『日本労働研究雑誌』特集テーマ論文の公募について
特集テーマ「フレキシブルな働き方の実態・影響・課題」
趣旨
『日本労働研究雑誌』では、随時受付・随時掲載の投稿とは別に、テーマを限定した査読付き論文を募集する。
随時受付・随時掲載の投稿においては、幅広いテーマで投稿を受け付け、掲載に値する水準まで期間に上限を設けずに修正を重ねる。その結果、掲載までに時間を要することがめずらしくない。研究の持久力を問われる審査を経て掲載された論文の中には、歴史の風雪に耐え学説史に残るようなものもある。
しかしながら、持久力が研究の唯一の価値ではない。特に実践的関心の強い応用研究においては、現場の動きに即応し、時に動きを導くような瞬発力が求められる。たとえば本誌発行元である労働政策研究・研修機構(JILPT)が研究対象としている労働政策は、3年や5年というスパンで法律や制度の見直しが行われる。こうした分野・領域においては、現下の政策の効果や課題について研究者のみならず政策担当者が確認できるような研究のニーズは極めて高い。
そのような問題意識から、テーマを限定し、掲載号を確定した上で、通常のプロセスよりも早く査読審査を行うことで、最新の研究成果を学術研究者や政策担当者を含む幅広い読者に届けることを目指す投稿論文特集を企画した。本公募では、意欲ある研究論文の投稿を期待したいという思いから、投稿期限から「約半年」での採択を目指す査読プロセスを設けている。テーマ上の理由、そして研究者のニーズの双方を満たすため、早期採択に向けて編集委員会一丸で努力する所存である。読者の方々による意欲ある研究論文の投稿を心より期待したい。
2024年8月
『日本労働研究雑誌』編集委員会
1 特集テーマ「フレキシブルな働き方の実態・影響・課題」
多様な働き方や柔軟な働き方を推奨する機運が近年高まりを見せ、政策もそれを後押ししている。例えば、労働時間の上限規制や有給休暇の消化義務、テレワークや副業・兼業の推進などである。これらは、労働者にとっては、ワークライフバランスの改善、従来の枠組みには収まらない働き方の推進、本業とは異なる活動の充実、職住分離が可能になるなど、個人の時々のニーズに合わせたフレキシブルな働き方を可能にし得るものである。同時に、企業にとっても、柔軟な働き方を可能とする制度・環境を整えることで、優秀な従業員の確保や生産性、モチベーション向上に結びついているかもしれない。
他方、このような働き方の促進が、意図せざる結果に結びつく可能性もある。過度な労働時間規制や休暇取得の強制は、意欲の高い労働者のモチベーションを下げたり、若年層への教育訓練機会の抑制、将来的なキャリアの見通しの不透明さにつながり得る。従来とは異なる働き方は、新たな不安定就労を生み出すことになるかもしれない。企業側にとっても、売り上げや利益の減少、労務管理の難化といった事態を招き得る。
また、意識面では、柔軟な働き方を進めた結果、労働環境が変わることで、働くことへの意味づけや働く理由、労働観に変化が生じている可能性もある。あるいは、働く場所と時間を柔軟にするための選択肢が増えたことで、働くこと/働かないこと自体の判断や、労働時間と生活時間の決定パターンに係る意識構造自体に変化をもたらしているかもしれない。
以上を踏まえて、本特集では、フレキシブルな働き方の実態や影響、課題についての実証や問題提起、今後の政策提言につながる論文を募集する。これに関連する学問領域は広く、経済学(労働経済学、組織の経済学、家族の経済学など)、経営学(人的資源管理論、経営管理論、組織行動論など)、社会学(労働社会学、産業社会学、家族社会学など)、労働法学、労使関係論、産業・組織心理学に加えて、教育学やジェンダー論の観点から接近することも有用である。柔軟な働き方を促進する政策や制度が個人や企業の行動、意識にもたらす効果の他、それを可能とする人事システム、個別的~集団的な労使関係、新たな働き方を支えるための法体制、学校教育と職業生活の接続、働く人の能力・心理・ネットワークなどを扱う論文の投稿を想定している。実証研究のみならず、先端的な理論や方法論で現実に新たな光を当てるような研究も好ましい。雑誌の性質から、政策的貢献が高い研究も歓迎する。
2 執筆における留意点
タイムリーなテーマに関して通常より「足早」な査読を行うものの、学術雑誌としての本誌の基本的な性格は維持されるため、投稿者には以下の点に留意して論文を執筆することを求める。
- a)法学、経済学、経営学、社会学、教育学、心理学および労使関係論等、依拠する専攻分野が明確であること
- b)研究対象とする政策の動向や関連する先行研究を踏まえて適切に引用していること
- c)学術的に妥当な研究方法(統計解析、事例分析、言説分析等)を採用していること
- d)学術的貢献と政策的示唆が明確であること
- e)『日本労働研究雑誌』投稿規程及び執筆要領を遵守すること
3 審査
- 『日本労働研究雑誌』投稿規程 3「審査」による。
- 過去に本誌で不採択となった論文を改訂して本公募特集に投稿することは認められない。
4 掲載
掲載が決定した論文は、原則として、本誌2026年2・3月号(No.788)に掲載する。また、より一層の内容の充実を図るために編集委員会より補筆・修正をお願いすることがある。なお、掲載号刊行3カ月後に、独立行政法人労働政策研究・研修機構のホームページで論文全文を公開する。
5 投稿受付期間
2025年3月1日~2025年4月17日(4月17日締切)
- 論文の投稿受付後、速やかに審査に付します。
- 所定の審査期間では掲載に至らないと判断された場合でも、修正を繰り返すことで掲載可能な水準に達する可能性がある論文については、随時受付・随時掲載への再投稿ないしは査読途中での切り替えを打診することがあります。
6 提出方法
本公募にかかる投稿原稿は以下のフォームより投稿受付期間中にご提出ください。
【お問合せ先】
〒177-8502 東京都練馬区上石神井4-8-23
独立行政法人 労働政策研究・研修機構内 『日本労働研究雑誌』 編集事務局
E-mail: toukou [at] jil.go.jp ※[at]を@にご修正ください。