操業短縮手当の補填率、引き上げへ
 ―4カ月目から70%、7カ月目から80%

カテゴリー:雇用・失業問題労働法・働くルール労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2020年6月

社会保護パッケージII(Sozialschutz-Paket II)が5月28日の官報に掲載され、発効した。これにより、新型コロナウイルス危機克服のため、労働社会分野における様々な追加支援が行われる。中でも注目を集めたのは、操業短縮手当(操短手当)の補填率の引き上げである。要件を満たした受給者に対して、従来の原則60%に加えて、4カ月目から70%、7カ月目から80%に賃金減少分の補填率を引き上げる。

引き上げの詳細

操短手当は、日本の「雇用調整助成金」のモデルともなった制度で、失業の抑制や企業内の技能維持に一定の効果があるとされる。景気後退等による操業短縮に伴って従業員を休業(部分休業を含む)させた場合に、従業員の賃金減少分の60%(子がいる場合は67%)を連邦雇用エージェンシー(BA)が助成する。受給期間は通常12カ月だが、2019年12月31日以前から受給している労働者は最長21カ月まで延長が可能である。

今回、引き上げの対象となるのは、労働時間が通常時の50%以上減少した労働者である。支給開始から3カ月間は、従来通り休業により減少した手取り賃金の60%(子がいる場合は67%)だが、4カ月目からは同70%(子がいる場合は77%)、7カ月目からは同80%(同87%)に引き上げられる(図1)。2020年までの時限措置で、制度拡充による追加の支出額は6億8000万ユーロ程度と、政府は見込んでいる。

図1:操業短縮手当の引き上げ
図2:画像
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出所:BMAS (2020)

操短手当は4月に申請が急増

連邦雇用エージェンシーが6月3日に発表した労働市場報告によると、新規の操短手当(Kurzarbeitergeld)の申請労働者数は、急増した4月の802万人から、5月は106万人となった。これは雇用主の申請を元に積み上げた推計で、今後全ての労働者が適用対象となるわけではないが、一定の目安にはなる。世界金融危機の影響が深刻だった2009年のピーク時でも、操短手当の労働者数が144万人だったことを考慮すると、今回の新型コロナウイルスが労働市場に与えた影響の大きさが見てとれる(図2)。

図2:操業短縮手当の推移(労働者数ベース)2008年~2020年(単位:千人)
図1:画像

出所:Bundesagentur für Arbeit (2020)

注:SGBIII96条に基づく操業短縮手当申請。申請された全ての労働者に操業短縮手当が適用されるわけではない。点線、薄線は推計であり、実績値ではない。

欧州諸国の補填率は60~100%

経済社会研究所(WSI)が欧州15カ国を対象に、操短手当と類似する賃金補填制度を調査したところ、アイルランド、デンマーク、オランダ、ノルウエーの4カ国では補填率が100%で、オーストリア、イギリス、イタリア、スイスでは同80%、スペイン、ベルギー、フランスでは同70%となっており、ドイツの60%(子がいる場合は67%)は、調査対象国の中で最低水準であることが分かった。

なお、ドイツでは、操短手当の他に、労働協約に基づいて雇用主が独自に追加の賃金補填をする産業もある(注1)。しかし、今回新型コロナウイルスによって特に深刻な打撃を受けたホテルやレストラン等のサービス産業では、雇用主による独自の賃金補填を規定した労働協約がない場合が多い。そのためWSIは、ウイルスの危機が収束するまでの間、操短手当の補填率を一律最低80%、低賃金労働者に対しては90%に引き上げるべきだと提唱していた。

今回のドイツにおける操短手当の補填率の引き上げは、こうした調査や議論が行われる中で、成立した。

参考資料

  • Monatsbericht zum Arbeits- und Ausbildungsmarkt Mai 2020, RND(15.05.2020), Nr. 38 · April 2020 · Hans-Böckler-Stiftungほか。

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