労働経済学の論文の中から興味深い論文を取り上げて、最近の研究動向について話し合ってみたいと思います。

まず、私たち4人が集まって、みんなで読んでみたいと思う論文を思いつくままどんどんリストアップして、それを眺めながら、今回の学界展望で取り上げる研究テーマを次の七つに絞り込みました。失業、雇用調整、転職、若年、高齢者、女性の就業選択、賃金の七つです。そして、テーマごとにみんなで読む論文を3本ずつ、合計21本決めました。この21本以外にも読むべき論文はたくさんあったのですが、時間と紙幅の制約もあり21本になりました。

七つの研究テーマには入らないものの、この学界展望で紹介したい論文がいくつもありました。今回は、そうした論文の中から4人それぞれが1本ずつ選び、最後に紹介することにしています。これが、今回のちょっとした試みです。テーマごとに、最初、4人のうちの1人に3本の論文をまとめて紹介してもらい、それを手がかりに、みんなで議論していきましょう。さっそくですが、太田さんからお願いします。

次ページ 1 失業