操短特例の一部を9月末まで延長
 ―ウクライナ戦争の影響で

カテゴリー:雇用・失業問題労働法・働くルール労働条件・就業環境

ドイツの記事一覧

  • 国別労働トピック:2022年7月

ドイツ政府は6月22日、コロナ禍で始まった操業短縮(操短)手当の特例措置の一部を、9月30日まで3カ月間延長することを決定した。ウクライナ戦争によるサプライチェーンの混乱の悪化を避け、企業労使の安定的な計画策定を支援するため、としている。なお、コロナ禍を理由とした手当の引き上げなどの特例措置は、当初の予定通り6月30日で終了した。以下にその概要を説明する。

主な概要

新たに発効する操業短縮手当アクセス規則(Kurzarbeitergeldzugangsverordnung , KugZuV)に基づき、延長および終了される特例措置は、以下の通り;

2022年9月末まで延長

〔延長理由〕

コロナ禍によって引き起こされた世界的なサプライチェーンの混乱が、ウクライナ戦争の影響を受けて、さらに悪化する恐れがあるため。現在、ウクライナ戦争による一次製品(材料)の供給不足が続いており、ドイツの産業に直接影響を与えている可能性がある。操短手当の特例措置を引き続き継続することで、企業労使の安定した計画策定を支援する。

〔延長された特例内容〕

  • 10%以上の従業員が影響を受けた場合に助成 ※従来は3分の1以上
  • 事前に労働時間口座をマイナスにしなくて良い ※従来はマイナスにする必要がある
  • 操短中に要件を満たす訓練を実施した場合、社会保険料の雇用主負担の一定割合を連邦雇用エージェンシー(BA)が負担(23年7月まで) ※従来は雇用主負担のみ

2022年6月末で終了

〔終了理由〕

現在はコロナ関連の規制がほぼ解除され、経済や労働市場への影響がほぼなくなっている。コロナの感染状況が急激に悪化し、再びロックダウン(都市封鎖)することは、現在のところ想定していないため。

〔終了した特例内容〕

  • 手当の引上げ:賃金が通常時の50%以上減少した労働者につき、4カ月目から70%(子がある場合は77%)、7カ月目から80%(同87%) ※従来は賃金減少分の60%(子がある場合は67%)のみ
  • 受給期間(最長28カ月) ※従来は最長12カ月
  • 操短中の追加収入規制の緩和 ※従来は操短中に別途副業等で収入を得た場合はその分操短手当が減額される
  • 対象に派遣労働者を含める ※従来は派遣労働者は対象外

労働市場と操短の利用状況

現地の報道によると、コロナ禍による厳しい行動制限が解除されて以降、国内の企業の求人は増加傾向にある。中でもコロナ禍で大きな痛手を被った宿泊、飲食、観光、航空などのサービス業で求人の増加が著しい。

他方、BAの6月の労働市場統計について、デトレフ・シェーレ長官は「労働市場は依然として安定しているものの、ウクライナ避難民がジョブセンターに登録したことにより、失業率と不完全雇用が急増している」と指摘した。

操短手当の利用状況については、6月1日から26日までの操短届出数は3.5万人で、4月に操業短縮手当を受給した労働者は40.1万人であった。操短手当の利用推移は図1の通り。

図1:操業短縮手当の受給推移(労働者数ベース)2008年~2022年 (単位:千人)
画像:図1

  • 出所:Bundesagentur für Arbeit (2022.6)
  • 注:SGBIII96条に基づく操業短縮手当申請。申請全てに操業短縮手当が適用されるわけではない。薄線や点線は推計であり、実績値ではない。

特例の一部延期に関する所管大臣のコメント

フベルトゥース・ハイル労働社会大臣は、「操短制度は、コロナ禍で、雇用を確保するための効果的な政策手段であることがすでに証明されている」とした上で、今回の特例延長の目的について、ウクライナ戦争の影響による不安定な状況下でも企業の雇用関係や経営の見通しを安定させるため、と説明した。さらに、今後数か月で状況がどのように進展するかを注意深く見ていくとしている。

資料出所

関連情報

2022年7月 ドイツの記事一覧

関連情報